T子は、最近上京してきたばかりで日々忙しい毎日を送っているOLだ。
始めは夢の一人暮らしを
満喫していたのだが
最近になって
不審な電話が増えていた。
T子が電話に出ても
男の荒い息遣いしか聞こえない。
T子が何度も「やめて」と言っても聞こえるのは息遣いだけ。
気味の悪い悪戯だと
腹を立てながらも忙しい毎日のせいもあり、放置していた。
数日がたち、仕事から帰宅したのと同時に電話が鳴った。
「またか」と、
仕事の疲れもありイライラしていたT子は電話に出るなり怒鳴り散らした。
「今日は彼氏が来るの!
いい加減にしないと、彼氏に殴ってもらうからね」
―…彼氏なんていなかった
ストーカーなんてする男、
小心者に決まっている。
“彼氏”という言葉を出せば怯むかと思ったのだ。
そして相手も、その言葉を聞いた瞬間に荒い息遣いが、一瞬止まった。
そのまま電話を切り、
T子は倒れるようにベットで眠りについた。
翌日、T子は鏡を見て絶叫した。
顔が血だらけだったからだ。
しかし、傷は見当たらないし、痛みも無い。
床には、汚くて血がついた爪が散乱していた。
顔を洗おうと、フラフラになりながら洗面所に行くと
またT子は絶叫した。
“彼氏なんかいねぇじゃねぇか、うそつき”
鏡に書かれていた血文字を見て、T子はすぐに引っ越した。
怖い話投稿:ホラーテラー ちきさん
作者怖話