あれは、俺が大学三年の夏の事だった。
今思うと、本当に馬鹿な事をしてしまったと後悔している。
夏休みに入り、俺は友達数人と、とある心霊スポットへ繰り出した。
その心霊スポットは、廃ホテルで、事前に調べた中では、最も危険とされる『呪いの絵』がある場所であった。
俺達の中には、いわゆる『霊感』の強い者はいない。
大学も理系だった為、物事を理論的に解釈し、霊を信じてる者すら誰一人いなかった。
廃ホテルの中は、真夏にも関わらず、鳥肌が立つほどひんやりしていた。
床には、花瓶の破片やら硝子の破片で、足の踏み場も無く、個々の部屋のドアは全て取り外され、とてもじゃないが、かつてホテルだったとはにわかには信じがたい状態であった。
『絵は最後にして、とりあえず、色んな部屋を見て回ろう』とゆう俺の考えに全員が同意した。
一通り回ったが、案の定何も無く、ぐったりしながらも、最後に『呪いの絵』がある部屋に着いた。
その絵は、コンクリの壁に直にマジックで描いた絵で、単純に怖かった。
妊婦さんが全裸で、腹に短剣を突き刺されてる絵だった。
霊的な怖さではない。
ただ、普通の神経の者が描いた絵ではない。
それだけは分かった。
その時、友人の一人が
『えっ』
と後ろを振り向いた。
『赤ちゃんの鳴き声?がする?』
俺達はその一言で、一度に凍りついた。
『ぉんぎぁ、ぉんぎぁ』
出来る事なら、その場から逃げ出したかった。
しかし、体が動かない。
自分の意志ではない。
俺達は、金縛りに掛かった様に、その絵に釘付けになっていた。
本当は見たくない。
もう十分だった。
しかし、目が閉じない。
『おんぎゃ、おんぎゃ』
赤んぼうの泣き声は確実にこの部屋に向かっている。
その時。
妊婦が『うーーーーーーーーー』と唸って、腹が開き始めた。
『怨虐、怨虐、怨虐、怨虐、怨虐、怨虐、怨虐』
どうやら、その泣き声はその腹の中から聞こえてくる。
『何か出てくる。』
ズボっと鈍い音を立てて、赤ん坊が頭を出した。
『うぁぁぁぁぁぁぁ!』
その友人の叫び声で、金縛りが解けたか、一斉に出口に向かって走り出した。
『おい見たか?赤ん坊の顔』
『ああ、あれは普通じゃなかった』
『あれ、何だと思う?』
『お坊さん』
俺達は口を揃えて言った。
怖い話投稿:ホラーテラー ミスターXさん
作者怖話