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短編2
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怨虐(おんぎゃ)

あれは、俺が大学三年の夏の事だった。

今思うと、本当に馬鹿な事をしてしまったと後悔している。

夏休みに入り、俺は友達数人と、とある心霊スポットへ繰り出した。

その心霊スポットは、廃ホテルで、事前に調べた中では、最も危険とされる『呪いの絵』がある場所であった。

俺達の中には、いわゆる『霊感』の強い者はいない。

大学も理系だった為、物事を理論的に解釈し、霊を信じてる者すら誰一人いなかった。

廃ホテルの中は、真夏にも関わらず、鳥肌が立つほどひんやりしていた。

床には、花瓶の破片やら硝子の破片で、足の踏み場も無く、個々の部屋のドアは全て取り外され、とてもじゃないが、かつてホテルだったとはにわかには信じがたい状態であった。

『絵は最後にして、とりあえず、色んな部屋を見て回ろう』とゆう俺の考えに全員が同意した。

一通り回ったが、案の定何も無く、ぐったりしながらも、最後に『呪いの絵』がある部屋に着いた。

その絵は、コンクリの壁に直にマジックで描いた絵で、単純に怖かった。

妊婦さんが全裸で、腹に短剣を突き刺されてる絵だった。

霊的な怖さではない。

ただ、普通の神経の者が描いた絵ではない。

それだけは分かった。

その時、友人の一人が

『えっ』

と後ろを振り向いた。

『赤ちゃんの鳴き声?がする?』

俺達はその一言で、一度に凍りついた。

『ぉんぎぁ、ぉんぎぁ』

出来る事なら、その場から逃げ出したかった。

しかし、体が動かない。

自分の意志ではない。

俺達は、金縛りに掛かった様に、その絵に釘付けになっていた。

本当は見たくない。

もう十分だった。

しかし、目が閉じない。

『おんぎゃ、おんぎゃ』

赤んぼうの泣き声は確実にこの部屋に向かっている。

その時。

妊婦が『うーーーーーーーーー』と唸って、腹が開き始めた。

『怨虐、怨虐、怨虐、怨虐、怨虐、怨虐、怨虐』

どうやら、その泣き声はその腹の中から聞こえてくる。

『何か出てくる。』

ズボっと鈍い音を立てて、赤ん坊が頭を出した。

『うぁぁぁぁぁぁぁ!』

その友人の叫び声で、金縛りが解けたか、一斉に出口に向かって走り出した。

『おい見たか?赤ん坊の顔』

『ああ、あれは普通じゃなかった』

『あれ、何だと思う?』

『お坊さん』

俺達は口を揃えて言った。

怖い話投稿:ホラーテラー ミスターXさん  

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