ある国に入院していた患者のお話です…
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「○○さんは『あきら君』が好きなのね~」
患者との雑談での相槌…
「うん…『けいすけ君』と『しずこちゃん』、『あきらちゃん』も好き」
この患者は、記憶喪失のうえに幼児退行をおこした身元不明の患者だった…
現状の呼び名も仮称でしかなく警察組織に身元を捜してもらっていた。
「でも…一番は『せれなちゃん』が好き!大好き!」
精神科医による聞き取りを繰り返すうちに複数でてくる名前の数々…
親類や友人であろう名前を呟く時が一番嬉しそうに話、色々な情報も得られた。
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患者が入院してから一年が経過した頃…
医師は食堂で昼飯を食べていた時の看護師との会話…
「そういえば、患者の○○さんなんですが…ちょっと不思議なんですよ…」
なに?医師は興味無さげに相槌を返す。
昼食の時間なんですがね…と
前置きをして話し出す…
「ほら、あの患者さんが言っていた名前あるじゃないですか?
新しく採用された業者から卸されてる食材を使う時だけ、あの名前を呟くんですよね…
『けいすけ君…けいすけ君…』美味しいよ…
『けいすけ君…けいすけ君…』美味しいよ…って
何でですかね?」
お友達と食べた料理かなんかだったのかな?
最後に呟き食堂から出ていった。
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半年が経過した頃には、食材業者も一社に統一され毎日出される昼食…
患者は一定の間隔で友達の名前を呟いていく…
最後に美味しいよ…と付け足しながら…
更に、3年が過ぎた頃…
患者が急死した…
原因は不明、警察と事件事故の観点から捜査したが原因は解らなかった。
ただ、看護師から死亡する前に確認した時の証言によると…
『せれなちゃん…せれなちゃん…せれなちゃん…美味しい…せれなちゃん…美味しい』と
発狂したかのように昼食を食べていた為、鎮静剤が打たれていたの事…
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事故という形で処理された患者の死…
2年が経過した後に警察から元患者の身元が判明したとの連絡がはいる。
元患者は殺人と食人思考の持ち主だった事…
数々の名前は行方不明の末に遺体が一部しか発見できていない方々と同一だという事…
本来なら話さなくても良い秘匿性のある内容も含まれていたが、医師の願いで非公式な形で伝えられた…
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更に2年たった頃…
一つのニュースが世間を騒がせる…
ある食品加工業者が食中毒事件で書類送検されたのだ…
捜査は一年前まで業者と癒着関係にあった某病院まで伸びる…
業者が不適切な食材を使っているのを承知で院内食として提供し患者に健康被害を与えたなど…
その食材が某国から輸入した食材で高濃度の農薬を使用した野菜・企業排水が垂れ流されている場所に生息していた魚・不適切な方法で飼育された動物の肉…安価で入手できる食材を多量に仕入て偽装し高く売る…
この案件は税関などの関係者との癒着まで問題として発展…常にトップニュースとして報じられた。
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世間が食品偽造問題で騒がせれいる裏で報じられた記事がある…
『ある殺人事件の被害者の処理に困った犯人が肉体を冷凍して外国に送ったという記事…』
ゴシップ誌で小さく載った記事…
やがて被害者になる可能性のある一般人の心情を考慮され闇に葬りさられるこの記事…
殺人事件の被害者の肉体が何処に送られたのか?
すべてが明るみにでるのは遥か先の話…
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しかし…
ある病院で…
元殺人犯で食人思考のある患者が…
名前を連呼して美味しいと連呼したのは事実である。
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これはある病室で起こった出来事…
もう十数年前の話…
理由もわからずに突然閉鎖した病院で…
廃墟とかした病院で…
元患者が入院していた部屋で…
天井からぶらさがる紐の先で元医師は揺れている…
床に置いてあるノートには…
『眠るのが怖い…思い出したくもない私の患者が夢にでてくる…美味しい…美味しい…と…叫んでいる…だが…その先に…何故…何故…貴方達は…私達の…身体を…美味しそうに食べているの?…何故…何故…と…つぶやいている…男女の姿が見える…その視線は…患者と私を…暗く…冷たく…みつめている…こわ…い…ねむるのが…こわい…』
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このノートは発見された時に朽ちる事なく見つかったらしい…
雨風にさらされ遺体が腐りおちているにもかかわらず…
ノートの最後のページ…
『私達の身体を返して…誰の身体に溶けようとも…誰の血肉に変わろうとも…私達の身体を見つけ出す…永遠の時がかかろうとも…』
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彼らの想いは今も消えてはいない
作者まー-3
この被害者の怨みは食材を食べた不特定多数に向けられています…
おそらく食べた方は大勢いるのかな?と思っとります。
大変解りにくい内容かと思いますがお付き合いいただければ嬉しいです…