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短編2
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電話の表示

小学生の時でした。

私の家は、両親が共働きで夜も遅くまで帰らず、私と姉はよく留守番をしていました。冬の半ば、時計が8時を示す頃には外は完全に真っ暗で、家の外に立つ街灯の白い光が輝いていました。窓のカーテンを開け放したまま、家の中の明かりは煌々とついていて、きっと外からは丸見えだったと思います。

幼い私たちはそれを気にせず、思い思いに過ごして親の帰りを待っていました。

トゥルルルルル

電話の音に、顔を上げました。

誰だろう、そう思って冷たい受話器をぴたりと耳に当てました。

「もしもし?」

「………」

「…ママ?」

母からかと思って聞きますが何も言いません。悪戯電話かな、と思った時でした。

「…見えてるよ?見えてるよ?」

受話器の向こうから、気色悪く笑う男の声が聞こえてきたのです。

「…見えてるよ?見えてるよ?」

音が少し割れて、鼓膜を細かく震わせるような甲高さを含んだ声でした。

私は思わず電話を切ってしまいました。今までに感じたことのない薄気味悪さを感じていました。恐ろしい、と思いました。

それからも時々、カーテンを閉め忘れているとそんな電話がかかってきました。姉が受話器を取って、怯える私の代わりに「悪戯電話は止めろ」と言ってくれることもありました。流石に気味が悪くて、私は夜になるとカーテンを閉めるようになりました。それから電話がかかってきたことはありませんでした。

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私の中では、ある仮説が立てられていました。以前にカーテンを開け放していたことを、帰ってきた母に注意されたことがありました。注意しても治らない私を懲らしめようとして、わざと声色を変えてそんな電話をかけてきたのではないか?と。

この仮説は自分を納得させるのには十分すぎて、それから長い間、何年も母の仕業だと思っていました。

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その仮説が最近、姉の一言で崩れ去ってしまいました。

10年以上たって、姉とその時の話をした時でした。

「ママは自分じゃないって言ってるけど、あれはほんと怖かったからやめてほしかったな〜。」

「…え?あれママがしたんじゃないよ?」

「えっ…何で?」

「うちの電話、ママの番号登録してるからママがかけたら名前でるじゃん。あの時かかってきた電話の表示…

非通知だったもん。」

…未だに、あの電話をかけてきたのが誰だったのか、分からないままです。

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