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中編3
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ある予言者の憂鬱

私は超能力者。と言ってももちろんインチキ。

手を使わずに物が動かせるわけではないし、人の行く末など見えるはずもない。

しかし、世の中も便利になったもので、こんな私にもカメラの前でそのインチキを披露する場が与えられ、今では一躍有名人である。

その日も一通り仕事を終え楽屋へ。

ふと携帯を見ると画面には着信ありの文字。「またか。」私はため息をついた。

最近同じ人からたびたび着信がある。ちょっとした友人なら無視も出来ようが、相手が恩人の親族ではそうもいかない。

私はその電話番号にかけなおしてみる。

プルルルル、プルルルル

何コール目かで女性が電話を取った。

彼女は私の師匠の娘さんだ。何度か会ったこともある。

「たびたびすみません」申し訳なさそうに彼女は話す。

「まだ先生は・・・」と私。

「そうなんです。父はあれから全く外に出てこなくなってしまって。やはりあなたから何か言っていただけませんか?」

先に言った通り私はインチキ超能力者だ。しかし師匠は違った。彼には本当に見えるのだ。未来のビジョンが!

それ故、気難しい人でありかなりの変人であった。部屋に閉じこもる事など日常茶飯事だった。昔はそのたびに私が説得し、外に引き戻したものだ。

「わかりました。では明日伺います。」 そう言うと私は電話を切った。

次の日、私は師匠の家に出向いた。

「わざわざすみません。この部屋です」と娘さんに案内され、部屋に入る。

そこには、随分やつれてしまった師匠が孫を傍らにひっそりと座っていた。手には何かのファイルを大事そうに抱えていた。

私「先生、お久しぶりです」

師匠「・・・」

私「どうなさいました先生。ご家族が心配してます。外に出てきて下さい。」

師匠「・・・」

私「今度はいったいどんな恐ろしい未来を見てしまったのですか?」

師匠「・・・・・・・・・るくせに。」

私「はい?」

師匠「知ってるくせに!!知ってるくせに!知ってるくせに!知ってるくせに!」

師匠はそう叫びながらファイルを振り回した。

その尋常では無い様子に面を喰らってしまった。が、すぐに平静を取り戻して師匠の手からファイルを取り上げた。

「失礼します」そう言うと私はファイルの中を見た。そこには・・・

ファイルの中身は新聞や雑誌の切り抜きだった。

そこには、

「エネルギー資源枯渇」

「地球温暖化」

「異常気象観測」

「未曽有の食糧危機」

「感染症蔓延」

などなど見慣れたニュース記事が並べられていた。

私は当惑した。これが何だというのだ?こんな事のために閉じこもっていたというのか?

それを察したように師匠は言った。

「ほら見ろその顔だ!みんなその顔をする!近い将来人類が滅亡することがこんなにも分かり易く予言されているのに!それに対してなんら有効な措置が採られているわけではないのに!!みんなそれを知ってるくせに!!!ワシはそれを知って平気な顔をしている奴らが何より恐ろしい」

そして師匠は傍らの孫を抱いて泣きながら言った。

「ごめんな。君にはもう占ってあげる未来は無いんだよ。」

終わりです。

怖い話投稿:ホラーテラー lowさん  

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