短編2
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孤独死

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あれは年末。クリスマスも過ぎたあたりだった。その日は晩にかけてから熱っぽくて、布団にはいると寝汗をかくほど。

「風邪でもひいたかなあ」ってな事も思ったけど、風邪とも違う感じだった。

 熱っぽくて、なかなか寝付けない。何か凄くイヤな予感を感じてて。もしかしたら「アレ」か。と思ったから。

 それで、夜も1時を回った頃、ようやく眠りに就いたわけで。

 そこで、うなされたわけ。

 それで、ある老人の姿を見たわけで。その老人は心臓の発作で、息も絶え絶えにしきりに娘か・・・多分倅の嫁の名前だと思う。

 女性の名前を一生懸命呼んでて。

 家族はいる。でも、みんなから無視されてて。

 死を悟ったそのじいさまは、汗まみれだったから、最期に風呂でも入ろうとしたんだろう。お風呂場まで這っていったところで、お亡くなりになった状況が見えて。

 その間はずっと金縛りで、金縛りが解けた瞬間、自分も目が覚めたわけだけど、その時ですわ。

 全てを成し遂げたような、晴れ晴れとした陽気な顔をしたじいさまが・・・・。

 人の部屋に入ってきて開口一番こう言ったの。

「死んじまった」

で、うちも開口一番聞き返したの

「虫の知らせ?」

 満面の笑みでこっくりと頷く・・・。陽気にあの世に旅立とうとするじいさま。

 その顔を見てうちが一言

「ちょっとまて」

 振り向きざま、満面の笑顔を送る死にたてのじいさま。

「あんた誰!!」

 の問にじいさまが・・・

「親爺の知り合いだ」

「しらねぇよ!!」

 

 このじいさま、人生最高の笑顔を自分に送ったあと、消えていきました。

 と、同時に、今までの熱っぽさも、嘘のように消えて・・・。

 

 とまあ、こんなことがありの・・・。その後、父の関係でお亡くなりになったという人は聞かなかったわけで・・・。

 ともかく、誰だか解らない他人の虫の知らせを受け取ったわけで・・・。

 でも・・・。どーも、虫の知らせを送って旅立つことは、最期に行う「幸せのイベント」な訳だけど・・・。

 自分の死の瞬間を、自分と縁の深い人に知って貰うことで、人の死は常に孤独なものだとしても、孤独を観じて死ぬのではなくて、孤独を見せて死ぬことで、現世との気持の整理が付けられるって思う。

 ただ、出来れば終活として言えることだけど、その時に、誰に自分の死を受け取って貰いたいか。その人が、自分のことを愛してるのなら良いけど、愛されてもいない人にしか、虫の知らせをおくれないとするなら・・・。

 愛されるべき人から、愛されて死ぬことも、これもまた終活じゃないのかな。

 と、思ってしまった怪現象でした。

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