コンビニに寄った帰り、公園をのぞいてみると、白いワンピースを着た可愛らしい少女がいた。
周りに保護者らしき人影はおらず、周囲をきょろきょろと見渡しているようだった。
しばらくその様子を眺めていると、少女と目があった。
少女はこちらの視線に気づくと、こちらに駆け寄ってきた。
近くで見ると端正な顔立ちをしていることがよくわかった。
「どうしたの?お父さんやお母さんは?」と聞くと、
「お母さんは私」と。
お母さんは私?首とかしげていると、少女は「おままごとしましょう」と、微笑んだ。
なるほど、おままごとの「お母さん」か。と納得すると、
少女は私の手をぐい、と引っ張った。
華奢な体だが、意外と力は強いようだった。
少女は私の手を引き、砂場を目指す。
まいったな、と思いながらも、嬉しそうな少女の後ろ姿に、少しだけなら、と根負けした。
砂場には何人かがいた。それぞれ、
「お父さん」「お姉ちゃん」「お兄ちゃん」「犬」
と、名札を付けている。
「おかえり、お母さん。きょうの晩ごはんはなあに?」
「わたしハンバーグがいい」
「お母さん、宿題教えて」
「わん、わん」
少女は砂場に座り、二人と一匹の「家族」にただいま、とほほ笑んだ。
そして、私の胸元に手を伸ばし、名札を付けた。
「ただいま、私の『赤ちゃん』」
今更ながら、気づいた。時刻は午後11時。夜食のカップラーメンをコンビニで買った後だった。
なぜ少女はこんな時間にここにいるのか、
なぜ少女の、「家族」たちは子どもではなく、大人なのか。
でも、そんなことはどうだっていい。
「家族」の虚ろな目に囲まれて、私は砂場へと座り込んだ。
「お母さん」におかえりとは言わない、だって、だって私は____
「バブゥ」
作者桐ケ谷
初投稿です。
ホラーと言うジャンルはあまり得意ではないのですが、おままごと、って何か怖いな、と思い。自分じゃない「何か」になる。私自身はおままごとと言った遊びには無縁でしたが。部屋の隅で絵本を読んでました。・・・・案外そっちの方がホラーだったりして。