私は勤め先で一番仲のいい同僚と
よくランチの時間等を一緒に過ごしていた。
以下 私:しおり 同僚:A実
A実はお菓子作りが趣味でよく私にも作っては持ってきてくれていた。
その日もA実から「昨日クッキー作ったの」と
言ってお花型のクッキーを貰った
A実の作るお菓子はどれも美味しく今回も
呑気に「ありがとう!A実の作るお菓子は全部美味しいから大好き!A実も大好き!」等と
はしゃぎながらクッキーを受け取った。
A実も、そんな私を見て「そんな風に言ってもらえると凄く嬉しいなぁ〜私もしおりちゃんの事大好きだよ」とニコニコとしてくれている。
A実は女の子らしくふわふわした感じの
少し天然が入った、おっとりしている可愛らしい女の子で私はガサツではあるがハキハキしているA実とは真逆の人間なのだが不思議と
同僚と言う事もあってか仲良くなっていた。
デスクで仕事をしながら小腹が空いてきたので
先程A実に貰ったクッキーを食べようと
包装されたリボンに手を伸ばした時、指に
チクッとした痛みが走った
「ん……?何だろう今チクッとしたような……」
よく見てみるとリボンには小さな針のような物が何本かついていた。
なにこれ……このリボン不良品なのかな?
A実がこんな事する筈ないし……と心の中でグチグチ言いながらもクッキーをペロリと平らげてしまった。
次の日いつも通りA実とご飯を食べながら昨日の出来事を話してみた。
私「昨日はクッキーありがとう!美味しかった!」
A実「良かった また作ってくるね」
私「でも何かリボン解こうとしたらチクッとしてよく見てみたらリボンに小さい針みたいなのがついてたんだよね……」
A実「え!大丈夫だった?ごめんね……私が触った時は、そんな事なかったのにな……」
私「大丈夫!ちょっとチクッとしただけだしA実は悪くないんだから!
でもA実は大丈夫だったなら不良品ではないのかなぁ……何だったんだろう」
A実「あの……昨日ね……」
「実は、しおりのデスクの辺りをC子さんがウロウロしてたの……」
C子さんと言うのは私の務める会社の所謂お局さんで気の強くガサツな私はよく衝突していた。
A実「ほら……あの……Y部長がしおりの事よく可愛がってるじゃない?C子さんY部長と噂が流れてるくらいだし、もしかしたら しおりに嫉妬してるのかもしれない……それでリボンにイタズラしたんじゃないかな……?」
私「えっ!?じゃあ嫉妬して嫌がらせしてるって事?!なにそれ……腹立つ!そもそも私はY部長と何も無いって言うのに!」
A実「あくまでも私の推測だから、あんまり怒らないで……?ごめんね私も包装の仕方には気を付けるから……」
私「あっ……ごめん……A実は気にしないでいいんだよ。ちょっとカッとなっちゃった更年期ってヤツ?アハハッ」
A実「今日はねシフォンケーキ!これ食べて元気出してね」
私「ありがとうA実!本当に大好き!」
食事も食べ終わった私は早速デザートにと
シフォンケーキを口に含んだ
「うげぇっ……ゲホッゲホッ……」
突然咳き込む私にA実は驚きながらも
「そんなに焦って食べるからだよ〜もう」
と笑っていたが、そうではなかった
私「いや……違うの……何か……変な味がするの……苦いっていうか……」
A実「え……あ、でも今日のは紅茶のシフォンケーキだから少し苦かったのかな?」
私「少しって言うか紅茶の苦味とはちょっと違う気がする……ゲホッゲホッ……なんか薬品みたいな……」
A実「なんでだろう……私変な物入れたりしてないのに……」
私「あ、いやごめんねA実を疑ってるとかじゃないんだけど……でも怖いからコレは処分させて貰うね。ごめんね折角作ってくれたのに」
少し気まずくなった私はうがいをしてくると言って席を立った。
途中C子さんが何やら愉しそうに私の方を見ていたが気にしないフリをした。
次の日また一緒にご飯を食べている時に
「やっぱりC子さんなんじゃないかな……?私の席とC子さんの席って近いじゃない?あの日は包装もリボンじゃなくてシールにしていたからバレないように剥がして何か変な物振りかけたのかも……?」と、あまり人を疑ったりしないA実が珍しくそこまで言い始めた。
私「そうなのかな……A実にも言おうか迷ったんだけど私、本当はY部長と不倫してるんだよね……奥さんがどんな人かは知らないけどC子さんではないだろうし……でも私達の関係に気付いたC子さんがそう言う事をしてもおかしくはないよね……Y部長が私の事しか見えていないからって……C子さんなんて、ただの部外者じゃない……」
A実「やっぱりそうだったんだね……話してくれて、ありがとう!
あっ今日はねチーズケーキにしてみたの!
まだ食べるの怖いかな……?」
私「ありがとう……ちょっと怖いけどA実のお菓子には負ける!」
そう言ってA実に手渡されたチーズケーキを口に含んだ時だった……
「ゲホッ……ビシャッ……ゲホッゲホッ……ゲホッ……な……に……コレ……ゲホッ……ゲホッ」
私がA実を見上げるとA実は無表情で
こちらを見つめ
「だって……しおりが悪いんだよ……」
と言ったのだった。一体何が悪いのか
私が何かしてしまったのか吐血と謎の苦しさで意識が朦朧としながらも
「なに……ゲホッ……が?……ゲホッゲホッ」
と尋ねるとA実は
「私のYと不倫なんてするからいけないのよ……」と言って左の薬指にはめられた指輪を
私に向かって見せてきた
「まさか……ゲホッ……A実が……ゲホッゲホッ……Yさんの……おく……さ……」
苦しみながらも発言する私を蔑んだ目で見ながらA実は「そうだよ。許せなかった……社内で結婚しているのは内緒にしていたけど、まさか社内で不倫までするなんてね……」
「そのチーズケーキの隠し味はねヒ素って言うんだよ。美味しかったでしょ?」
と最後にいつもの可愛らしい笑顔で
A実が私に向かって呟いたのだった。
作者怪