痛い
苦しい
息ができない
いやだ、俺はまだ
死にたくない
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俺達の前に立ちはだかるのは、全ての魔物の頂点に立ち、世界征服を目論む“魔王”。
俺も魔王も装備は万端。レベルは最高。
勇者である俺は、仲間と共に魔王をこの世から葬り去るのが使命。
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【戦士:必ず勝つぞ、勇者!】
【魔法使い:我々なら勝てます…!】
【僧侶:ここで勝って、世界を救いましょうね!】
【勇者:あぁ、勿論だ!!】
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だが、それは俺の意志じゃない。
今こうして頭の中で何かを思うのは自由だ。
でも、俺は決まったことしか喋れない。
自分の意志で動けない。
技や魔法も自分の意志で出せない。
まるで“誰かに操作されている”かのように、今も俺は技を放つ。
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しかし、さっき俺達は皆死んでしまった。
意識が途切れる前…最後に見たのは、俺達を見下ろし笑う魔王の姿だった。
故郷で待つ家族や国の民達に謝りながら、俺の意識は闇に沈んでいった。
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―GAMEOVER―
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気が付くと、目の前には魔王。
まわりにはパーティーメンバー。
あれ?俺は…魔王に殺されたんじゃなかったか?
え、あれは夢だったのか?
いや、夢にしては意識も痛みもはっきりしていたし……
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【戦士:必ず勝つぞ、勇者!】
【魔法使い:我々なら勝てます…!】
【僧侶:ここで勝って、世界を救いましょうね!】
【勇者:あぁ、勿論だ!!】
え?
死ぬ前と同じやりとり………まさか、
時間が巻き戻った!?
よくわからないが…とりあえず感謝!
今度こそこの世から葬り去ってやる!
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また、負けてしまった。
痛い
苦しい
これは夢じゃない。
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なんで負けた
どうして
あと一歩だったのに
あと
一撃で
倒せたのに
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気が付くと、目の前には魔王。
まわりにはパーティーメンバー。
また、時間が巻き戻ったのか…?
また、死んでしまうのか……?
いや、今度こそ、今度こそ倒す。
もう死にたくないから………
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なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
また負けた?
順調だったじゃないか
どうして
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「どうして、なんて…分かりきってるだろう?」
誰の声だ?
「お前を操作している奴が悪いんだ」
この声は
「なぁ?そうだろ?」
俺」
俺だ。
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「あー、また負けたー!
最高レベで最強装備なのになんでだよ……」
…ザザッ ザー…
「え、画面が赤くなった…まさか壊れた!?
僕のじゃないのに…うわー、兄ちゃんに怒られる…」
ピピ…
「エラーかな……あれ、文字出てきた」
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【勇者:お前が代わりに魔王を倒せ】
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「…え
嘘だ、いやだ!
僕はやだ!
誰か!助け」
ブツッ
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「ひろしーそろそろゲーム返してくれよ」
「あぁわかった、また貸してくれよ?
“俺”に」
作者らっぱ
初投稿です。
永遠に同じことが続くのは、死よりも恐ろしいのではないでしょうか?