アパートで一人暮らしをしていた頃、友達の絵里と居酒屋で飲んでいた時のこと。
「あのさあ、麻美」
「なに?絵里」
「髪の毛の伸びる人形ってあるでしょ?」
「ああ、心霊番組とかで良くあるよね、魂が乗り移るとか、あんなのあり得ないよね」
「ううん、有るんだよ実際。わたし持ってるの」
そこからは、伸びる・伸びない、少しは伸びるかもだけど数ミリだ・いや数センチ伸びるだのと論争が続いた。
じゃあ証拠を見せて、と言うと、
ニヤリと彼女の口元が弛み、
「良いよ、持ってくる。」と言った。
後日、人形を持ってきた。
市松人形みたいなものかと思ったが、大量生産の市販の人形みたいなもので、まるで怖くは無く、ちょっと拍子抜けした。
「伸びてるかどうか分からないんだけど…」
「貸してあげる、すぐ伸びるから」
えっ?と思ったが、先日の論争に終止符を打ちたかったし預かる事に。
伸びているか分かるように、毎日写真を撮ることにした。
翌日、朝起きてからチェックしたが変化は無い。
2日目、…あれ?伸びている。写真を見比べるまでもなく、明らかに長い。
3日目、また…伸びている。
4日目、人形の姿勢が変わっている。
5日目、人形が居ない!動かした覚えは無い。探してみると全然別の場所に居た…。
さすがに気味が悪くなり絵里に電話した。
「私の負け、返すから取りに来て…」と。
「今日は出掛けているから、明日取りに行くね」と言われた。
もう怖くて怖くて…。
人形を箱に入れ、見えない所に隠した。
6日目…目を覚ますと枕元にあの人形が!
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全身真っ赤に染まっている!
ひっっ!声にならない叫び声を上げた。
心臓が壊れるほど早く鼓動している。
『ピンポーン』玄関のチャイムがなった。
ますます心臓の鼓動が早くなる。
「麻実~?」
絵里の声だ。
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パジャマ姿のまま玄関に飛び出す。
「どうしたの麻美!顔色が悪いよ」
人形の話をすると、子供のような笑顔で言った。
「あはは、ごめんね~、全部わたしの悪戯なの。髪の毛の長さが違う人形と入れかえてたの。あの赤いのは絵の具だよ」
はあ…もう勘弁してよ…。
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あれ?
でも彼女はどうやってこの悪戯を仕込んだんだろう…
合鍵など渡していないし、
ちゃんと戸締まりもしていたのに…。
作者悠々人
シンプルに、背筋がゾワっとするような話を書いてみようと思い取りかかりました。