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中編3
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『ヨシオの本心』

「こういう話をしてると、お化けが集まってくるんだよね。」

この手の話はヨシオは得意らしく、主導権を完全に握っていた。

『ええぇ!』

女子の声は震えている。

その夜、部室に忍び込んだ僕たちは怪談話に盛り上がっていた。

学校は夏休みでお盆に入ったこともあり、僕達以外は誰もいない。

そこにいたのは僕と、同じ水泳部のヨシオ、同じくマネージャーのアヤとミユキ。

ヨシオは幼稚園からの同級生で、将来の夢はドラゴンボールを集めること、と真剣に語る変わったヤツ。

僕はアヤが、ヨシオはミユキの事が好きだった。

肝試しや怪談話を男子が女子にしたがる理由は、相手を怖がらせて自分を頼りがいのある男に見せるためのアピールにすぎない。

女子のリアクションを見て得意気にヨシオは話を続ける。

「僕の家系はみんな霊能力を持っててね。除霊もできるんだ。」

『ほんとっ?除霊もできるの?』

「うん。今日はお札を用意してあるよ。」

『おふだ?』

「そう。昨日ね、体が重いって言ったら、じいちゃんがくれたんだ。

…ちなみにさっきから、プールに何か感じるんだけど、みんなは気付いてた?」

ヨシオは窓の外を指差した。

部室の窓からは、月明かりに照らされ、不気味に浮かび上がるプールが見える。

『あのプール、よく事故があるんだよね。ずっと昔、溺れて死んじゃった生徒がいて、それから何回も。』

「そう。幽霊のせいだと思う。だから除霊しようと思うんだ。」

ヨシオは半袖シャツを脱ぎ始めた。

『やめようよ。あぶないって。』

3人で必死に止めようとしたが、ヨシオは聞こうとしない。

「じいちゃんのお札の結界で守られてるから、大丈夫だって。」

と、親指を立てて見せるヨシオ。

眼鏡が、月明かりにキラリと光る。

中二のくせに、ビキニパンツを履いた彼は、ちょっぴり大人に見えた。

「じゃ、行ってくる!」

その直後だった。

振り返って、部室のドアを開けたヨシオの背中を見た僕達3人は驚愕した…。

ヨシオの背中にはりついていたモノ、それは……

『お札』という名の

『湿布』二枚

おぉ、友よ…

本気なのか?

その装備でプールに潜む魔物たちに立ち向かうのか?

そんな僕達を無視して、消毒漕に腰まで浸かるヨシオ。

戦闘準備に入っているようだ。

どうみても、風呂に浸かる老人にか見えない。

僕達は、いろんな意味で不安げにヨシオを見守っていた。

「でてこーい!悪霊共!姿を見せないなら、こっちから行くぞ!」

飛び込み台の側に立ったヨシオは大きく深呼吸を始めた。

そうだ!

お札はなくても、切り札がある!

彼は悪霊を除霊できる技を習得しているのだ。

ヨシオはなにかブツブツ言いながら、足を肩幅に開き、両手を高く上げた。

緊張した尻には、パンツが完全に食い込んでいる。

回りの田んぼで鳴いている蛙の声が、一段と大きくなった気がした。

「ハァーーーッ!!!」

ヨシオの叫び声と同時に、辺りが閃光に包まれた…。

『コラー!こんな時間に何やっとるかぁ! 』

プールのライトが全面を照らしたと同時に、先生の怒鳴り声。

「イテーよ、先生。」

腕を掴まれ、先生に引きずられていくヨシオ。

ふと振り向き、ヨシオは僕を見て笑顔で親指を立てた。

…そっか、本当は僕の事、見えていたんだね。

いつまでも、ここにいちゃダメだよね。

いい加減、成仏しなきゃね…。

ヨシオ

ありがとな!

こうして、僕の夏とヨシオの初恋は終わった。

怖い話投稿:ホラーテラー ソウさん  

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