短編2
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盂蘭盆過ぎに

最後の体験になりそう

そんな予感がしたので

また此処へ来てしまいました。

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今年の夏は出産のため里帰りをしました。

実家も引越して間もないので

行ったことのない土地でした。

嫌な雰囲気はなく居心地の良いマンション

落ち着いて暮らせると安心したものです。

景色には多少難がありますが...

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ベランダから見える景色は

右下が墓地、正面が駅前のため栄えた繁華街と墓地

左下は小料理屋の立ち並ぶ路地裏が広がっています。

この墓地、500mも離れていない場所なのですが

街中の割に大きな敷地を持つ別々のお寺です。

玄関通路側にはまた別のお寺があり

墓地に囲まれ過ぎやしないか?と思うマンションでした。

家の説明はこれくらいにして

私が視るモノについてお話しようと思います。

いつも通り怖くないので怖い!をお求めの方はまたの機会に...

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お盆の事でした。

強烈な眠気に襲われ、夜21時と早い時間に布団へ入りました。

その日は昼過ぎに散歩へ行って

暑さとゲリラ豪雨に遭ってしまい疲れていたので。

しかし1時頃目を覚ましてしまった私は喉が渇き仕方がなかったので

飲み物を取りに行こうと起き上がろうとしました。

サァァァァァ...

うぅっ...うっぐ...

雨がまた降っているのかな?

それに男の人が声を押し殺し泣いているような声

私の部屋側のお隣さんはいません。空室です。

少し不気味に思い物音を立てぬ様にベッドから抜け出し

キッチンへと向かいます。

あれ?

月が多少出ているのに

窓の外は重たい闇に包まれています。

繁華街だから真っ暗になる事もないのにおかしい。

星も出ている...

さっさとお茶を飲んで戻ろう

そう思って部屋に戻りました。

また急激な眠気に襲われるのですが雨音は強くなり

鳴き声も収まりません。

気にはなるものの眠気には勝てず...朝まで熟睡しました。

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不気味な事は続くもので

次の日もその次の日も闇と声は止まず

盂蘭盆となりました。

その日は外出する事なく

洗濯物を入れようとベランダに行くと

「俺だけかぁ」

父は仕事で家におらず

私と母だけです。男の人の声が聞こえるはずがない。

誰だ?

嫌な気分になったのでお守りにと腹帯に鏡も入れました。

死者には胎児が見えるそうですからね。

気にしないでおこうと洗濯物入れを再開した時

「また1人かぁ」

そんな声がハッキリ聞こえて正面の墓地に目をやりました。

下半身のない水色のポロシャツの中年が

組んだ腕を墓石に乗せ

周りの墓を見渡していました。

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迎え盆にも送り盆にも来てもらえなかった方なのでしょうか

なんとなく寂しそうな声と後ろ姿にこちらまで寂しくなります。

そして私も二度と視る事はないだろうな。と

そんな予感がしました。

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17..ちょい怖だな…不吉…

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