これって・・アメリカンコミックかよ

長編32
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これって・・アメリカンコミックかよ

今年もお盆の日が来ました

誰かは一人は必ずあのお寺へ寝泊まりするというルールを作ってオハルちゃん達ご先祖様たちの供養と庭園の先にあるお墓参りをすることにあの日から毎年続けておりました。

住職も快くさせてもらい私たち一族は今のところ災厄は起きていません。

私もS子と結婚しまさかの4人も子供が出来ました。

子供4人も授かったのはもちろんオハルちゃん達の力添えだと感じております

お狐様のお力も必ずあるとおもいます

今年は珍しく4人組がお盆に休みが取れたということで

お互いの家族総出てあのお寺へお泊りすることになりました。

日々、それぞれが忙しく連絡も取れない日々もありまた会うこともなかなかできずに

いました。

しかし、これではいけないということで今年は4人組とその家族がご先祖様の供養を

しようということでなんとかスケジュールを調整してもらったというのが実情です

特にS君とF子には非常に迷惑をかけたと思っています

2人ともモデルと写真家(セミプロ)という職業で仕事に穴をあけることはそのまま仕事が無くなるという厳しい世界にいます

私はなんとかスケジュール調整をしてほしいと頼み14~16日の間だけの休みを作ってもらいました

S君の場合はサラリーマンをしながらの写真撮影なのでなんとかなりましたが

F子の場合は完全にプロなので半ばあきらめていました

しかし、F子が事務所への説得をしなんとか休みが取れたということで安堵しました

今年は私の家族側からF子、私たち夫婦と子供6人とおふくろが初参加

S君側からはS君とS子ママ

の総勢10人という大所帯となってしまいました

トンチンカン親父は留守番ということで・・・来たら必ず騒動になるからね

F子は少しションボリしていましたがおふくろが来るということで多少立ち直ったようです

S君パパはS君側の親族のお盆供養がありそちらへ出かけるとのこと

先月にあのお寺の住職へ総勢10人の予約が取れるかどうか聞いたところ

快く快諾してもらいました

後、大おばさまももしかしたら参加するかもという連絡があり

総勢11人という大勢であのお寺へ寝泊まりすることになりました

しかし・・・10人は・・・レンタカーであるのか?

聞いてみたところハイエースがあるということでハイエースをレンタルしました

でも・・・こんなでかい車運転したことが無い・・・大丈夫なのかとS君と話をし

まぁなんとか慎重に運転すればなんとかなるさ、という少し不安のある話をしました

本当は車2台分で行こうかと最初思ったのですが

結構な距離を走るためかならず交代で運転しないと危ないということで車1台で行くことにしました

子供たちは初めて行く自分たちのご先祖の土地をどう思い感じるのかとても楽しみです

今年の夏はもろに暑く子供たちが途中でへばるんじゃないかと心配をしていました

だが・・・このハイエースの空間の広さと大所帯なので必ず誰かが子供の相手をしてくれて

子供たちも道中の飽きがこなかったせいか元気よくお寺へ着きました

慎重に走ったせいもあって結局お寺へ着いたのが午後3時過ぎでした

荷物の量も半端なく多く15日~16日分2日分の着替えなどハイエースの後ろの空間は荷物で埋もれてしまいました

相も変わらず蝉がうるさいほど鳴いていました

お寺の入り口から順に入っていきました

子供たちは初めて見る風景にキョロキョロと見回し

一番下の女の子が

「わたちーー、ひさしぶりに来たんだぞぉーー」とS子に話しかけた時に

S子はびっくりした顔で

「え!?おっちーー、葵ちゃん(一番下の女の子)はここはじめてなはずだけどね」

私も驚いて

「だよな・・・」

「葵ちゃん、どうしてここがお久しぶりなの?」

「んと・・・・わたちーー、なんか・・んん・・・わかんない」

まだ末娘は「わたし」を「わたち」とよぶ、まぁ・・・「おっちー」よりはマシかな

でも子供たちを見てると何かこのお寺の間取りを知っているかのようにさっさと歩いていく

まずはじめに見た不思議な光景です

住職が玄関先に立っていました

「これはこれは皆さん・・・遠くからお疲れ様ですわい

おおお!子供たちも元気よくいい子たちだ

オハルちゃん達を思い出しますわい

」と笑顔で挨拶してくれました

「今日は住職様、大勢で押しかけて申し訳ございません

騒がしくなると思いますがよろしくお願いします」とS子ママが住職に挨拶をした

「おひさしぶりですのぅ・・・・お元気そうで何よりですわい」と返事を返した

子供たちも元気よく挨拶してくれてほっとした

「わたちー、よろちくおねがいちます~~」と末娘がなんとか挨拶らしい言葉で住職に話しかけてくれた

「おおお、かわいいかわいい、お嬢ちゃん、こちらこそよろしくですわい」と丁寧に末娘に返事をくれた

「えへへへ、ジュウチョウクさまからほめられちゃったんだぞーー」とうれしそうに顔を隠してた

というか・・・このしゃべりかた・・・まさにS子だ・・・完全に影響を受けてる

まぁ・・・末っ子で一番S子に甘えているからな

S子も無茶苦茶なかわいがりをしてるし・・・

「おっちーーー、よかったんだぞーー、葵ちゃん」とS子までもが喜んでた

「ママ~~その「おっちー」は目障りだからやめてほしい」と長男が文句を垂れた

「おっちーー・・・でもママこれ口癖だから治らないよ・・・」とS子はションボリしてた

「兄ちゃん、、ダメだよ、ママをいじめちゃ、かわいそうだよ」と次男がフォローした

「おっちーー、仁、ありがとうだぞーー」とS子復活した

そのやり取りを見てた住職が

「久しぶりに兄妹たちの会話を聞きもうしましたわい、

オハルちゃん兄妹以来ですわい

いいですな、兄妹が多いということは・・・いつも賑やかで」とうれしそうな顔で子供たちを見てた

しかし・・・長女の楓がキョロキョロと周りを見回してた

「ママ・・・やはり・・・葵の言う通り・・・ここ見覚えがあるような気がする・・・

私もここ初めて来たけれど・・・なんだろう・・・懐かしい・・」とS子に話しかけていた

「おっちーー、楓ちゃんもなの?おかしいな・・・はじめてきたところでしょ?」

と子供たちに話しかけた

「あのさ、ママ、こいつらTVかなんかでこういう景色を見たんじゃない?

だから・・・懐かしいと言ってるだけだよ」

「あの・・匠兄ちゃんには悪いけど・・・俺もなんか懐かしいんだよな」と

仁も懐かしいと言ってきた

「わたし・・やはり・・・ここに来てるような感じがするよママ」と楓はS子に言ってきた

どういうことだろう、まさか、オハルちゃん達がこの子たちに乗り移っているのかな・・・

ありえるかもしれないけど・・・

まさかねぇ・・・

S君も驚いた顔をしてた

F子もだ

「アニキ・・・もしかしたらオハルちゃん達来てるかもね」とF子が私にそっと話してきた

「可能性はあるけれど・・・もしそうならうれしいな・・・ひさしぶりに話がしたいし」

「わたしも・・・特にオアキちゃんと話がしたい・・・どうしたら凛とした女性になれるか聞きたい」とF子は期待半分な顔をしていた

「そうですかな・・・懐かしいとな・・・これはこれは・・・」と住職もオハルちゃん達が来てる予感がしているのかも

「さぁさぁ・・・暑いですから仏間へどうぞ」と住職はみんなを案内した

すると仏間に珍しい客人がいた

「おっちーーー!!!!!大おばさまなんだぞーーー、おひさなんだぞぉーーー、元気なのかな?」と

S子はびっくりした声で叫んだ

「おおお、おっちーーーー!!!S子ちゃん、いつもながら元気がいい子だぁ・・・

こんなに大きくなっていい子いい子」とS子の頭をナデナデした

「おっちーーー!!!元気なんだぞーーー」と嬉しそうに答えていた

「ママ~~~、「おっちー」はやめてーー」と匠が文句を垂れた

「誰~~ママ、この人?」と仁が不思議そうに大おばさまを見ていた

「・・・ママ・・・このおばあちゃんは誰?」と楓も尋ねてきた

「わたち~~~、このおばあちゃま知ってるんだぞーー」と末娘が話した時に

一同愕然となった

次々にS子の後ろから子供たちが現れて大おばさま・・

「おおおぉーーまた小っちゃいオハル大おばさまに会えた~~

うれしいーーー、長生きしてよかっとわい」と大喜び

「おっちーー、オハル大おばさまじゃないんだぞーー、私の子供たちなんだぞーー」と

S子は大おばさまに説明をした

「おっちーーー!!S子ちゃんの子供!?いつのまに・・・・あらまぁ・・ママになったんだぁ・・・

そっかぁそっかぁ・・・」といいながら子供たちを見てニコニコした顔で見ていた

すると末娘が「わたち~~~、このおばあちゃまを抱っこしてあげたことがあるんだぞぉーー」と

またもや仰天なことを言い出した

大おばさまもびっくりして

「え?ええええ?まさか・・オハル大おばさまかいのぉ?」というと

「わたち~~、だよ、オヒサなんだぞぉーー」となんとなくオハル大ばあさまの口調に似た

感じで答えた

大おばさまあまりにも久しぶりに聞くオハルおばあさまに似た口調なので

「オハル大おばさまだぁ・・・・うれしぃい・・・やはり今日はきてよかった

なんとなくオハルおばさまに会えるような気がしていた・・・」と涙をながしはじめた

私たちもそのやりとりをみてて鳥肌が立った

すると

「ナンデェ~~ナミダがでてるのぉ?誰かにタタカレタのぉ?」と葵が大おばちゃまのシワシワの手を握り聞いていた

「おおお、おおお、オハル大おばちゃま・・ありがたいのぉ」と葵の小っちゃな手を握り返した

子供たちが心配そうに大おばさまの周りに集まってきた

「タロウ大おじさま、ジロウ大おじさま、オアキ大おばさま、オハル大おばさまたち

わしゃうれしくて涙がでてるだけじゃで・・・ありがたいのぉ」と涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた

あの人見知りの楓が躊躇もなく大おばさまの手を握ってた

楓もF子と同様で人見知りが激しい

「楓ちゃん、私と同じ・・・これから少しつらいけれど・・・

私がお友達になるよ、アニキ」とF子から言われたことがある

しかし、不思議とF子とは自然に話すし

「F子おばちゃんとだとなぜか不思議と話せる

将来、楓はF子おばちゃまみたいな美人のモデルになるんだ」と嬉しそうに言っていた

F子がいると必ず楓がまどわりついてる

「本当に楓ちゃんかわいい」とF子もうれしそう

たまに撮影スタジオに連れていくようだ

スタッフの評判もいいみたい

いずれ楓ちゃんもモデルになるかもね、と言われてるみたい

S君がカメラマンの時に2人一緒に写すらしい

「Sアニキの撮影技術はイマイチ・・・だよね・・・

せっかく美人2人がいるのにね」と楓と話してるらしい

「Sおじさん、ちゃんと綺麗に撮ってよ、ママに言いつけるよ」と楓から言われたらしい

どこかで聞いたことがある、とS君大笑いしてた

大おばさま上機嫌

末娘を抱っこしてくれた

楓は大おばさんの手を握ったまま

私たちはこの場面を見て懐かしさで胸がいっぱいになった

住職の奥さんが水ようかんをもってきてくれた

子供たち大喜び

おいしい、おしいい、といいながら完食した

子供たちが水ようかんを食べ終えて庭が気になるのが

庭で遊びたいと言い出してきた

私はもちろんOKを出した

かくれんぼや鬼ごっこなどをしていた

やはり・・・末娘・・・頭をかくしてお尻が出てる・・・ほら見つかった

「わたち~~、ナンデェミツカッタノカナぁーー」と不思議そうな顔をしてた

「おまえ、葵、お尻が丸見えだからだよ」と仁に言われてた

「エエ~~ワタチ~~ちゃんとかくしてたよ」と仁に言い返していた

この子たち、やはり匠の周りから離れない・・・・

匠は本当に兄弟たちのめんとうをよくみてる

タロウ兄ちゃんのようだ

どうしてもオハル兄妹たちと比較してしまう

暑いのによくもまぁ・・・飽きずにあそんでいられるものかなぁ・・と感心をしていた

「あの子たち・・・あなたたち4人組と同じだよね、暑いのにも関わらず

外へ飛び出していったんだよ」とS子ママいや義理母がしゃべりかけてきた

たしかに・・・・

S君が真っ先に飛び出し次に私が家から出ていった

S子とF子は手を握り私たちの後を追ってきた

住職の奥さんが冷たいお茶を持ってきてくれた

子供たちを軒先へ呼んだ

匠を順に並んで座った

冷たいお茶を飲みながらワイワイガヤガヤと兄妹たち雑談をしていた

仲がいい

特に末娘はみんなからかわいがられていた

大きな声とハキハキとした行動がかわいらしく

特に姉の楓によくかわいがられている

冗談を言っても必ず愛想のいい返事をする

日が落ちてきた

辺りがうす暗くなりもうそろそろ夕食の時間だ

山から下りてくる風が心地よい

山の上にある神社の明かりがよくみえる

夕食を食べ終わたら子供たちと神社へ行ってみよう

とりあえず住職に許可をもらった

夕食はこのお寺の自慢の料理だった

S君は相変わらずカメラを持ちいろいろと撮影していた

特に子供たちを中心に撮影していた

「おい!S君、もう撮影はやめた方がいいよ」と私はS君に注意をした

S君、意味が分かったらしくすぐに撮影をやめた

「あぶないあぶないS子に食べられるかもな」と私にボツリと話した

「ママ~~Sおじさんの分たべたら、ダメなんだぞぉーー」と葵が

S子に注意をした

え!?話を聞かれたのか?とおもった

「え?食べないわよ、楓ちゃん」とS子は半分びっくりした顔になっていた

私とS君もびっくり

大勢で食べる夕食は実においしい

外からの風も涼しく

周りが静かだから余計に雑談の声が大きく聞こえた

私たちの小さい時の話題となった

「ザリガニ事件」

「墓場で遊ぶな」

などまだまだ思い出話が出た

ザリガニ事件の話をしてる時に

子供たちから

「ママ、パパをいじめちゃダメだよ」とS子は子供たちから言われていた

「え?ううん、ママはFアニキいやパパをいじめたのではなく

ザリガニがママの指を挟んで痛かったから無理に離そうとして

ザリガニと格闘してたら偶然にもパパの背中に入っちゃったの」という弁明をしていた

・・・いや違うだろ、あきらかに背中に入れ込んだよ

「ところで・・・おじィチャ・・・コナカッタの?」と葵が私に問いかけてきた

「え?おじいちゃん・・・来ると大変なことになるからだよ」と説明をした

「エ・・・タイヘンな・・・アオイ、イミガワカラナイけれど」と理解していない様子

「オジイチャ・・・サングラスでカッコイイノニィ、楓おねえちゃんもオジイチャんかっこいい、と言ってるんだから」と楓の顔を見ながら話した

「なんで?おじいちゃんが来ると大変なことになるの?パパ」と楓も聞いてきた

少し私の昔の出来事を簡単に話した

「おじいちゃん、すんごい、さすがーー」と匠が吠えた

「なにかやるんだよな、うちのじいちゃん」と仁もびっくり顔

F子が

「アニキ・・・今背筋に電気が走ったよ・・・」と

耳元でささやいてきた

「え!、物の怪の気配?」と尋ねた

「ううん・・・物の怪よりもすごいもの悪霊よりすごいものがこのお寺に近づいてるような気がするの・・・」

「え・・・まさか・・・」

「アニキ・・・そのまさかかもね・・・」

ついに恐れていた者が来そうだ

一応私のおふくろが守護神なので安心なのだが・・・

車のキー音が聞こえた・・・間違いない奴が来た・・・・

「おーーい!!!、F子ちゃん、いるかい?」

と玄関先からF子を呼ぶ声

「パパだ・・」とF子が真っ先に玄関へ走った

「よぉ!F子ちゃん、お待たせ」

「え!?パパを呼んだ覚えはないけど・・・」

「なんとなく・・・呼ばれた気がしたからだよ・・」

「ええええ!!!!なんとなくって・・・」

続いて子供たちが玄関先へぞろぞろとF子のまわりにまどわりついた

「おおお!!!、おまえたち元気か?じいちゃんがきたぞ」

「おう!じっちゃん、いつもサングラスかけてかっけぇーー」

「じいちゃんも上がって」

「じいちゃん・・・かっこいい・・・」

「ジィちゃま・・・カッケイイ」

次々とトンチンカン親父を褒めて親父上機嫌

「上がるぜ」

おいおい・・・勝手に上がるなよ

「よぉ!くそぼうず、おひさしぶりだな」

「ええ!!あぁ・・・これはこれは親父様、おひさしぶりですわい」

「お!今日は大勢で賑やかそうだ、俺も入るぜ」

うわぁ・・・誰も呼んでないのに・・・

「おまえさんは誰やのぉ?」と大おばさまが親父に質問した

「なんだぁ、ババァまでいるのか、俺はこの小ちゃい坊主共のじじぃだよ」

大おばさま・・目が点になっていた

「わしゃてっきり・・・どこかのヤクザが押し入ってきたかとおもうだわい

ほんにぃ・・・品が無いこと・・・躾のないこと・・・」

大おばさま・・・みんなが思ってることは言わないでくれ・・・

おふくろの顔がどんどん機嫌が悪くなってきた

「あんた!なんでここへきちょる、留守番してろと言ったろ」とついにおふくろが切れた

「え・・・・そのぉ・・・」親父歯切れが悪くなってきた

「あんたは誰もよんどりゃせん、早う帰れ、ボケカス!みんなの迷惑だよ、ちゃんと一人で留守番してな」とおふくろの怒声が響いた

「はい・・・帰ります」とみんなに頭を下げて帰ろうとしたときに末娘が親父の手を握って

「なんでぇ・・・みんなでじいちゃまをいじめるの・・・セッカク・・キタンダヨ・・・

バアチャン・・オネガイ・・・ジイチャマを今日一晩だけェ・・・」とおふくろに頼んでいた

「葵ちゃん・・・いい子だね・・・とても私たちの孫娘とは思えないよ

こんな躾の悪いじいさんをかばうとはね、いい子だよ」と葵の頭をなでなでしてた

「あんがとよ、葵ちゃん、じいちゃん、今晩は大人しくしてるわ」

「あたりまえだよ、そこの隅へ座ってな・・・勝手に話に割り込むんじゃないよ」と親父にくぎを刺した

「ばあちゃん・・・すげぇーー1発であのじいちゃんを黙らせた・・」と匠は呆然としていた

みんな・・・唖然・・・うわさに聞いていたおふくろの怒声、あらためて目の前で吠えられて

一同改めておふくろにはさからわないと誰もが思ったに違いない

なんとかみんな落ち着いてきた

F子の予感は必ず当たる

さてと・・・

「子供たち、これからあの山の頂上の神社まで少し肝試しをするよ

みんなで一緒に山登りしようか」と子供たちに呼びかけた

「ええーー今からなの・・・外暗いよ、パパ、明日にしようよ」と匠が以外にも拒否の返事

「パパ・・・わたしも少し嫌・・・匠兄ちゃんと同じで明日にしようよ」と楓も拒否の返事

私はF子に

「楓がああ言ってるけど・・・大丈夫だよな?」とF子に聞いた

「私は何も感じてないけど・・・楓ちゃんがなにか感じているのかな・・・

私、大人になってからだいぶ鈍感になったからね、あ!そうだ!悪霊には悪霊がいいかも

パパも一緒に連れていこうよ」と提案してきた

「ナイスアイデア!おい、おやじよ、一緒に来てくれ」と親父に頼んだ

「おう!ついていく」と即答

「ほら、みんな、じいちゃんが付いてくるよ、みんなで行こうよ」とF子がみんなを説得してくれた

「おっちーーー、F子おねえさんの頼みを聞かない子はママの子じゃないんだぞーー」と余計な一言

「まぁ・・・ママの子じゃなくなったら・・・仕方ねぇ・・・参加する」と匠が口火を切った

「あたちも・・ママの子じゃなくなったら・・アオイも・・いくぅ・・・」

「あたち・・・じいちゃんと一緒に行くーー」と葵が最初に親父をゲット

「あっ!とられちゃった・・・」とF子しょんぼり

「わたしはF子おねえちゃんといくよ」と楓がF子を指名

「うんうん、一緒に行こうね」とF子立ち直った

「葵ちゃん、じいちゃん、うれしいぞ」と親父上機嫌

「あたち・・・じいちゃんを守るんだぞぉーー」と

おいおい逆だろ

「ママ、しっかりと俺と仁のうしろについてくるんだよ」

「おっちーーー、ついていくんだぞぉーー」

おいおい・・・

葵と親父を先頭に順に並んで山の頂の神社までゆっくりと歩いた

とにかく末娘のペースで歩かないとね

砂利が多く転びやすい

ましてや夜道だから

街灯が全然無く懐中電灯が頼り

下を見るとお寺の仏間からS子ママたちが見ていた

「葵のペースでゆっくりと歩いてほしいぞ」と私はトンチンカン親父に言った

「まかせておけ」と親父の返事

「まかっせっておけ」と親父の真似で葵も返事をした

後ろから見る葵はなんとなくオハルちゃんそっくりだ

中間の祠まで来た

「ここで少し休憩するよ」と私はみんなに言った

それぞれが好きな場所に座ったり立ったりしたまま休憩をした

ジュースやお茶などそれぞれが持ってきたものを飲んでいた

後ろを振り向くと真っ暗闇

普段明かりのある街で住んでいるからこの真っ暗は怖い

楓に私は

「ほらあそこ見て、お寺さん、ほら、仏間からおばあちゃんたちが見てるよ」というと

「あ!ほんとだ、おばあちゃんたちだ、ちゃんと見ててくれてる、うれしい

葵、ほらあそこ見て、おばあちゃんたちだよ」と葵にも声をかけた

「あ!、ホント、わたち、先にいるから先の方暗いからじいっちゃんの手を離さずにきたよ、

暗いから、ワタチ、コワイ・・・ヨ、パパ」と葵は私に声をかけてきた

「じいちゃんがいるから大丈夫だよ、葵、絶対にじいちゃんの手を離したらダメだよ」と葵に言うと

「わたち、ぜったいにじいちゃんの手を離さないよ、パパ」と返事をしてくれた

匠と仁はいつもの如くふざけあってる

楓は周りをキョロキョロとみまわしてはF子の手を握ってた

葵は親父のを手を離さずに親父からお茶を飲ませてもらってる

S子とF子はいつもの如くおしゃべり

親父は葵を相手にお茶を飲ませたりおしゃべりをしてた

およそ30分ほどの休憩をして再び歩き出した

「そろそろ行こうか」と私はみんなに言った

「おう!、いくぞー」と親父のかけ声で歩き出した

「オウ、いくんだぞーー」と葵も真似をして大きな声を出した

相変わらず歩きながらも匠と仁はふざけあってる

昼間の暑さが飛ぶような涼しい風が吹き出した

「ウォーーーー」とどこからともなく変な音が聞こえた

一同、立ち止まった

「え!?今の音?声?何か聞こえたぞ」とS君はシャッターを切るのをやめた

「私も聞こえた」

「俺もだぜ」と親父も聞こえたようだ

ここの山からではなくどうやら向かいの山から聞こえたような気がした

「ウォーウォーーー」

また聞こえた

「猿?かな・・・動物が吠えているのかな?」とS君

「猿のような・・・なんだろ?」と私はS君に聞いた

「わからん・・・でも向かいの山から聞こえてくるのは確かだ

「でも向かいの山は道がないよ・・・こんな夜に・・人じゃないよな?」

「だとおもうけど・・・大丈夫かな・・・」とS君は少し不安そうな顔をした

楓がキョロキョロと落ち着かない

「どうした?楓」と私は楓に聞いた

「パパ・・・あのね・・・言おう言おうとおもったけれど・・・

今さっきから・・・パパのずーーと後ろから誰かがついてきてるような気がするの

今さっきの声ね・・・向かいの山からじゃなく・・後ろから楓は聞こえたよ」

「え!!・・・うしろ・・・・」私はうしろを振り向いて暗闇の中をじっと見ていたが

何もいないような気がした

S君もカメラ越しに後ろを見てもらったが「何も見えない」と言っていた

神社までもう少しの距離だ

ここであきらめて引き返すか

それともこのまま神社へ行くべきか・・・

決心した

とりあえず神社まで行き様子を見よう

「よぉし、神社までもう少しだ、行こう」とかけ声をみんなにかけた

「おし!行こう行こう」と親父の声

なんとか神社までたどり着いた

鳥居をくぐり抜けて少し広い場所で全員集まった

しばらくそのままで・・・後ろから何者かが来ないかみんな鳥居を見ていた

10分ほど待ったが誰も来ない

とりあえずそれぞれが見える範囲内で休憩をすることにした

幸いにも神社には街灯が一つだけ点いていた

真っ暗闇ではない

懐中電灯もドラブルもなくちゃんと点いてる

私は一応住職に事の成り行きを携帯で話をした

そちらのほうで誰か神社の方へ向かった人はいないか確かめた

それとお参りなども可能性があるのでS子ママたちにも私たちの後ろから人影など

いたかどうかも聞いた

やはり・・・だれも神社へ向かったものはなく

人影も見ていないとの返事

楓の気のせいなのかな・・・と思ったけれど・・・少し気になる

とりあえず住職にも仏間から私たちの様子を見ててほしいと頼んだ

事があればこちらへ来てもらうように頼んだ

およそ30分ほど休憩をしたのち下山することにした

帰りも行きの順に葵をペースにゆっくりと下山した

楓はもうキョロキョロとしていない

「楓・・・どう?なにか感じる?」と聞いた

「パパ・・・もうね・・・神社へ入ったときに気配が消えたよ

いまのところね、気配はないよ」との返事

楓もF子同様人見知りがありすこし霊感があるようだ

肝心のF子はたしかに大人になってから徐々に霊感らしきものは少し無くなった、と話してくれた

その代わりなのか楓が霊感予知能力みたいな能力を生まれながらにして備わってるようだ

先頭にいる葵は親父の手を握ったままおしゃべりしながら歩いていた

おやじは懐中電灯片手に持ちもう片方は葵の手をしっかりと握っていてくれた

葵のおしゃべり相手にもなっていた

葵も片言ながらよくしゃべる

祠のある中間点についた

とりあえずここで30分ほど休憩をした

祠から見える仏間にS子ママたちがジーと見ていた

和尚もじっとこちらを見ていた

和尚の動きがないので恐らく何も変化はないと思う

ここから見るお寺は本当にきれい

とくに日本庭園は光のバランスが良いのか夜の方が一段と妖しく見える

匠が仏間にいるS子ママに両手で合図をした

するとS子ママも同じように両手で返してきた

「お!おばあちゃんたち俺らをちゃんと見守ってくれてるぞ、仁」と仁に話しかけていた

「だな、兄ちゃん、おばあちゃんたちあそこから離れないでずーと見守ってくれてたのかな

じいちゃんがいるからちっとも怖くなかったよな、兄ちゃん」

「おうよ、じいちゃんは強いからな、唯一の弱点はばあちゃんだ

ばあちゃんの怒声でじいちゃん一撃で黙ったもんな

ばあちゃんが一番最高だよな、仁」

「うん、普段ニコニコしてるばあちゃんが怒ると怖いよな」などと話していた

楓はF子の手を握ったままおしゃべりをしていた

葵も親父の手を離さずにおしゃべり

以前に葵に一番好きな人は誰?と質問したら即座に「じいちゃん」と答えた

理由は単にかっこいい、とのこと

「あたち・・将来はおじいちゃんみたいな人とケッコンしたいんだぞー」と自信満々に答えてきた

葵とF子は親父っ子だからな

時間が経つにつれて外気温も徐々に下がってきた

やはり山なのかな

もうそろそろ午後11時になる

葵ペースで歩いているから遅い遅い

後30分ほどでお寺に戻れるかな

もう周りは完全に闇

懐中電灯がなければ全然周りが見えない

虫の声が一層うるさい

ハッカ油を適当につけているので蚊などは寄ってこない

すごい効果だ

スースーとして涼しく且つ虫よけにもなる

さてそろそろ出発だ

「さて、行こうか、お寺までもう少しだよ」と声をかけ

全員歩き出した

足元に気を付けながら下山していった

やっととこさ、お寺の墓場前に出た

ケガもなく全員下山できた

和尚が仏間から出てきた

「おお、ご無事で何より・・・

仏間から見てましたが・・・何も見えなかったですわい

お参りする人はここの墓場の横の道を通らないといけませんからな

仏間からだとよく見えますわい

特にサラリーマンの方で残業などをしてお参りがどうしても夜中になる人もいますわい

お寺から神社まで普通の人なら30分で行けますからな

ちょっとした息抜きや軽い散歩で神社へ行く人もいますわい

途中の祠当たりで少し広場になってるから休憩場所としては最高の所ですわい

春から夏にかけては登山者がよう来られますわい

夜中でも夏の間はお参りする人が多いんですわい

今日は誰一人お参りする人がいなかったですな

さて皆さんお疲れでしょ

仏間に冷たいお茶とジュースと水ようかんを置いていますわい」と住職は私たちをねぎらってくれた

「おっちーーー、水ようかん大好きだぞーー」

「わたちも、ママと同じで大好きだぞーー」

ぞろぞろと仏間へ上がっていった

私は渡り廊下に座ってお茶と水ようかんを食べながら庭を見ていた

ほっとする

仏間の方は子供たちが雑談して賑やかだ

S君はカメラを手に写していた

「S君、もうそろそろカメラを置いて冷たいお茶でも飲んだ方がいいよ」とS君に促した

「お!だな・・・少し疲れたし・・・よっこらせ、と・・・水ようかん水ようかん、うまい」と水ようかんを口にしてうまいうまいといいながら食べていた

さて子供たちはもうそろそろ就寝の時間だ

「さてと・・・子供たちよ、もうそろそろ寝ないとね

部屋割りは

子供たちと大おばさまと私とS君は仏間

F子とS子とS子ママは隣の部屋で

おふくろとおやじはもうひとつ隣の部屋で寝てほしい

それとトイレなどで部屋から出るときは必ず2人で行ってきてほしい

とくに親父、おふくろを起こさずに一人でどこかへ行くのは禁止だぞ

子供たちは必ずパパかSおじさんを起こしてからね

絶対にお寺の外へ行かないこと

外へ出るのはお庭まで

これだけは絶対に守ってほしい」と全員に注意した

トイレは住職夫婦の部屋の横にある

つまり奥にあるのだ

結構な長い廊下を歩かないといけない

一番守らないのはトンチンカン親父だろう

大人しく寝てればいいけど

子供たちは素直に返事をしてくれた

布団を敷いてすぐに子供たちは横になった

やはり寝ずにおしゃべりばかりしている

まぁ仕方ない

軽い肝試しと昼間の興奮で寝れないんだろう

S君はカメラの掃除とSDカードからノートPCへ写真データの移しをしていた

住職は寝る前に題目を唱えてた

隣からは女子のおしゃべりが良く聞こえる

楓と葵もおしゃべりをしていた

私は再び廊下に座って庭を見ていた

しばらくすると子供たちのしゃべり声が聞こえなくなった

振り返ると子供たちは寝ていた

住職も題目を終え自分の部屋へ行ったようだ

S君はノートPCで今日写した写真の整理をしていた

静かになった

ただ・・・気になるのは

「誰かがついてきてるような気がする」という楓の言葉だった

全然そういう気配がしなかった

足音もなかったように思える

でもあのうなり声は全員が聞こえた

一体何だったのだろうか?

いまのところ静かだ

虫の音がうるさいだけ

時間はもうそろそろ午前1時

S君が横に座った

「今日は疲れた・・・山登りはちとつらい

今日も結構写したよ

整理が追い付かない

ここから見る庭は本当に幻想的

うまくライトの位置が決まってる

ホッとする

家だと今の時間でも車や人の話し声がして寝れないときがある

でもここは本当に静寂

風も心地よい」とS君はほっとした顔で私に話しかけてきた

「ウォーウォーー」

「え!!!?今聞こえた」

「俺も聞こえた」

またあのうなり声だ

どこから聞こえてきたんだ?

私は思わず後ろを振り返った

誰もいない・・・だよね・・・

子供たちは良く寝ている

大おばさまもいびきを立てて寝ている

住職の言うにはこの仏間は結界をしてあるとのこと

多少のことでは結界が破れることはないと話していた

ここは普段お客さんが寝る場所ではない

仏間は食事と題目だけしか使っていないとのこと

だが、私たち一家だけは特別に結界の中で寝てほしいと住職からのお願いで

子供たちを仏間で寝かせている

仏間に異常はない

S君に隣の部屋とおふくろの部屋をのぞいてほしいと頼んだ

S君は快く返事をしてくれた

S君が戻ってきた

異常はないとのこと

みんな、よく寝ていると話していた

トンチンカン親父も大人しく寝ている

ジィーと神社へ行く入り口あたりを見つめた

なにもない

S君も山やお墓辺りを見ていた

やはり何も異常はない

人影すらない

人が通るならお寺の横のこの庭園の横を通らなくてはいけない

S君がオハルちゃん一家の墓の様子を見に行くと言い出した

遠くからでは何も異常はないように見える

私は仏間から離れることは危険だと感じた

「S!この仏間から出てはダメ、もう少し様子を見よう」とS君に言った

「しかし・・・ここからだと向こう側の様子が全然見えない、困ったな

・・・仕方ない・・・ここから様子を見よう」

しばらくジーとあちこちを見回したが異常はなかった

「アニキたち、まだ起きてるの?」とF子が仏間に来た

「え!おいおい一人で行動しちゃダメだよ」

「あ!そうだった・・・ごめん・・・すっかり忘れてた」

「まぁ・・・隣だからいいけど・・そのために隣の部屋にしたけどね

まぁ、仏間に来たのだからいいか・・・F子、今度から部屋を出るときはS子か

S子ママと一緒にな」

このお寺は長い廊下を主として各部屋につながってる

使われていない部屋もある

普段は予約をしたお客が使うんだそうだ

本当は1日1組のお客さんでいこうとしたのだけれど予約が多すぎて

1日2組にしたそうだ

一組といっても家族連れが多いそうだ

「どうしたんだよ?起きちゃって、何か気になることでもあるのか?」とF子に質問をした

「あのね・・・寝るときに・・・妙な胸騒ぎがした・・このお寺の周囲になにか

いるんじゃないのかな・・・そういう気がする・・・」

「え!・・・F子が言うのなら間違いないな・・・いまさっきも例のうめき声みたいな

ものがきこえたけど・・・」

「うん・・・・私も聞いた・・・だから余計に気になって・・・」

「こりゃ・・・住職を呼んだ方がいいな・・・」

「俺が呼んでくるから、S、仏間にいてくれ」

「おう!まかせておけ!一人だから気を付けろよ」

「うん・・・行ってくるわ」

と私は一人で住職のいる奥の部屋へ長い廊下を歩いて行った

長い廊下だから所所暗い部分がある

途中で中庭が見える場所があった

一応日本庭園なのだが少し寂しい場所だ

ここもライトアップされて余計に妖しい雰囲気を醸し出している

お墓のところの庭園よりは規模が小さいがちゃんと手入れがしてある

そこを通り抜けてまだ少し奥に住職の寝室がある

トイレはそこの対面にある

ミニ肝試しが出来るかも・・・

私は住職の寝室の前で

「起きていますか?」と小さい声で話しかけてみた

「はい・・・起きてますよ、どうも寺の周囲に得体のしれないものが徘徊してるような気がしています、それも数体ほど・・・全員起こして仏間へ集まりましょう・・・」と

住職と住職の奥さんが部屋から出てきた

「いまさっき例のうめき声が聞こえたんです、F子も聞いています。

今夜何か起きそうですね」と住職に話した

「やはり・・・とりあえず全員起こしながら仏間へ集まりましょう」と住職は

各部屋を順にまわって全員起こし仏間へ誘導した

「お!・・・ぞろぞろと・・・こりゃやばいな」とS君はそう言った

「おっちーー、F子ちゃんここにいたんだ、起きたらF子ちゃんがいないから心配したんだぞーー」

「ごめんね・・・先にここへ来ちゃったよ」とS子に頭を下げていた

「とりあえず、皆さんは今夜、夜が明けるまでここにいてもらいます

ここは結界を張ってありますので早々に得体のものは近寄れません

庭先に出ても構いませんがそれ以外の所へは絶対に行かないでください

もしトイレなど用事がありこの仏間から出るときは必ず2人以上で行動してください

絶対に一人で行動をしないでください

得体の正体が全然わかりません

ただ、力が強いという感じはします」と

住職は全員に対して説明と注意を促した

「おえ!なんでぇーーそんなことかぁ・・・ちっ!・・・せっかく寝てたのにな!」と

トンチンカン親父が文句を垂れた

この親父こそ得体のしれないものの正体かもしれない

「子供たちは起こさないように・・・大おばさまも同様に、とりあえずは

ここで寝たい人は寝てても構いません

庭の渡り廊下の端っこでもいいですよ」と住職はみんなに声をかけた

さっそくトンチンカン親父は渡り廊下の端っこで大の字になって寝た

やはり・・・こやつが一番得体のしれないものだ、と息子ながらそう思った

こんな緊張感のある雰囲気でよく寝れるな、とさすが元不良だ、いや現役中年不良親父だ

子供たちは起きずに寝ててくれてる、ありがたい

F子とS子は仏間の端っこで座って小さな声でしゃべってる

S子ママとおふくろと住職の奥さんも同様に座りながら小声でしゃべってた

S君はカメラを手に持ち何か起きてもいいように準備していた

緊張感がみなぎる

住職は小さな声で題目を唱えていた

私はとりあえずは庭先を見ていた

住職の話では庭に出てもOKということだ

結界が庭までとどいてるとはおもえないのだが・・・

まぁ・・・仏間から丸見えだからかな

相変わらず親父は大の字のまま寝ている

まぁ・・・寝ててくれ・・・

1時間が過ぎた

段々と緊張感が薄らいできた

おふくろたちが寝始めた

そのまま寝ててほしい

「ウォーーウォーー」とけたたましい獣の声のようだ

「ついに・・・来ましたかな・・・皆さんは

絶対に何か起きようとも仏間から絶対に出ないように

子供たちはそのまま寝かせておいてくだされ

私はとにかくお経をあげますわい」と住職は仏の前でお経をあげた

おやじとおふくろたちはそのまま寝ていた

子供たちもよく寝ている

パチッパチとラップ音が聞こえてきた

「きゃ!」とF子が叫んだ

「おっちーーー!!怖いんだぞーー」とS子までもが怖がり始めた

2人はお互いに身を寄せながら周りを見回していた

パチンと仏間の明かりが消えた

私は急いで懐中電灯を点けた

S君はスマホのライトをつけた

F子とS子も同様にスマホのライトをつけた

だいぶ明るくなった

空はなんかしれないが黒い雲が覆い始めている

あ!おやじは?とおもいながら親父の寝ているところにライトを当てた

やはり・・・・只ものではない・・・寝てる・・・

子供たちとおふくろたちも寝ていた

ホッとした

相変わらず住職はお経をあげていた

ろうそくの炎がユラユラと動いていた

私は何気なく山の上の神社を見た

え!電灯が消えていた

これは・・・・相当な化け物がいるような気がした

神社あたりから何か黒いものがサッーーと降りてきたような気がした

目の錯覚なのかな・・・

S君も見たようで

「なんだぁ・・・ありゃ・・・なんか黒いものがこっちへ来るぞ」と叫んだ

その黒い物体が2~3個浮いていた

不気味な黒いもの・・・

黒いというものではない・・・何かしら意志を持った黒いもの

住職がいきなり立ちその黒い物体に塩の塊を投げつけた

すると当たったのか・・・その黒い物体は後ずさりした

住職は連続的にお経をあげながら塩の塊を投げつけていた

効果は一応あるみたいだが・・・

ただ・・・結界があるのでこれ以上入ってこられないみたいだ

でも・・・なんとなくこの結界も時間の問題のような気がしてきた

なかなかこの黒い物体は消えるところかますます怪しい動きになってきている

「住職・・・なんかやばいような気がするけれど・・・」と私は住職に話した

「です・・・わしゃもこんな強いものは初めてですわい

こりゃ・・・あかんですな・・・でもまぁ・・・結界の方もなんとかお日様が出るまで

持ちこたえてくれればいいんですわい・・・ありゃ・・・死霊ですわい

すごい怨念を感じますわい・・・おまえさまかたがうらやましくて出てきたようですわい

」と住職は少し弱音を吐いた

F子が「お狐様・・・助けてください」と小さな声で呟いていたのを聞いた

すっかり忘れていた・・・

何度かお狐様が私たちを守ってくれてた

私とS君も「お狐様、助けてください」と念じた

やはり・・・・何も起きないのかな・・・

すると・・・末娘がむくっと起きた

「大きなお兄ちゃん、大きなお姉ちゃん、耐えて、私たち4人兄妹が守るから」と

葵がしゃべりだした

「お狐様もお力添えすると言っています、とにかく耐えてください

この悪霊たちは私たち一族に対して色々な悪さをしてきたものです

ここですべての悪縁を断ち切るチャンスが来ました

お兄ちゃんたちはとにかく耐えてくれればいいです

住職様、大きな声でお経をあげてください

お兄ちゃんたちは子供たちを守ってください

あ!そこに寝ている・・・不良親父にも手伝ってもらいましょう

」とオハルちゃんは不良親父を起こした

「うわぁ!!なんだこいつらは・・・F、おまえいい加減にしろよ、しばくぞこらぁ」と

全然周囲の状況が理解していない

「おじちゃん・・・オハルからのおねがい・・・あの黒い物体と喧嘩してください

もし勝てれば今までの悪事をお釈迦様にお願いしてすべてなかったことにしてもらうように頼みますから」と親父に頼んでいた

なんちゅう・・・頼みだよ・・・大丈夫かな・・・・

「おっし!いっちょ、やったるわい」と親父ノリノリ

はぁ・・・おいおい!!まさか・・・

うわぁーーまじで親父黒い物体に向かって走り出した

うわぁ・・・パンチやキックなどいろいろな技を繰り出して悪霊と戦ってる

悪霊の方もなんか・・・まじで相手にしてるし・・・

これはきっと夢だな・・・こんなマンガみたいな出来事が実際に起きてるわけがない

わたしはおもっきしほおをつねった

イテェーーー

夢じゃない

うわぁ・・・・おやじ飲み込まれたぞ・・・・

まるでゲゲゲの鬼太郎だ

「パパーーー」とF子が叫んだ

「これを待ってました・・・あれは外からでは絶対に無理です

おやじさんが中で大暴れしててくれればこちらも助かります

あのおやじさんをダシにしてこっちから光の波長を悪霊の中に注ぐことが出来ます

お狐様がどんどん光の波長を送っています」

まじかよ・・・ダシにするって・・・しかし・・・なんとなく黒い物体苦しそうだ

というか・・・異物を飲み込んで咳き込んでる感じ・・・

悪霊には悪霊かな・・・

どんどん悪霊が苦しんでるように見える

3体とも同じように苦しそう

住職は大きな声でお経をあげていた

2時間ほどして黒い物体がだいぶ薄くなってきた

「もう少しで悪霊も成仏できそうです

あともうすこし・・・」

しばらくすると黒い物体はどんどん透明となってついには消えた

成仏したのかな

「成仏しました

お兄ちゃんたち、これで一族の悪縁は完全に切れました

お兄ちゃんの子供たちは善を行えば必ず恩を仏さまから授かりましょう

さて・・・このおやじさま・・・うううう・・・これは・・・

このおやじさま・・・生まれた時からの悪ですね

お兄ちゃんには悪いのですが・・・お釈迦様も見放しています

それと地獄の閻魔様も当分はいらないとのこと

お狐様も・・・相手にはしたくないので・・・このまま帰ります、と言っています

おにいちゃんたち・・・に少しでも恩をかえせれたかな・・・

オハル達・・・いつまでも見守っているからね

善を行ってくださいね」

ええええ!!!なんちゅう軽い口調だ

本当にオハルちゃんなのか

たしかに小さい時のオハルちゃんの声に似てるけど・・・

大人のオハルちゃんってこんなに軽いのかな

S子より軽い

S君も唖然とした顔になっていた

おやじはどこだよ

生まれつきの悪って・・・本当にいたんだ

お釈迦様からも見放されている

地獄の閻魔様も「いらない」って・・・

どにいるんだ?

F子も親父を探していた

親父が消えた・・・

外のまわりが明るくなってきた

山の方を見ると人影か・・・・

下山してくる人影が見えた・・・まさか・・・・

なんかブツブツ文句を言いながら下りてきてる

うわぁ・・・やはり親父だ・・・

「体がいてぇーー、なんでだ・・・なにが・・・全て無くすだよ・・・

うそばっかつきやがってよ、しばくぞ」

こりゃ・・・・あかんわ

確かにお釈迦様も見放すわけだ

「パパだぁ・・・よかった」とF子は安堵していた

「生まれた時から悪です」とオハルちゃんが言ったのも納得だ

とりあえず・・・助かったのかな・・・・

一応は親父のおかげだな

「親父、ありがとう、助かったよ」と親父に言うと

「おうよ!あんなのよわっちい、ひとひねりよ」と自慢そうに返事をしてきた

これこそが悪霊だろう

とても善を行いそうにない

なんかさらにパワーアップしてそうだ

住職も唖然としていたが

「親父様、一応お祓いをしますからわしゃの横に座っててください」と

親父を横に座らせお経を唱えた

完全に夜が明けた

子供たちが起きてきた

「おじいちゃんすごかったよな、悪い奴をキックしたりパンチしたりしてたよな、仁」

「まじですごかった・・・おじいちゃんはヒーローだよな」

と匠と仁は話していた

え?夢の中・・・

「ジイッチャ・・・葵たちをマモッテクレたよ・・・」と葵までも話してきた

「おうよ・・・俺はヒーローだぜ」と親父は自慢気になっていた

おふくろたちは何の話なのか分かっていないようだった

「あんた・・・また何かしてかしたのかい?」とおふくろがおやじに言ってきた

「いや・・・悪霊を俺が退散させたんだけどな・・・」と小声で返事をした

「なにーー!!悪霊だとあんたが一番の悪霊だろ、恐らくお釈迦様も閻魔様も

あんたをいらないといってきたんじゃないの?

あんたは生まれつきの悪なんだからね」と親父に向かって吠えた

さすが・・・おふくろなにもかもお見通し・・・

親父・・・撃沈した

「ジッチャ・・・かわいそう・・・」と葵から同情されていた

なんだかんだで朝が来た

一応お祓いも済み帰る支度をし始めた

とにかく子供たちが寝てたおかげで大事には至らなかった

今までのようなゾッとするようなものばかりを体験してきた私たちだが

深夜の件はなんか軽いコミックマンガを読んでるような展開で

本当に悪縁が切れたかどうか実に怪しい

本当にオハルちゃん達だったのか・・・・

マジで軽すぎるのだ

住職もお祓いは済んだが・・・なにか変と言っていた

やはり・・・という・・・か・・・家に帰ったら案の定・・・

この話はまた今度・・・・

Concrete
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@ウエイ

コメントありがとうございます

他の方の怖い話は背筋がゾクゾクとして怖いものが多いですよね

夜中にはとても読めません

それで夜中でも気軽に読めるように
怖い話とホンワカな話とまじめな話をうまくミックスしながら
体験談として書いています(少し演出も入っていますけれど・・・)

今続きを書いている最中です
まぁ・・・気長にお待ちくださいね

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面白いw続きはやく読みたいです!

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