中編5
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第2夜・山林の駅

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フフフフ......お久しぶりです皆様。

この世にて常識では考えられぬ怪異を語る語り部、〝カタリヤ〟で御座います。

今宵お話するは、とある男の身に起きた身の毛もよだつ怪異話で御座います。

それでは皆様.........今宵も存分にお楽しみ下さいませ。

始まりはそうですね.........こうしましょうか?

その男は近所では有名な心霊系の動画サイトの投稿者でした......。

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男は世に言う〝苦学生〟であり、昼間は講義に出ては夜に様々なバイトに勤しむ日々を過ごしておりました。

そんな男の楽しみは某動画サイトにて、自身が廃墟や心霊スポットを回る動画を投稿する事でした。

しかし男には残念ながら霊感は微塵にもありません。

ですが男にとってそれは〝スリル〟の一つであり、そこに霊感の有無は関係ありませんでした。

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そんなある日、男は自身が通っている大学でこんな話を耳にします。

「実はこの近くの山林に今は使われてない駅があるんだって。」

曰くその山林の駅は昔に建てられたもので、今では使われていない駅だそうです。

しかも理由が線路の撤廃によるものではなく、そこで悲惨な事件が起こった為であるらしい。

その話を聞いた男にいつもの好奇心がフツフツと湧き上がってまいりました。

そして男は今度の日曜にその場所へと訪れる事に決めたのです。

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そして日曜.........男は予定通りその山林の駅があると噂される森の中へと入りました。

「うわぁ......まるで樹海みてぇだな。」

その山林を見た男は過去に訪れた樹海と照らし合わせながらそう呟く。

それでもどんどん奥へと進んで行くと、何故か普通は深くなる森が段々とその木の数を減らしていきます。

「もしかして反対側に抜けた......とか?」

カメラに向かってそう話す男.........しかしその予想は当然裏切られ、歩けども歩けども森を抜ける様子はありません。

しかしめげずに突き進んで行くと、男は遂に目的の場所へと到着しました。

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そこは噂通りの山林の中に建つ廃駅でした。

線路は既に無く、それでいてなかなかの雰囲気を放ってるその駅を見た男は大興奮......急いでその駅を撮りながら実況を始めます。

「僕は今、噂の山林の駅へと来ていま〜す。」

男は駅の特徴や状態をこと細かく説明しながら駅の周囲をグルグルと回る。

「意外と綺麗な所ですね〜。大きさは......あまり大きくないんで、元は無人駅だったんですかね?改札口も丸太で作られていて、なんかポストみたいなのあるんでここに切符入れるんですかね?あれ?これって定期とか使えんのかな?んなわけねぇかw」

少し冗談を交えながらの実況が視聴者にウケられるのを思い浮かべながら探索を続ける男。

しかし駅周辺では目ぼしいところはなくなった為、今度は中へと入ることにした。

「中はやっぱり荒れてるなぁ。コンクリだから床はともかく、天井は所々腐って──────」

そう言いながらカメラを天井へと向けた時、男は見てしまった......。

腐って抜けた天井の穴からこちらを見つめる男の顔を......。

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shake

「──────っ!?」

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一瞬の事で思わずカメラを背ける男......しかし今までハッキリと映った事が無いので、男は好機と思いもう一度そちらにカメラを向ける。

しかしそこには既に何もいなかった。

「な......何だったんだ......?」

男は見てはいけないものを見てしまったことに震え上がるも、それでもなお撮影を続けた。

そしてもう一度ホームへと出ると、不意に自身の携帯が鳴る。

出るとそれは彼の友人であった。

「はい、もしもし?」

《〝もしもし〟じゃねーよ。お前、もう何日も講義出てきてねーけど何してんの?あとバイト先の店長がめっちゃキレてたぞ〜。》

「はぁ?」

男は友人が何を言っているのか分からない。

自分は確かに日曜の朝に出てきたはずだ......しかも森の中に入ってからもそんなに時間は経っていない。

なのに友人の口振りでは、自分があたかももう数日間もこの森にいるように聞こえてくる。

「いやいやいや。今日って日曜だろ?」

《は?今日は木曜だぞ!というかお前、今何処にいんの?お前のご両親も探してるし、警察にも失踪届出したんだぞ。》

「いや......大学の近くの山林にある◯◯駅って所にいんだけど......。」

《......え?》

「いや......だから昨日女子達が話してた駅だよ。お前も隣で聞いてただろ?」

そう訊ねた男だったが、次の瞬間に友人から話されたのは衝撃の事実であった。

《それなんだけどよ......あれ、嘘らしいぜ?》

「......は?」

《いやいや〝は?〟じゃなくて。あの後に興味が出て聞いたんだよ。そしたらその女子の作り話だってよ。まるで本当にあるかのように話すから俺も騙されっちまったぜ。.........あれ?でもお前は今そこにいるんだよな?.........てことは本当の事?いや、でもネットで調べても出てこなかったしな。というかお前......。》

男はそれ以上聞きたくはなかった......。

そして友人にもそれ以上言っては欲しくなかった。

しかし無情にも電話口から友人のこんな一言が......。

《大学の近くに山林なんてあったか?》

その直後に切れる電話......男は急いで帰ろうとしました。

しかし何故か体が動きません。

そして背後から何者かが忍び寄ってくる気配が......。

「ウォォォ......ウォォォ......。」

(あれは風の音だあれは風の音だあれは風の音だ!)

背後から聞こえる呻き声を風の音だと自身に言い聞かせるも、それでも動かぬ体に泣きそうにりました。

そして......。

「ヨウゴゾ〝キサラギ駅〟ヘェェェェ!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

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翌朝、男は動画サイトではなくテレビに映る事となりました。

─昨夜未明、六日前から行方不明となっていた男性が、通っていた大学付近の裏路地にて変死体となって発見されました。遺体の状態から男性は失踪したその日に亡くなっていたと判明し、警察は事件性があるとして現在も捜査を進めております。─

男が見たものは一体何だったのか。

本当にかの有名な〝きさらぎ駅〟だったのか。

残念ながらそれを知る者はいない......。

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いかがでしたでしょうか?今宵のお話は......。

それではまた次回にお会いしましょう、フフフフ......。

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