短編1
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最後の晩酌

今年の5月

高校卒業と大学入学祝いに父と2人きりで初めて酒を飲んだ

父と対座して酒を酌み交わすってのが

なんとも居心地が微妙なもので・・・。

かといって 下戸なのですぐに酔ってしまい、

父はカラカラと、これじゃあ酒でまだお前に負けることはないなと

笑っていた。

しかしその3日後に緊急入院。

末期の食道癌で家に帰ることなく闘病7ヶ月でこの6月11日に逝った。

父は最期に俺にこういった。

「またお前と酒飲みたかったなぁ・・・。」

俺の前では一度も泣いたことのない父が、この時少し泣いているように見えた。

あの日が最初で最後の父と息子の晩酌だった・・・。

父の遺品を整理していると、ワインが納屋からまだいくつか出てきた。

几帳面な父らしく綺麗に生理整頓されていた。

僕は銘柄の良し悪しは良く分からないが、ラベルを見てみると、

何か文字がメモしてあった。

「××(俺の名)大学卒業用」

「××就職時用」

「××結婚時用」

瓶を抱いて俺はずっと泣いてしまった・・・。

ワインをあける機会を奪った病気を恨んだ。

もっと酒を教えてもらえばよかった。もっと色々話しすればよかった。

俺の前に幽霊になって

現れてくれたなら、また一緒に酒を飲みたいと思う。

怖い話投稿:ホラーテラー 達人さん  

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