息子が妻に虐待されている。
というのは真下の部屋の田中さんに聞いたことなのだが。
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私は仕事の関係で一年の半分を海外で過ごす。
田中さんいわく、以前から決まって私のいない期間に、上(つまり私の部屋)から妻の罵声と子供の泣き声が毎日のように聞こえるらしい。
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思い当たる節があった。
5歳になる息子は怪我が絶えなかった。
私が帰るといつも体に痣をつくっていた。
なぜ気づけなかったのか。
鈍感な自分が腹立たしい。
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田中さんからの連絡を受け、事情を説明し予定より1日早く家に帰ってきた。
一気に階段を駆け上がる。
鍵を開ける。
中から物音は聞こえない。
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扉を開けると、息子が玄関に座っていた。
「パパ、おかえり!」
笑顔で抱きついてくる息子の顔には大きな痣があった。
気づいてやれなかったことに悔しさがこみ上げる。
涙で前が見えなくなった。
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「ごめんな…今まで気づいてやれなくて…ごめんな…」
息子はきょとんとして私を見る。
「…ママはどこだ?」
決着をつけるため、息子に問う。
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「ママはキッチンだよ。
それよりもきいてよ、パパ。
ぼく、きのうゆめをみたんだ。」
「うん?どんな夢をみたんだ?」
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「あのね、ママがぼくをこわいかおでみるんだ。
それから、おおきなあしでぼくをふみつけるの。
すごくいたくて、ぼくはがまんできなくて、ママをほうちょうでさすんだ。なんかいもさすんだ。
ぼくはママをころしちゃうんだ。」
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言葉が出なかった。
虐待とはこんなにも子供の心を毒してしまうのか。
「怖かったな。もう大丈夫なのか?」
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息子は不思議そうな顔をして答えた。
「だいじょうぶだよ!だって、」
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「 もう叶ったから。」
作者退会会員
前から見てたのに会員になってなかったのでそろそろ…と思って登録しちゃいました。
せっかく会員になるならひとつくらいは自分も投稿しようと、ふわっと頭に浮かんだのを文字に起こしてみました。
でもやっぱうまくいかんなあー。
あ…今日クリスマスじゃん…。