短編2
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バカ

先月、実家の近所のヤツが癌で亡くなった。21歳だった。

最近では交流が途絶えて近況を伝え聞く程度だったが、ついこないだまで元気に働いていると聞いていた。

発見されてからあっという間に進行してしまったらしい。

そいつは、とにかくクソガキだった。

泣かされたりいじめられた女の子はたくさんいたし、思いもよらない無謀な遊びやイタズラをしょっちゅうやってのけてた。

つるむ連中も同じぐらいクソガキで、決して特別扱いしなかった。

いつも一緒に遊んで当たり前のようにケンカしあっていた。

ソイツとは殴りあっただの物壊されただの、苦笑ものの思い出ばかりだが、未だに忘れられないのは当時うちで飼っていた猫が帰ってこなかったときのこと。

家の裏手の道路で車に轢かれそうになっていたところを助け、真冬の早朝にうちまで走って連れて来てくれたのはソイツだった。

「猫、少し怪我してるけど、こんなもんなめりゃ直るよ。」

そう一言いうとやつは帰っていった。

その後姿は、ところどころすりむいていて血がにじんでいた。

玄関に入ってきたとき、一瞬でも「朝飯が済むか済まないかの時間なのに、もう遊ぶ気で来たのか」と考えてしまったことを、今でも申し訳ないと思っている。

オマエには何度も「バカ」って言ったけど、何年かぶりで言うよ。

この、バカ。

こんなに早く逝きやがって。

                       

怖い話投稿:ホラーテラー 達人さん  

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