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中編5
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オパール

◼︎◼︎◼︎

ばあさんや

オレが不甲斐ないばかりに、沢山の苦労させちまったなぁ…

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◯◯◯

なにを言ってるんですか、おじいさん

私は誰よりも幸せでしたよ

色々有りましたけど、おじいさんが身を粉にして一生懸命働き、私や子供達を守ってくれていた事、私は忘れたりしませんよ

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◼︎◼︎◼︎

それはばあさんも同じじゃねぇか…

オレの所為で要らぬ苦労をお前らにかけちまったんだから…

ばあさんや…

すまないな…

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◯◯◯

やめてくださいな、おじいさん

私はおじいさんと一緒にいれて、本当に幸せでしたよ

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◼︎◼︎◼︎

ばあさん…

ちょいと手を出してみろ

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◯◯◯

!!!

おじいさん!!

これ、どうしたんです!?

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◼︎◼︎◼︎

へへへ

結婚してから指輪なんてもん、ばあさんに買ってやった事、なかっただろ?

この前新しく出来た、リサイクルショップってえ店の前を通ったら、ガラス越しに飾られてたこれが見えたんだ

綺麗だろ?オパールとかって石らしいんだ

店員がなんだか言ってやがったな…

確か、10月生まれの人にプレゼントすると喜ぶとかなんとか…

ばあさん、10月生まれじゃねーか

だから…

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◯◯◯

おじいさん…

ええ…

ええ…

とっても綺麗な石ですもの…

私が何月に生まれてたって、誰がもらったって喜びますよ

本当に綺麗な色…

まるで、吸い込まれそうよ…

おじいさん

ありがとう…

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◼︎◼︎◼︎

おいおい

こんなもんで一々泣くんじゃねぇよ

柄にもねぇ事しちまったから、腹減っちまったな

ばあさん!何か作ってくれ

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◯◯◯

はいはい

おじいさん

ちょっと待ってて下さいよ

今すぐ支度しますから

ーーー

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◯◯◯

おじいさん

昨夜の残りの大根の煮物と塩鮭とお味噌汁ですけど、出来ましたよ?

そうそう。

胡瓜の古漬けもありますから、生姜のみじん切りと和えてお醤油垂らした物も召し上がります?

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◼︎◼︎◼︎

おっと!

いけねぇよ

オレが運ぶから、ばあさんはそこに座っててくれ

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◯◯◯

おじいさん、有難う

ごめんなさいね

腰がこんなだから、杖ついてじゃお膳まで運べなくて…

おじいさんも膝が痛いのに…

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◼︎◼︎◼︎

どーってことねーよ

年取ればその分、身体の内も外も古くなって来ちまうんだから、あっちこっちが傷んだりしちまうのは仕方ねーって事だ

ばぁさん?

指輪外さねーのか?

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○○○

ええ…

もう少し眺めていたいんですよ

おじいさんが下さった指輪なんですもの

私みたいな皺々で節も太くなった指でも、こんな綺麗な指輪をはめると、どこかの奥様になったみたいに見えるかしら?

うふふ

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◼︎◼︎◼︎

ばぁさんは、俺にとっては…

誰よりも大事な奥様だよ

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○○○

え?

うふふ

おじいさんったら

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◼︎◼︎◼︎

ばぁさんの味噌汁は旨えなぁ

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○○○

うふふ

未だお代わりありますよ?

おじいさんが好きだって言うから、塩をたっぷり使った鮭も。

今は減塩とかで、焼くと白く潮を吹くような鮭は、なかなか売ってないんですよ。

だからこの鮭も、普通の甘塩鮭を濃い塩水に漬け込んでから焼いた物なんですよ?

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◼︎◼︎◼︎

そうだったのか!

ばぁさん…そんな手間かけてくれてたんだな…

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○○○

手間って手間じゃないですから

おじいさんのお口に合うお料理を作るのは、妻である私の役目ですからね

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◼︎◼︎◼︎

ばぁさん…

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〜〜〜〜〜

あの人ですか?

ええ。ええ。そりゃ良い人でしたよ。

明日食べる米さえない時でも、困った人を見るとなけなしの米も銭もあげてしまう。

そんな良い人でしたよ。

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だからあの人を悪く言う人なんて居ないでしょうね。

だって、本当に良い人なんですもの。

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他人にとっては…

ですが…。

……

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私も子供も苦労ばかりの人生でした。

子供の給食費だって、困った人を見るとあげてしまうんですから。

お金が天から降ってくるならいざ知らず…

爪に火を灯すような慎ましやかに暮らしていただけなのに…

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あの人は見ず知らずの他人にだって、何でも分け与えてしまうんですから。

おまけに、あの人の母親の介護も。

何人も兄弟がいるのに、あの人は一手に引き受けて。

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施設に入れようと決めた時も、義母さんが嫌だって言ってるからって…

入所の手続きも終わった頃に、突然断って来てしまいましたしね。

義母さんは喜んでいましたとも。

老人ホームに行かずに済んだんですからね。

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でも、私にとっての地獄は義母さんが死ぬまで続きましたからね。

「お前には苦労ばかりかけちまって。すまねぇな。」

何度同じ台詞を聞いた事やら。

口で言うだけなら簡単ですものね。

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義母さんの柔らかい食事を作るのも食べさせるのも私。

オムツを取り替えるの、粗相をした時の後始末も私。

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腰痛を抱えながらの義母さんのお風呂介助も…どれだけ大変だったかも…。

あの人は知らないんですもの。

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息子の事に関してもそう。

今で言うパワハラ上司との関係や、泊まり込みで仕事をしても残業代も出ない会社。

息子は息子なりに頑張っていましたよ。

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「いつか、母さんに楽をさせてやりたい」

…あの子はそう言って、一生懸命にやっていましたよ…。

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けれど、どんな志を持っていたって、そんな理不尽な生活の中で、あの子の心も身体も本人すら気付かないうちに病に蝕まれていたんですよ…。

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なのにあの人ときたら…

「そんなものは怠け者の言い訳だ!」だの

「いっぱしの仕事も出来ない様じゃ男じゃねー」だの

「病院なんて当てにならねー!いつまでも寝てるな!仕事に行け!働け!」

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そうあの子を追い込みましたよね。

あの子には逃げ場もなくなってしまって…。

あの人に追い出されたその足であの子は…

知らない山に行って…

自らの命を絶ってしまった…。

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何度、あの人と離婚をしようかと考えた事か…数え切れない程です。

ええ、ええ。殺してしまおうかとも考えましたとも。

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恨んでましたとも…。

一時も早く死んでくれないかと。

私よりも早くに死んで欲しいと。

残り少ない私の人生でも、私にあの人の居ない時間を下さいと。

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何十年祈り続けて来たのでしょうね。

それが…

やっと…

あの人が死んだ。

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病院嫌いのあの人でしたから、あれ程健康診断を勧めたのに行かないで。

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塩っ辛い物が大好きでしたから。

うんとうんと塩気の多い料理を作り続けましたよ。

少しずつ塩分を増やして。

あの人の口に合う様にね。

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だからきっとあの人は満足なんじゃないでしょうかね?

好きな物を食べて死んだんですから。

私も…

やっとあの人から解放されました。

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これで、いつ、息子の元へ行っても良いんですものね。

復讐?

そんなものではありませんよ。

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あの人の好きな様に生きさせて、あの人が満足行く様にさせてあげただけ。

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でも。

たった一つ。

あの人が私に残した物。

この、オパールの指輪は綺麗だわ…。

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この話は最後まで読めなかった。なんか全体的にじいちゃんばぁちゃんの会話とか描写がわざとらしすぎて、オチでギャグとか身も蓋もない結末に持っていくネタSSみたいな匂いがした。

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「ああ、こういう人いるよね」と思いながら拝読いたしました。
「それを実際にやるのは貴方ではないでしょう? どうして勝手に決めるの?」というような人。
そしてそれに伴う面倒な事は自分以外の誰かに押し付けておきながら、自分ではそれに全く気付かず、いい気分に浸っている人。
その実際に面倒な事を押し付けられている誰かは、よほど心許せて口の固い信頼できる相手ででもない限り、うっかり愚痴も言えませんしね…その上、プラス息子の分もともなれば…

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