短編2
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山おじ

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和歌山県田辺市の大塔という地域には、“山おじ”の怪異譚が細々と伝わっている。

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山おじは猿が年を経たものだと言われ、人間の様な姿形をしている。

人を見付けると近づいてきて、大声で笑うらしい。その様子が不気味で恐ろしいと言う。

人に向かって吠えかけてくるが、その時は吠え返さないといけないと言われている。

性の悪いものなので、人々は山おじが出るところには決して近づかなかったそうだ。

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大塔に住むAさんは百歳近い老人だが、若い頃に山おじに遭った話を聞かせてくれた。

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Aさんがまだ二十歳にならないくらいの頃、夜狩のため山に入り、いつものように猟犬を離した。

普段は勇猛な筈の愛犬だったが、少し行くと戻って来て、怯えたようにAさんの側から離れなくなったと言う。

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不思議に思っていると、

バキバキバキバキ

草木を踏み分ける音が近づいてきて、

木立の間から、人間の形をした異様に背の高いものが現れた。

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朧月夜の中、その怪物の眼が真っ青に光っていたそうだ。

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そいつはAさんの前に来ると腰を下ろしてじっとしていた。

Aさんは剛胆な人だったので、恐怖に震えながらも銃口を向け、相手が何かして来たらぶっ放してやろうと考えていたらしい。

しかし怪物はしばらくAさんを眺めていたが、やがて立ち上がって背を向けると茂みの中に消えていったそうだ。

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Aさんは翌朝這々の体で村に戻り、近所の連中に昨晩の出来事を話した。その時に村の古老から「そりゃ山おじや」と教えられたらしい。

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後日、話を聞いた猟師仲間が「俺が山おじを捕まえたる」と、単身そこに向かった。

ところが翌朝になっても戻らない。

村の連中が現場に行ってみると、その男が泡を吹いて倒れていた。

一命は取り留めたが、それ以来頭が狂ったようになり、数年後に亡くなったそうだ。

山おじと吠え比べをして負けてしまったのだろう、と人々は噂したと言う。

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Aさんはその後も猟師を続けたが、山おじに遭った山には二度と入らなかったそうだ。

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