短編2
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赤い着物の少女

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地元の知り合いから聞いた話。

その人の父親(以下、Aさん)が若い頃、山で不思議な体験をしたことがあるという。

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昭和初期の話。

Aさんは用事で、中辺路町の道湯川という集落に向かって、山道を歩いていた。

しばらく行くと、道の先に若い女が立っているのに気が付いた。

青い着物を着た、色の抜けるように白い別嬪だったそうだ。

女はAさんに向かって意味ありげに微笑みかけてきたという。

当時Aさんは二十歳そこそこで独身。当然若い女が気にはなったが、急ぎの用事だったので、知らん顔でその前を通り過ぎた。

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そのまましばらく進むと、道の先にまた女が立っているのが見えた。

しかも、さっきの女と同じような青い着物を着ていたそうだ。

Aさんは不思議に思いながらも、女を横目にそのまま先を急いだ。

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またしばらく行くと、

今度は道の真ん中に、赤い着物の少女がいた。

通せんぼするように両手を広げて、

「あにやん、こっから先に行ったらあかんで」

とAさんに言ったそうだ。

「急ぎの用事があるさかい、通してくれらよ」とAさんが頼んでも、

「行かれん、行かれん」

少女は通せんぼをしたまま、Aさんを先へ進ませなかったそうだ。

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ただならぬ雰囲気にAさんは次第に恐ろしくなり、荷物も何も放り出して、家まで逃げ帰ったそうだ。

それから体調を崩し、しばらく寝込んでしまったという。

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後日、集落のオガミさん(祈祷師)に見てもらうと、

「青い着物の女は“山おじ”が化けたモンで、おまはんを害する気ィやった。

赤い女の子の方は山の神さんで、山おじから守ってくれはったんや」と言われたそうだ。

Aさんはそれからも山に入ることが度々あったが、不思議な体験をしたのはこれっきりだったという。

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「親父は真面目で信心深い人やったさかい、神さんも助けてくれてんろぅ。

ワシらは、あかなぁ(ダメだ)。助平やさか、すぐ騙されてまうで。

ほんま、親父は真面目やったさか……」

その人は私に色々と亡父の思い出話を聞かせてくれた。

最後はちょっと泣くようになっていたのが印象に残っている。

Concrete
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tutamoru monster 様
評価&コメントありがとうございます。
まさか同郷(住んだことのある方を勝手に認定しています)とは……!
私も今は実家を離れてますが、怪異話を知っている人が大勢おられました。
地元の話を投稿していきますので、また読んでもらえればうれしいです。

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和歌山の山間部は妖の話が多いですよね
きっと本当に居るんでしょうね♪
以前和歌山の方に居ました、妖の話が多くて楽しかったです。

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肩コリ酷太郎様
コメントありがとうございます。
大丈夫、男の九割は助平ですよ(自分含め)。
九割の男は最初でやられますよ。たぶん。

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こりゃ僕なら最初の段階で害されてたかもしれません
って誰が助平だ!
あ、俺か!

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車猫次郎さん
いつも、感想ありがとうございます。
色んな話を聞いていると、戦前まではこういった怪異が結構身近に残っていた気がします。
平成の今でも、妖怪の体験談とかが聞けたらなぁといつも思っています。
今後ともよろしくお願いします!

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昭和という、まだそこまで昔の話ではない、というところが親近感があって、怖いです。

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