【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

短編2
  • 表示切替
  • 使い方

赤い着物の少女

wallpaper:155

地元の知り合いから聞いた話。

その人の父親(以下、Aさん)が若い頃、山で不思議な体験をしたことがあるという。

nextpage

昭和初期の話。

Aさんは用事で、中辺路町の道湯川という集落に向かって、山道を歩いていた。

しばらく行くと、道の先に若い女が立っているのに気が付いた。

青い着物を着た、色の抜けるように白い別嬪だったそうだ。

女はAさんに向かって意味ありげに微笑みかけてきたという。

当時Aさんは二十歳そこそこで独身。当然若い女が気にはなったが、急ぎの用事だったので、知らん顔でその前を通り過ぎた。

nextpage

そのまましばらく進むと、道の先にまた女が立っているのが見えた。

しかも、さっきの女と同じような青い着物を着ていたそうだ。

Aさんは不思議に思いながらも、女を横目にそのまま先を急いだ。

nextpage

wallpaper:85

またしばらく行くと、

今度は道の真ん中に、赤い着物の少女がいた。

通せんぼするように両手を広げて、

「あにやん、こっから先に行ったらあかんで」

とAさんに言ったそうだ。

「急ぎの用事があるさかい、通してくれらよ」とAさんが頼んでも、

「行かれん、行かれん」

少女は通せんぼをしたまま、Aさんを先へ進ませなかったそうだ。

nextpage

ただならぬ雰囲気にAさんは次第に恐ろしくなり、荷物も何も放り出して、家まで逃げ帰ったそうだ。

それから体調を崩し、しばらく寝込んでしまったという。

nextpage

後日、集落のオガミさん(祈祷師)に見てもらうと、

「青い着物の女は“山おじ”が化けたモンで、おまはんを害する気ィやった。

赤い女の子の方は山の神さんで、山おじから守ってくれはったんや」と言われたそうだ。

Aさんはそれからも山に入ることが度々あったが、不思議な体験をしたのはこれっきりだったという。

nextpage

wallpaper:1

separator

「親父は真面目で信心深い人やったさかい、神さんも助けてくれてんろぅ。

ワシらは、あかなぁ(ダメだ)。助平やさか、すぐ騙されてまうで。

ほんま、親父は真面目やったさか……」

その人は私に色々と亡父の思い出話を聞かせてくれた。

最後はちょっと泣くようになっていたのが印象に残っている。

Concrete
コメント怖い
14
18
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

tutamoru monster 様
評価&コメントありがとうございます。
まさか同郷(住んだことのある方を勝手に認定しています)とは……!
私も今は実家を離れてますが、怪異話を知っている人が大勢おられました。
地元の話を投稿していきますので、また読んでもらえればうれしいです。

返信

和歌山の山間部は妖の話が多いですよね
きっと本当に居るんでしょうね♪
以前和歌山の方に居ました、妖の話が多くて楽しかったです。

返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信

肩コリ酷太郎様
コメントありがとうございます。
大丈夫、男の九割は助平ですよ(自分含め)。
九割の男は最初でやられますよ。たぶん。

返信
表示
ネタバレ注意
返信

こりゃ僕なら最初の段階で害されてたかもしれません
って誰が助平だ!
あ、俺か!

返信
表示
ネタバレ注意
返信

車猫次郎さん
いつも、感想ありがとうございます。
色んな話を聞いていると、戦前まではこういった怪異が結構身近に残っていた気がします。
平成の今でも、妖怪の体験談とかが聞けたらなぁといつも思っています。
今後ともよろしくお願いします!

返信
表示
ネタバレ注意
返信

昭和という、まだそこまで昔の話ではない、というところが親近感があって、怖いです。

返信
表示
ネタバレ注意
返信