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短編2
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割れる

創作ゼロの本当にあった話です。

***

私が小学生の頃に住んでいたのは、山を切り開いて開拓されたいわゆる新興住宅地でした。

子供達の間の噂話では「この山はその昔戦場だった」とか「白いヘビ神を祀っていた」とか色んな話があったものです。

今から思うと、本当に不思議な出来事ばかりでした。

笑ってしまうような事から、背筋がゾっとする事まで、色んな事がありました。

今日はその中から一つ、お話します。

子供というのは何故か夜中にトイレに行きたくなるものです。

我が家のトイレは家の一番奥にあります。

小さな窓があって、窓の向こうは裏手に住んでいるAさんの家がありました。

Aさんの家はあまり近所でも評判が良くなく、今で言う家庭崩壊に近い状態だったのではないかと記憶しています。

皆が寝静まった深夜、トイレで用を足していると聞こえるのはAさんの家から聞こえるケンカの音でした。

(またケンカしてる)

叫び声に似た泣き声に混じって物を投げる音。

床に落ち、お皿が割れる音。

静かな住宅街の夜、それは毎日続きました。

何年か経ち、私たち家族は父の商売の都合で引っ越す事になりました。

Aさんの家のケンカは恒例行事のようにまだ続いていましたが、私はもう気にしていませんでした。

今でも鮮明に覚えています。

引越しが終わってダンボールに囲まれながら、父と兄と母と、家族みんなで食事をしていた時の事です。

ふとした事から私は兄に向かってAさんの事を口にしました。

私「そういえばAさんはどうなるんだろうね 夜中にいっつもケンカしてたもんね」

兄「そうだなあ 毎晩だもんな 家の中とかもーグチャグチャだろうな」

私「あ やっぱおにぃ(兄)も聞こえてたんだ 毎晩すごかったよねー」

困った顔で父がこう言います。

『こら!亡くなった人達の事を悪く言うもんじゃない』

兄妹がテレビで【ラップ現象】というものの存在を知るのは、もう少し後の事でした。

私達が住んでいた家には今、別の家族が住んでいます。

近くを通るたび、私はその家族が心配でなりません。

そしてあの【音】は、今でもずっと私の頭で鳴り響くのです。

……パリーン………パリーン………

怖い話投稿:ホラーテラー こにさん  

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