久しぶり。高校から別々だったから中学以来だよね。
そういえばさ、小学生のよく遊んだ川のある空き地があったじゃん。あそこ、5年くらい前にでかいマンションが建ったよ。
大学どう?わかる。彼女なんてまだできないよね!
僕?僕は建築都市って学科。
女いないよ。
本当は地域創生学科ってとこが向いてたはずなんだけどね。
煙草好きで、でもちょっと流石に禁煙しないとやばくて。
最近街全体で喫煙とかあるじゃん?
そうゆうの勉強してついでに禁煙できたらいいなって思って。
僕はさー、親が別れたから祖父母の家で暮らしてたじゃん。
爺ちゃんが、昔の考え方の人だから未成年とか意識なくて、15くらいの時から煙草買い与えてたんだよね。
都市に関する学科ならあってると思って、建築都市入ったら土木とか水道とか。理系なんだよね。
失敗したけどなんとかやってるよ。
あ、で、今ね、
ゼミの課題で自分の街の水脈を調べてんの。
ちょっと面白くなってるんだよ。
ちょうど、昔遊んだ川のある空き地の話。
あの空き地、夕方になると音が、
大勢の男が唸って、大勢の女が叫ぶような音が
足の下から、左右から聞こえてた。
図書館であの辺の古い地図を調べると、あの、空き地の真ん中だけじゃなくて両脇にも川が流れてたんだよね。
昭和30年頃に暗渠になったらしいんだ。
暗渠って、川を地下に流して上からコンクリで蓋しちゃうやつ。
で、夕方、風が吹いてくるとその暗渠の地下空洞を風が吹き抜ける。その音だったんだ。あれ。
この川っていうのが、空き地を流れてた北西から南東に抜ける川と南西から北東に抜ける川の二本と、その間を流れる二本、合計四本の川が流れてて、四本がちょうど交差するんだよ。
その、交差する場所っていうのが、
あの空き地の隣に雑木林があるじゃん。
あの林の真ん中で交差するの。
水脈を調べるのに高低差も見るわけ。
国土地理院の地図にアナグリフって、高低差がわかる地図があるんだけど、これで見るとこの雑木林、すり鉢状の地形なんだよね。丘として盛り上がってるんだけど、その頂上だけ綺麗に抉ったような円で凹んでる。
その凹みで川は交差してる。
でもね、これほんとは交差してるんじゃなくてこの凹みから水が湧いて四方に流れてたんだよ。
あの雑木林もさー、
大学では自然と共存する都市計画、とかやってるから多摩丘陵とか行くわけ。
そうすると、普通に森の音がして驚くんだよね。
風が吹けばほんとうにザワザワなるし、鳥もいるから賑やかで。
その時、あの空き地の雑木林はなんの音もしなかった事を思い出した。
風が吹いても、あの暗渠の音だけで森の音はしなかったし野鳥が住んでる様子もなかった。
小学生って雑木林の中なんて、禁止されてても入っていくのに僕達はなぜか、入ろうとしなかった。なるべくあの雑木林を考えないようにして遊んでた。
よくよく考えると、あんな広大な土地、戦後の開発がほっといてたのもおかしいんだ。住宅地にもならずに本当に空き地でしか無かった。
5年ほど前に立ったマンション。
どの部屋も
シャワーの音がうるさいって言って
すぐ空き部屋になっちゃうんだって。
作者谷中
実際にある、家の近くの5年前に建ったマンションとその脇の保護林を舞台にしました。
普通の怪談ならこの後、二人で行ってみることになり、カンカンダラみたいな妖怪に追いかけられるのでしょうがそれは現実味がないのでやめました。
巨頭ォなんかも好きなのですが、あれは最後の本当に巨頭が出てきた場面があまりにもギャグっぽくて、笑ってしまったので…
やっぱり本当の怪談的自然の恐怖は存在してるだけで十分なのだと思います。
神社とかと絡めて、もっと話を膨らまそうかとも思ったのですが、やめました。
読んだみなさん各自が考えてみて欲しいです。
投稿二作目でした。
読んでいただきありがとうございました!!