おれが中2の夏の夜の話です。
その時おれはA県のド田舎の山奥に住んでました。山奥といっても、とりあえず民家はマバラですがありました。ただ近くの民家はどこも100メートル以上離れていて、回覧板を届けるのにも歩いていくにはちょっと遠いなというくらいの距離にありました。
おれの住んでるところは3軒が並んでる集合住宅みたいな長屋で、かなり古い建物でした。おれの家はその真ん中で、隣はおばあさんが一人暮らしで住んでいた。もう片方の隣は空き家でした。
家の間取りは3DKでした。4人家族で、父とは母一番手前の部屋。兄貴は一番奥の部屋、おれはその中間で、リビングと兄貴の部屋の間に挟まれてる仏壇のある部屋で寝ていました。
どの部屋も6畳だったのですが、昔の家なので1畳あたりが大きく、今なら8畳くらいの大きさはあったかと思います。
おれの寝ている部屋の間取りは、南側に窓と仏壇があり、西側は洋服ダンスがずらっと並び、東側は兄貴の部屋との出入り口、北側はリビングとの出入り口と小さなタンスが置いてありました。
おれはいつも西側のタンスに布団を引っ付ける形で、北枕で寝ていました。
そして、夏休みのある日のことです。
何かゴソゴソという物音で目が覚めました。目が覚めたと言っても物音に気づいただけで、目も閉じていました。
何の音だろうと聞き耳を立てていると、どうも北側の小さなタンスの方向から聞こえてくるようです。それに人がいるようで、なにかボソボソ言ってます。男にしては少し高く、女にしては少し低く、男とも女とも区別がつかないような声です。それに、何を言ってるのかも聞き取れません。ただ、ボソボソ何かをしゃべりながら、タンスあたりと思われるところをゴソゴソ物色してるようです。
「泥棒だ!」心の中で思いました。ですが、まだ寝ぼけていた頭では、その泥棒が凶器を持ってるんじゃないかと思い、気づかれると殺されるんじゃないかと、怖くて身動きできませんでした。
しばらく、と言っても数十秒くらいだったと思いますが、段々寝ぼけ頭も覚めて冷静になってきました。
「凶器を持ってるなら、このまま寝たふりしててもやられるんじゃないか?」「このまま泥棒を帰すのもシャクだな」などと思い始めました。
「よし!なんとかとっ捕まえてやろう!」「いきなり飛び起きて足蹴り食らわせて転ばし、羽交い絞めにすればなんとかなる!」と思い、泥棒をとっ捕まえるイメージを頭の中で作っていました。
そして、意を決して動こうとしたその時です。
体が動かないのです。目も開けれない。声も出ない。
いわゆる金縛り状態になっていました。
凶器を持ってるかもしれない泥棒が近くにいる。なのにおれは身動きひとつできない。
めちゃめちゃ怖くなって、がむしゃらに動こうといろんなところに力を入れました。
「ああああ~」自分の口から変な叫び声が出た瞬間、金縛りも解け、普通に動けるようになりました。
焦って電気をつけてタンスの方向を確認すると、誰もいない。何かが物色されたような形跡もなし。でも、たしかに物音がして人の声もしてたのに・・・。
怖くなったおれは布団を頭からかぶって寝てしまいました。
あくる朝、両親や兄貴に、おれの部屋に来なかったか聞きましたが、誰も夜中に起きてはいないということでした。
ちなみにその日は8月16日。ひょっとしておじいさんかおばあさんがお盆で帰ってきてて、忘れ物でも探してたのか?
今でも思い出すと少し怖いです。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話