短編2
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父の過去

僕は実家から遠く離れた某県の高校で、学生生活を送っていました。

当時、寮から学校へ通っていたのですが、寮の世話係の先生から聞いた話しです。

先生が中学生の時、学校での授業中担任の先生が教室に入って来て、『お父さんが迎えに来ているから早く帰る支度をして玄関に行くように』と言われたそうです。

突然の事で戸惑いながらも、机の中の教科書などを鞄に詰め込み、急いで玄関へと向かったらしいです。

玄関を出ると、父親と担任の先生が何やら話しをしている所でしたが、何故か違和感を感じたらしいんです。

それは、担任の先生にではなく父親に対する物だったらしく、見た目は間違いなく父親なのだが、でも別人の様な……。

担任の先生に呼ばれ、父親の車に乗り込み学校を出たそうですが、やっぱりいつもの父親とは何かが違うと感じ、話し掛ける事も出来ずにいると、父親の方から

「…もうダメだよな…。きっと…」

訳の分からぬ事を言い出す父親に、暫く呆気に取られていたらしいです。

学校を出て15分程経った頃、父親が急に震え出したので驚いて顔を見ると、目を見開き前方を凝視する父親が、

「いい加減にしてくれ。もう、許してくれ。お願いだから……」

叫びに似た父親の声に脅えながら、フロントガラス越しに前を見ると、青いワンピースを着た若い女が道路の端に立っていて、それが少しずつ顔をこちらの方に振り向いてきていたのだと言う。

半分くらい振り向いたその女は、道路の方へと向かって歩き出し、真ん中くらいで立ち止まった。

いけない!このままじゃ跳ねちゃうよ

そう思い父親の方を見ると、不気味な笑みを浮かべ、

「引き殺してやる!」

まるで何者かに取り憑かれたような父親に、為す術も無かったと言う。

完全にこちらを向き終えたその女を、父親は車のスピードを上げて引いてしまった。

不思議な事に、人を跳ねたと言うのに何も衝撃が無かったとの事でした。

その後も父親に話し掛ける事も、顔を見る事も出来ずにいたらしいのですが、この後父親から信じられない言葉を聞く事になったのだそうです。

続きます…。

怖い話投稿:ホラーテラー タッちゃんさん  

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