短編2
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落とし物おじいさん

 お約束だけれど、

僕が見たのは、ただのおじいさんだったのか幽霊だったのか、それとも他の何かだったのか今では分からない。

 それでも、不思議な出来事だった。

 高校生の頃、体育祭の長距離走で同級生に負けたのが悔しくてランニングをはじめた。

毎日午後10時にストップウォッチだけを持って、6キロほど走っていたと思う。

川沿いで車も通っているが、歩道の横には木が植えてあり蛍光灯もあまりなかっかたので、薄気味悪い場所だった。

ただ、その道以外にランニングできそうな場所もないし、当時の僕は幽霊なんか信じていない。

どちらかと言えば、通り魔が出て来るんではないかと怖がっていた。

 ある夜、新しく買ったジャージを着てとても気分も良かったから、いつもよりハイペースで走っていた。

 20分ほど経ち、さっき手に触れた折り返し地点の電柱も見えなくなっている。

 不意に、

落とし物してるぞ〜

、というおじいさんの声が聞こえた。

だが、先述の通りストップウォッチ以外は持ってきていない。

そして、それは今手にある。

衣類がはだけた訳ではない。靴が脱げたわけでもない。

 だが、周りには誰も居ない。

僕とおじいさんの足音だけが聞こえる。

それと、落とし物してるぞ〜、という声も。

 急に足音が大きくなった。

近づいてきているのだ。疲れていた僕は逃げ切ることが出来なかった。

おじいさんさんは僕の前に立つと、「これ、君のだね?」と問うてきた。

恐怖と疲労で頭が混乱していた僕は、はい、と答えてしまった。

 それを聞いたとたん、おじいさんは「逃げた上に嘘まで付くとはいい度胸だ」と僕の耳元で囁き、闇へ走っていった。

 おじいさんが見えなくなった後、親に向かいにきてもらった。

 それ以降、落とし物だよ、と言われる度にドキッとする。

 怖くは無いですが、今でも何ともいえない感じのする出来事です。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名その1さん  

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