これは、私が実家のお寺で体験した出来事です。
私は昔からやんちゃな娘で、よく墓地で走り回っては父に叱られていました。
あの日、私はいつものように墓地の中で遊んでいました。
前日は大雨で、墓地にも水たまりができていたのですが、私は服が汚れることも構わず墓と墓の間を通り抜けたりしていました。
ですが、私は運悪くぬかるんだ土に足を取られ、転んでしまいました。
かなりのスピードで墓石に頭をぶつけ、あまりの痛みに絶叫していると、そんな私の叫びを聞いた父が血相を変えてやってきました。
父は私を抱き抱え、私がぶつかってしまった墓石に向けて頭を下げたまま数十秒じっとしていました。
その時の父の表情は、私に対して怒っているというよりも、何か見えないものに怯えているようでした。
その後父は私を寺に連れ帰り、今まで以上に激しく怒られました。
頭からは血が流れていて、医者に診てもらったところ、傷跡が残ると言われました。
流石にそのときばかりは私も反省し、しばらくその墓地には近寄りませんでした。
ですが、その数年後。私が社会人になったばかりの頃のことです。
ふと頭にあの時のことが蘇り、あの時の壮絶な痛みなど忘れてしまっていた私は、帰省も兼ねてその墓のあたりに行ってみました。
数年経ったあの頃でも、その墓は幼い記憶となんら変わらずそこにありました。
周りは草が生い茂っていましたが。
私が頭をぶつけたあたりを注意深く見てみると、そこには私の流した血の跡が残っていました。
そこだけ黒く変色していて、少し見れば違和感に気づくことができました。
その時から、時折私の頭の傷跡を中心にあの時の痛みが蘇るようになりました。
最初は、何とか耐えられるレベルだったのですが、数日もしてくると痛みはひどくなり、頻繁に引き起こるようになっていきました。
やがて、睡眠さえままならなくなっていきました。
一人で医者に行ったところ、幼いころの記憶が引き起こしている幻痛ということで話は片付けられました。
鎮痛剤と睡眠薬を処方されましたが、全く効果がなく。
ひどくなっていく痛みは、まるでこのままでは何か危険なことが起こると、警告しているように思えました。
そして、ついには途切れることなく頭痛が私を襲うようになりました。
父のお寺で起こったことなので、ダメでもともとの思いで父に相談すると、驚くべき回答が返ってきました。
実はあの墓は、亡くなった私の祖父の墓だったそうです。
祖父は私が三歳の頃に死んでしまったので、ほとんど記憶はありませんが、私のことをよく可愛がってくれていたそうです。
すぐに父とその墓に行くと、父は私の血痕のあたりをよく観察し始めました。
すると、その血がこびりついた部分の真下には、大きく成長した雑草がありました。
父によるとこの雑草は、私の血を吸って成長したもの、いわば吸血草だそうです。
この草が私の頭痛の原因だと言って、父はその草をひと思いに引き抜きました。
すると、すぐに私を蝕んでいた頭痛は嘘のように引いていきました。
この吸血草が頭痛の元凶かと思いましたが、父によればどうやら頭痛自体は、祖父が私に対するメッセージとして起こしたモノだそうです。
父が言うには、この草は私を呪い殺すつもりだったようです。
そんなことができるのかと驚愕しましたが、
どうやらヒトの血には、それだけの力があるようで、それを聞いた時は背筋が凍りました。
ともあれ、今では元気に毎日社畜として働いています。
一年に一度、私は必ず祖父の墓にお参りに行っています。
ついでに、周りの雑草を抜いたり、お墓を綺麗にしたり。
祖父への感謝というだけでなく、また血を吸われないためです。
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作者歩く一人‐Arukuhitori
初投稿です。拙い部分もあると思いますが、よければ読んでやってください。
さて、明日からお盆ですね。皆さんも‘あの草‘にはくれぐれもお気をつけて。