友達の〇が不思議なことを言ったので「どういうこと?」と聞きました。
友「まぁ大丈夫だって、おれも手が冷たくなっただけで事故に遭うとか病気になるとかなかったから」
僕「おれも?ってことは。なるほどな!手を介して伝染していくんだろ?これ!」
友「大当たり〜!笑笑」
僕「なんで千と千尋のラストシーンみたく言うんだよ(笑)」
僕「〇が冷たくなったのはその女と握手してからすぐ?」
友「いいや、昨日だよ。でもたぶんいきなり冷たくなるんじゃなくて徐々にだと思う。いきなりならおれもすぐ気づいただろうからさ」
僕「なるほど。女と会ってから3日後だな。じゃあ家族とかコンビニのレジでお釣り渡されたときとかに触れてしまったことないか?」
時系列が分かりづらくなるため、女と会った日を区別します。僕と友達の会話は4日後です。
(当日)
友「それがさ、家族には女と握手したその日のうちに変なことあったと話したらさ。母ちゃんは怖いの苦手だから真に受けて、話の途中で家事を始めて誰よりも早く寝室行ってさ。」
友「妹はなにそれ、アホらしーって言ってスマホいじりながらテレビ見出して。」
友「父ちゃんは割と怖い話好きな人だから色々と見てるのもあって「じゃあおれの手を握ってみろよ?その女と同じことをしたら何か原因がわかるかも知れんぞ」って言ってくれたから握ってみたんよ。そしたら父ちゃん「なんともねぇな。普通の手だ、安心安心。じゃおれは寝るわー」って言われたんよ」
(当日終了)
(1日後)
僕「その時点では何も変化なかったってことな。」
友「そう。それで次の日の朝起きてトイレ行った時に冷たっ!って思ったんよアレを触った時に」
僕「〇は左利きやもんな(笑)」
友「うん、その後手を洗った時も変だった。水が冷たくない。今は冬なのに」
僕「それは変だな。例えば熱がある時はお湯に浸かってもそこまで熱いと感じないことに似てる。」
友「だからそこでわかった。あの女に移されたんだと、それであの手紙の「さっきはありがとう」ってのは移させてくれてありがとうって意味」
僕「面白くなって来たな。一つ謎が解明したわけだ」
友「そう、だから母ちゃんと妹にはトイレで発見したなんて言えないから父ちゃんにこっそり言ってみたら「どれどれ?」って父ちゃんがおれの手握って
「確かに冷たいな」って言ったから、よっしゃこれでおれの手は解放されたと思ったんだけど」
僕「だけど?違ったの?」
(2日後)
友「うん、あったかい方の右手で次の日父ちゃんの左手を触ってみても父ちゃんの手は冷たくなかった」
友「会社から父ちゃん帰って来たからなんか手が冷たいとか言われんかった?って聞いても「何もなかったよ」って言っててあれ?と思った」
友人の父の手は3日後も変わらなかったが、友人の手はさらに冷たくなったようで。彼は他に原因があるのではと考え、僕の家に相談しに来たみたいです。
(4日後の現在)
僕「分かった!なんでうちに来たか分かったから先に言わせて?当たったら嬉しいから」
友「うん、いいよ。たぶんそれ当たってるし」
僕「性別と年齢だろ!〇の母と妹は試してないからわからないにしろ、おれと〇に共通するものは男であることと同い年ってことだ。そもそも例の女にしたってわざと〇に拾わせる形でハンカチを落としたとしたら、〇以外の通行人では意味がなかったんだろう」
友「そうそう!おれも昨日ずーっと考えて同じこと思ったから今日お前の家来た」
僕「そっか、そんならさ。おれの手も冷たくなるだろうけど、温度測るもの使って記録していこうぜ」
友「え?そこは手紙にあった墓地に行って現地調査とかして謎を解明するんじゃないの?」
僕「いや、それは〇自身も言ってたけど、わざわざ死にに行くようなことしたらダメやろ?心霊スポットに足を運ぶようなもんでさ」
友「確かに。危ないよな、Googleマップで見たけど山の中の車道すら無さそうな場所だったし。」
僕「そういうことよ。おれがその女なら来させて殺すと思う」
友「でもなんで手の温度を記録していくん?」
僕「もし、おれと〇で温度に違いがあったら?伝染することによって強くなるのか弱くなるのかが分かるじゃん。とりあえず明日、おれの手が冷たくならんといかんけど(笑)」
友「なるほど〜。やってみる価値はあるな」
僕「今日1人で寝るの怖いから泊まって行ってや」
友「おれの撒いた種やし、いいよ」
僕「今、冬休みで大学もないし、夜更かししてやろうぜ」
とは言ったものの2人とも眠気には勝てなかったようでいつの間にか寝てしまいました。玄関に近いリビングでゲームしてそのまま寝落ちしました。ガシャん!ガチャガチャガチャとポストに何かを入れる音と玄関のドアを揺らす音で僕は目が覚めました。
スマホで時刻を確認すると午前2時03分でした。ありがちなやつや、丑三つ時ね。なんて思いながらとりあえずこういうときは何もせずが一番だと思いました。
ホラー映画などで真っ先にやられる人の多くは無駄に動いているからだと思っていたので。さすがに眠ることはできませんでしたが、ドアをガチャガチャ揺らしたりバンバン叩いたりするくらいのことだったので放っておきました。
するとあんまりうるさかったのか、二階で寝ていた兄が起きてきてリビングの明かりをつけました。寝ぼけているのか怖いものなしなのか知りませんが、そのまま玄関の鍵を開けてドアを開き「うるせぇんだよ!」と外へ怒鳴りました。
僕は〇は?と思い明かりの中、〇を見ると金縛りにあっていました。急いで体を揺らして「しっかりしろ、大丈夫だから!」と声をかけました。〇は目だけは開くようで仰向けのまま右をじーっと見ていました。あぁなんかいるんだろうな、と思い見てみると何もいませんでした。兄が玄関の鍵を閉めて戻って来るなり言いました。
兄「だれ?あの女」
僕「え?女なんてどこに?」
兄「外外。外におったよ。割と若かったし女友達でも呼んだじゃねん?」
僕「あぁ、それたぶんこいつ目当て。その女友達ではないけどな」
と僕は友人を見ました。
兄「もしかしてお化け?」
僕「とりあえず一通り話すわ」
〇はいつの間にかぐっすり眠っていました。呼吸も安定しているようで安心しました。一通りのことを話したところで
兄「めっちゃおもろいやん!それでお前の手冷たくなった?冷たくなった?」
僕「さあ?触ったらわかるんやね」
左手を差し出しました。
兄「いいや、冷たくねぇな。なんだ本当かと期待したのにおもんねー、眠いから寝るわ」
兄は寝床に帰って行きました。
僕はそのまま眠れず、朝まで起きていました。
友「あれ?こんなとこで寝てたんかおれら。」
僕「昨日のこと覚えてない?」
友「女来たよな」
僕「!?」「覚えてたん?ずっと金縛りあってていつの間にか気絶したように寝てたから知らんと思ったのに」
友「あれ?金縛りにあってたのお前やね?ずーっと左の方睨みながら口パクパクさせてマジ怖かったんやからな。とりあえずお前の兄さんとアジシオぶっかけてみたけど」
僕「いや、それはないやろ。だって塩ばらまかれてないし。おれ朝まで起きてたし」
友「あれー?おれの夢だったんか。確かにな、おれは寝てたみたいだし。」
僕「おれが見たのは〇が右をずっと見てたよ。」
「!?!?!?」
〇が見ていたのは夢のことであれ、僕と〇は隣り合わせで眠っていたのでお互いにそれぞれの左手を睨んでいたことになります。ポストに入れられていたものは釘一本とハンカチでした。その後のことですが、僕の左手も冷たくなりました。代わりに〇の左手は元に戻りました。
そして僕と〇の左手の温度を記録していき分かったことですが、伝染させるたびに冷たさは下がっていました。今では僕の手も元どおりとなっております。異常に手が冷たい人にはお気をつけ下さい。
作者やみぼー
さて、残る謎は女が誰であったのかというところですが、僕も〇も本篇にある通り確実な解明はしませんでした。危険だからです。ありがちな女の正体であるかも知れませんが一応僕なりの答えとして。ポストに釘とハンカチがあったことに加え、家まで追ってくる執念深さから推測しますと。女は過去に僕たちと同い年だった男に殺されたのだと思います。そして左手だけが遺族の元へ戻らず埋葬されなかった。だから左手は冷たいままで残されていた。たぶん彼女は友達も僕も殺す気は無かったのだと思います。自分の受けた痛みを僕たちに知って欲しかったのかなと、さらに友達の温かい手を握れたことが嬉しかったのでしょう。手を介して温かさを伝えていったことで、氷がしだいに溶けるように彼女の恨みも溶けていったのだと思います。彼女は自分のハンカチを拾ってくれた友人に救われたのだと思います。
しかし、中には生きている人を殺そうとする霊もいると思うので触らぬ神に祟りなしとはよくいったもので、人助けであろうと無闇に手を出すのは危ないことに変わりはないです。