都心に住んでいると、夜中でもいろんな声が聞こえる。
深夜1時ごろの住宅街でも、
自転車のカラカラという車輪の音とともに、
中学生くらいの子供の話し声が聞こえたり、
ゴーゴーと重いキャリーケースを運ぶ音が聞こえたりする。
その中で、特に不気味だったのは笑い声だ。
9月の蒸し暑い夜、窓を開けて寝ていたのだが、
「わっはっは」と、ヒーローが登場したかのような笑い声がして目が覚めた。
かなり大きな声で話しているようで、
夜中の住宅街に声が響いている。
「夜分に申し訳ないね」と、あたかも誰かと話しているように大声を出している。
うるさいので、窓を閉めてエアコンをつけようと、
俺は不用意に窓を閉じてしまった。
すると男は
「うるさくしてごめんなさいね。」
と言って、それ以降は声がしなくなった。
はったりだったのか、実際に場所を感づかれたのかはわからなかったが、
背筋が凍る出来事だった。
作者嵐山一志