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中編3
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数字

俺の名前は景山太郎。

自分で言うのもなんだが、俺にはこれといった取り柄が無く、影も薄く、友達もいない。

だが、そんな俺には、普通の人間にはない特徴がある。

俺は所謂超能力者というものらしい。

俺には、生まれつき目の前の人間の顔の上に数字が見える。

数字はそれぞれみんな違い、大体少なくて一桁、多くて九桁と言ったところだ。

例えば、うちのクラスでは、不良の関口は45、ガリ勉の鈴木は18、バスケ部でイケメンの太田は31、ミステリアスな雰囲気の葛城は4、そして留学生のマイケルは64だ。

大体みんな一桁から三桁くらいだが、その中でも圧倒的な数字を誇る人物がいた。

それは、学校一の美少女でこのクラスのマドンナ、秋宮寺麗奈だ。

秋宮寺さんは、成績もスポーツも学年トップで、しかも大金持ちのお嬢様で、クラスの人気者だ。

SNS上でも友達の数は圧倒的に多く、噂ではアイドルの龍埼ハルトと友達らしい。

そんな彼女の数字は、なんと42961だ。

テレビによく出る芸能人や政治家は大体みんな4〜9桁だが、彼女もその域に達している。

俺は16年間数字について考えてみて、ある仮説を立てた。

もしかして、その人の友達の数なんじゃないか?

そう考えると、芸能人や政治家の数字がやけに多いのも説明がつく。

…関口の45はさすがに多すぎだけど、まあアイツ不良仲間とつるんでたもんな。そんくらいいるって事だろ。

ちなみに、その仮説が正しいと確信したのは、俺の数字が生まれてからずっと0だったからだ。

俺は、生まれてこの方一度も友達ができた事がなく、いつも他人の影に隠れて生きてきた。

…どうせ俺は、このまま一生表舞台に立つ事無く、孤独に生きていくんだ。

「あれ、景山君。どうしたの?暗い顔して。」

「…あ、えっと…秋宮寺さん。別に…なんでもないよ…」

「なんでもなくないでしょ。なんか嫌な事でもあった?私で良ければ話聞くよ?」

秋宮寺さんは、こんな俺にも優しく接してくれる。

俺は、正直に悩みを打ち明けた。

「ふうん、なんだ。そんな事か。景山君、ずっと友達が欲しかったんだね。」

「…ま、まあ…」

「あのさ、もし良かったら、私と友達になってよ!」

「え、でも…いいの?」

「うん、クラスメイトだもん!当たり前でしょ!これからもよろしくね、景山君!」

その瞬間、窓に映った俺の数字が1になった。

…やった、ついに、俺にも友達ができたんだ!

しかも、俺なんかじゃ絶対手が届かないと思ってた秋宮寺さんと…!

俺は、スキップをしながら家に帰り、上機嫌のまま1日を過ごした。

次の日、鏡を見てみると数字がまた0になっていた。

え!?どういう事だ!?俺は、昨日秋宮寺さんと友達になって、数字が1になったはず…

もしかして、秋宮寺さんは俺の事をもう友達だと思ってないって事か…?

俺は、急いで学校に駆けつけ、教室に入った。

すると、信じられないものが目に飛び込んできた。

「…え。」

秋宮寺さんの机の上には、遺影と花が置かれていた。

遺影の秋宮寺さんの顔の数字は、1000以上減っていた。

「おい、なんだよこれ…一体どういう事だよ!?」

隣の席の佐藤が答えた。

「…お前、知らないのかよ。…秋宮寺さん、昨日死んだんだよ。車に撥ねられて。」

「…え。」

ショックのあまり、俺の頭は真っ白になった。

嘘だ、秋宮寺さんが、どうして…

「…あれ?みんなどしたの?」

葛城が教室に入ってきた。

葛城が秋宮寺さんの遺影の前に立った時、秋宮寺さんの数字が1減った。

その時の葛城の顔は、笑っているように見えた。

その瞬間、俺は数字の意味に気づいた。

…ああ、なんだ。そういう事だったのか。

窓に映った俺の顔は、ほくそ笑んでいた。

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