短編2
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青い世界

よく見る夢に、ある橋が出てくる。

川をまたぐ、そんなに大きくもない一本橋。

じつは中学の頃の通学路にあった実在する橋で、夢の中では少し歪んでいる。

その橋を目指して歩いているところから、いつも夢は始まる。

普段通りの夢なら、橋を渡って目がさめる。

特に怖いとか、何か特別な感情を抱いたことはない。

何度も繰り返し夢を見たある時、夢の中で尿意をもよおした。

近道をしようとして、いつもは通らない裏道に入った。

すると、橋にたどり着けずに迷ってしまった。

いつの間にか一緒にいた友人たちの一人は足をくじいたようだ。

その友人は別の友人に背負われて私の後に続く。

やっと橋を見つけた。

長い間歩いたためはやく渡って終わらせたかった。

けれど、いつもと様子が違う。

一本橋ではなく、分岐している。

困惑したが、その中でいちばん見覚えのある、グラウンドがある風景に繋がった橋を選んだ。

そして地に足をつけると、全部が青く変わった。

というより、目に青いフィルターがかかったような、そんな見え方だ。

いつもは橋を降りて目がさめるので、次にどこを目指せば良いかわからなかったが、現実世界なら近くに駅がある。

駅を目指そう。

そう声をかけて進もうとした時、目の前に突如「うえの駅」という駅が現れた。

青いフィルターがかかっているのと、いつのまにか夜になっていたため、その駅に気味の悪さを感じて橋へ戻ることを決めた。

来た道を戻っているとき、足元からこぽっと音がした。

何かが生えてくる。

それはみるみるうちに人の背丈に成長し、いびつだが顔も手も生えてきた。

その光景を見て固まっている私に、その人間らしきものが声をかけてきた。

「帰っちゃだめだよ」

「そっちは違う」

とその場に引き止めるような言葉ばかりを放つ。

触ろうと手を伸ばしてもくるが、触れないようだ。

というより、立ったその場から動けないように見える。

ただ、その言葉も伸ばされた手も無視して走った。

夢の中なのに汗をかいているように感じた。

そうして橋に戻った途端、視界が元どおりに。

振り返ると青い世界は消えていて、ただのグラウンドに戻っていた。

もし、別の分岐を進んでいたら。

橋へ戻っていなかったら。

人間らしきものに触れられていたら。

こちらには戻ってこれなかったかもしれない。

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