よく見る夢に、ある橋が出てくる。
川をまたぐ、そんなに大きくもない一本橋。
じつは中学の頃の通学路にあった実在する橋で、夢の中では少し歪んでいる。
その橋を目指して歩いているところから、いつも夢は始まる。
普段通りの夢なら、橋を渡って目がさめる。
特に怖いとか、何か特別な感情を抱いたことはない。
何度も繰り返し夢を見たある時、夢の中で尿意をもよおした。
近道をしようとして、いつもは通らない裏道に入った。
すると、橋にたどり着けずに迷ってしまった。
いつの間にか一緒にいた友人たちの一人は足をくじいたようだ。
その友人は別の友人に背負われて私の後に続く。
やっと橋を見つけた。
長い間歩いたためはやく渡って終わらせたかった。
けれど、いつもと様子が違う。
一本橋ではなく、分岐している。
困惑したが、その中でいちばん見覚えのある、グラウンドがある風景に繋がった橋を選んだ。
そして地に足をつけると、全部が青く変わった。
というより、目に青いフィルターがかかったような、そんな見え方だ。
いつもは橋を降りて目がさめるので、次にどこを目指せば良いかわからなかったが、現実世界なら近くに駅がある。
駅を目指そう。
そう声をかけて進もうとした時、目の前に突如「うえの駅」という駅が現れた。
青いフィルターがかかっているのと、いつのまにか夜になっていたため、その駅に気味の悪さを感じて橋へ戻ることを決めた。
来た道を戻っているとき、足元からこぽっと音がした。
何かが生えてくる。
それはみるみるうちに人の背丈に成長し、いびつだが顔も手も生えてきた。
その光景を見て固まっている私に、その人間らしきものが声をかけてきた。
「帰っちゃだめだよ」
「そっちは違う」
とその場に引き止めるような言葉ばかりを放つ。
触ろうと手を伸ばしてもくるが、触れないようだ。
というより、立ったその場から動けないように見える。
ただ、その言葉も伸ばされた手も無視して走った。
夢の中なのに汗をかいているように感じた。
そうして橋に戻った途端、視界が元どおりに。
振り返ると青い世界は消えていて、ただのグラウンドに戻っていた。
もし、別の分岐を進んでいたら。
橋へ戻っていなかったら。
人間らしきものに触れられていたら。
こちらには戻ってこれなかったかもしれない。
作者ニナ
きのうみたゆめ