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阪神淡路大震災の前に起こった不思議な話

中編4
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阪神淡路大震災の前に起こった不思議な話

阪神淡路大震災の少し前のことです。

私の家族は、震災のあった兵庫県神戸市で暮らしており、当時の私はまだ5歳。

記憶はほとんどないので、これは父母から聞いた話になります。

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当時、我が家の裏には平家のアパートがあり、

そのとある一室に、大学生の男性が下宿をしていました。

ゴミ出しの日を守らなかったり、

引きこもって大学に行く様子がなかったりと、

だらしのない生活をしていたこの男性ですが、ある日を境に毎日大学に行き、ゴミ出しの日も「ちゃんと」守るようになったそうです。

近所の人は不思議に思ったそうですが、その疑問もすぐに解決しました。

彼がまともになった時期から、

可愛らしい女性の出入りが見かけられるようになったのです。

優しそうな雰囲気のその女性は、近隣の住人たちにも挨拶をしたりと礼儀正しく、気さくで、

両親をはじめ、アパートの人たちも好意的に思っていたようでした。

彼は、彼女が出来たからちゃんとするようになったんだな、と皆思っていました。

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それから少しして、アパート内でのゴミ出しのルールが変わったらしく、回覧板が回されました。

回覧板を回しに来たお隣さんが大学生の部屋を訪ねると、あの彼女が出ました。

住人である大学生に直接話すべきかなとも思ったそうですが、

よく二人でいることを見かけるので、ゴミ出しのルールを口頭で伝えて、回覧にサインだけ書いてもらい、

お隣さんが、またそのお隣へ回しておくということになったようでした。

その後、大学生はまたゴミ出しのルールを守らなくなりました。

守らなくなったというより、

ゴミ出しの仕方がルール変更の前のまま変わらなかったのです。

回覧板を回した住人は、彼女が伝えそびれているのかなと思い、しばらく様子を見て注意することにしたそうです。

それから日をおかず、アパートでボヤ騒ぎが起きました。

どこかの部屋の寝タバコが原因の小さなものでしたが、

念のため、住人は一時外に出るよう駆けつけた消防から指示をうけました。

ここからは、途中でボヤの様子を見に行った父の話です。

アパートの前が騒がしく、どうも、あの大学生と住人数名が揉めているようでした。

大学生の部屋へ一時待避の声をかけに行った住人が尋ねます。

「今日は彼女は来ていないのか」

すると大学生は驚いて、

「自分に彼女はいない」と返しました。

「いつも一緒にいる人は彼女じゃないのか?」と住人が再度聞くと、

「自分はいつも1人で、誰も部屋に入れたことなどない」と言ったといいます。

そこから「いるいない」の問答が長い間続きました。

私の両親も、アパートの人たちも、もちろん何度も女性を見かけていました。

この話を両親から聞いた時、

5歳くらいの年齢だった私でさえ、ぼんやりとその女性を思い出せました。

でも、大学生は住人たちの話を心から戸惑っている様子で、

「そんな女性は知らない」の一点張りだったのです。

気味がが悪くなったと言って、大学生はその後すぐアパートを出て行きました。

そして、一月も間をおかずに

あの阪神淡路大震災が起きたのです。

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アパートは半壊し、住人の半数が亡くなりました。

潰れた部分に、あの大学生の部屋もありました。

大学生がアパートを出た後どうなったかはだれも知りません。

これが怖い話なのかは今でもよくわかりませんが、一つだけ、不可解なことがあります。

いつもこの話を思い出すとき、私たちは家族みんな一緒に思い出すのです。

「そういえばあの大学生の話さ」と家族の誰かがきりだした時、必ずみんな直前にその話を考えたり、思い出しています。

私は以前、あの女性が着ていたスカートの柄が、すごく素敵だったことを思い出していました。

母に、あの女の人なんだったんだろうねと尋ねました。

すると母は、

「お母さんね、あの人のことスカートしかおもいだせんのよ」

と言いました。

私はその瞬間、不思議な悪寒を感じました。

確かに、彼女のことを思い出すときはいつもスカートだけなのです。

白地に、黄色と紫の小さな花の刺繍が裾に施してあるスカート。

そのスカートを履いた彼女しか知らないわけではなく、色んな服を着た彼女を見ていたはずなのに、思い出せるのはあのスカートだけ。

両親も私も、それ以外のことは顔も声も全く思い出せませんでした。

思い出そうとしても、まるで彼女のことを一度も見たことがないような感覚になって、全く何も思い出せないのです。

明るくて優しい雰囲気というのも、柔らかな印象のスカートのイメージなのかもしれません。

この話を、まがまがしく、恐ろしいものと捉えるかどうかはみなさんの判断に任せますが、父が言っていた蛇足を一つだけ。

ゴミ出しの回覧板に、彼女が書き留めたサイン。

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字が汚いという以前に、

筆圧がバラバラで、

字としての判別がつかず、

なんと書いてあるのかわからない、

字を書こうとしても書けない、

細く太い線が歪に、大学生の苗字をかたちどろうとしている。

父が見た回覧板のサインは、そんな「文字」だったといいます。

あの彼女はいったいなんだったのか。

良いものなのか悪いものなのか。

私達家族に起こるこの現象はなんなのか。

これから先もきっと分かることはありません。

確認する術は、震災がすべて壊してしまいましたから。

Concrete
コメント怖い
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不思議なお話ですね😳
阪神淡路大震災、もう25年も経つんですね。大学生はそのスカートの女性に守られていたのかも☝️

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