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真夜中の施設警備(リアル体験)

長編8
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真夜中の施設警備(リアル体験)

施設警備のバイトをしていた頃の話。

接客業のバイト経験豊富だった俺はもう人とあまり関わらない気楽な仕事がしたいと思っていた。

接客業特有のストレスで半鬱状態で勉強も趣味も捗らない。

学校行ってバイト行って疲労で眠るだけの日々。

ストレスの原因はやはりお客さんだ。

所謂「お客様は神様だ」の信念で店員に事あるごとにクレームを入れてくる人間は想像以上に多かった。

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とにかく、ストレスから解放されたかった。

でも金は稼がなければいけない。

その一心で俺はネットで求人を調べ、俺は「施設警備員」という職に辿り着いた。

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正直警備員という職にいいイメージ等全くなかったが…(ぼーっとつっ立っているイメージ)。

確かに心的ストレスは少なそうだったため、自分は当時の居住地の近くの大型スーパーの施設警備の仕事に応募した。

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夜間警備。 主に従業員が帰るのを見届け、夜間に施設を巡回して異常が見当たらないか確認する仕事。

実際にやってみるとイメージとは違っていた。

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結論から言うと、思っていたよりしんどかった。

基本的に立ち仕事であり、足が疲れる。

従業員に愛想よく振りまわないといけない。

思っていたより覚える事あり、万が一の緊急の時の責任はとても大きな仕事であった。

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ただ、精神的なストレスが少ない事は間違いなく、次第に俺はパートのおばちゃん等の優しさに居心地の良さを感じるようになっていた。

覚える事さえちゃんと覚えて、最低限の会話が出来れば、楽とは言わないが気楽な仕事だったと思う。

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しかしこのバイトも最低の思い出に変わる事になる。

バイトを始めて四ヶ月程経った日だろうか。

今でも思い出すだけで鳥肌が立つ出来事があったのは。

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本題に入る前に、自分が働いていたスーパーの施設の巡回システムについて話しておかなければならない。

その店は

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一階が食品売場、二階が衣料品売場やアミューズメント、三階が雑貨売場(電気製品売場や文房具、寝具等)がある三階建ての施設だ。

巡回をする時は警備室から移動して、エレベーターに乗り、上階から順に、つまり三階から二階へ行き最後に一階へ降りる。

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巡回する際、各地点(電気製品売場等)を通ると、その場所のセンサーが反応して警備室に設置されている機械から出るレシートみたいな紙に自動的に巡回した場所が印字される。

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分かりにくいかもしれないが、要は、巡回した場所が紙に印字される仕組みになっているのだ。

一箇所でも巡回しないでサボると、紙を見たお偉いさんに「お前、この場所巡回出来ていないじゃないか」

と怒られる羽目になる。

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なんとなくシステムはお分かりいただけただろうか。

最後に一つこの話をする上で大事な事を話して本題に入りたい。

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巡回して、目標場所のセンサーの前を通ると、音が鳴る仕組みになってる。

正確には警備室にある機械からピーって音が鳴るので、予め警備室内にある店内放送装置をONにしておくことで、警備室から離れていても巡回者にその音が伝わる仕組みになっている。

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これは音で「ちゃんとあなたはこの場所を巡回出来ましたよ」と巡回者に伝えてくれる役割を果たしたいるのだ。

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それは、いつものように従業員を送り出した後、1人誰もいない施設の巡回をしていた時の事だった。

俺は、いつも通り何も考えず鼻歌を歌いながら巡回を始めた。

誰もいないので、歌を歌おうが聞かれる心配がないからだ。

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鼻歌混じりに手慣れた様子で三階を巡回する。

まずは三階から。

本屋○○○○

ピー

センサーが鳴る

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文房具売場

ピー

携帯コーナー

ピー

家電売場

ピー

こんな感じでセンサー音を確認しながら回っていた。

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三階の他の売場も終了し、二階に降りるための階段に入った時だった。

その時

ピー

あれ? この階段にはセンサーがないはずなんだけどな。

おかしいな。

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まあ、こういうことがないわけではない。

大抵こういう時は直前の巡回場所でモノが動いてセンサーが誤反応しているのだ。

感知器センサーというのは、曖昧なもので虫(ゴキブリ等)やゴミが動くだけでも反応したりするのだ。不審者が潜伏している可能性など実際には1%もないらしい。

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とはいえ、仕事なので一応確認する義務がある。

ええっと、、

さっき通ったのは三階の寝具売場だったか。

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特に不安もないまま寝具売場に戻ると、案の定何も異常はなかった。

やはりほこりか虫か何かの誤反応だったのだろう。

確認もした事なので、俺はさっきの階段に戻り次は二階の巡回に向かう事にした。

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先程みたいに階段でピーっとセンサー音が鳴ることはなかった。

しかし

二階に出る扉を開いた所でまた

ピー

センサー音が鳴る

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本来この場所でもセンサー音が鳴ることがない。

やはりおかしい。

しかし、俺は冷静だった。 

もう一度言うが、不審者が潜伏している可能性は限りなく低い。従業員達は店内にお客さんが1人もいないのを確認してから帰り始めるし、先程自分自身で確認したが人の気配は感じられなかった。

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センサーがぶっ壊れているに違いない。

多少の恐怖を感じながらも俺はそう思う事にした。

第一、寝具売場のセンサーが鳴る度にその場所まで戻って確認していたらキリがない。

巡回は退勤時刻前の時間に、約1時間行うルールであり、1時間を超えてしまうと高確率で残業になってしまうのだ。

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俺は少しばかり感じる恐怖を押し殺しながら二階の巡回にとりかかった。

二階 アミューズメントコーナー

ピー

ピー

センサーが二回鳴る

ふざけるなよ…

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絶対寝具売場も鳴ってる…。

絶対にびびらねえぞ…。

俺は気にせず回り始める

以降も各巡回場所を回る度に

ピー

ピー

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センサーが二回鳴った。

何とか二階を乗り切り次は一階に入り始める。

自分の人生かつてないくらい一心不乱だったと思う。

「巡回している」というより「逃げている」というような状況。

走るように適当に周辺の異常を一応は確認しながら

回っていた。

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一階を巡回中は二階の時よりもさらにセンサー音の頻度が早かった。

20秒に一回、いや10秒に一回くらいだろうか。あまり記憶がない。

とにかくこの時は早く終えて帰りたい気持ちで一杯だった。

この時既に俺は完全に心からの恐怖心に支配されていたと思う。

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何とか巡回を終え警備室に帰ってきた。

分かってはいたことだが、、レシートが普通の何倍も長くなっていた。

もう一度確認のため言うが、警備室には、巡回した場所を印字したレシートを出す機械がある。

その紙が驚く程長いのだ。

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恐る恐る俺は、震える手で内容を確認した。

やはり、「寝具売場」の記載が異様に多い。

二階で言うなら

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寝具売場

アミューズメントコーナー

寝具売場

紳士服売場

寝具売場

寝具売場

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こんな感じで、所々に「寝具売場」が挟まっていた。

警備室に戻ってきた今もまだ、センサーはなり続け、その紙には「寝具売場」の印字が増え続ける。

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平常時ならば、センサーの故障と断じるのが妥当であろう。

しかし当時の俺は、なり続けるセンサー音の恐怖で冷静に考える事ができなくなっていた

どついうわけか俺は

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潜伏者? それとも心霊現象?

そんな非論理的な妄想に囚われてしまった。

完全にパニック状態だが、確認してみたいという微かな好奇心もあった。

そもそも、職務を全うするなら俺はソコを確認しに行く義務があり行かねばならない。

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俺は意を決してエレベーターに乗り、三階寝具売場を確認しにいった。

結果は

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やはり何もいなかった。

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センサーは今もなり続けているが、ここで俺はようやく、完全にセンサーの故障である事を確信した。

よくよく考えたら、人なんているわけない。

盗むつもりで潜伏してるなら寝具売場に止まってウロウロなんてしないやろうし

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ましてや心霊なんて。ありえない。

俺は一体何を考えていたんだろう。アホか。

安心感からか、ホッとした俺は一人で笑っていた。

エレベーターを使って一階に降り、エレベーターの機械の主電源を止めて、警備室に戻る。

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やはり、相変わらずピー音がうるさく、紙を確認すると、やはり寝具売場の印字は絶え間なく増え続けていた。

しかし、この頃俺はもはや恐怖など微塵もなく、センサーの故障をどう上司に報告しようかと考えていた。

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とりあえず、ホッとした事やし一服するか。

外に出てタバコを吸いながら今日の出来事を振り返ってみた。

自分の焦りっぷり尋常じゃなかったなあ、とか

あんな姿もし見られてたら笑いもんやなあ、とか

考えて笑いながら煙草を吸った。

他人から見たら相当気持ち悪かったと思う。

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一息つくと、もう退勤時刻だったので、警備室に向かい帰る準備をすることにした。

最後に一応紙を確認しておく事にする。

ほんま、怖がらせやがって。

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shake

近づいてる!!!

えっ?

えっ?

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shake

それも尋常じゃない速さで。

走ってきているのか?

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紙を見ると

寝具売場

寝具売場

寝具売場

ここまで連続しているのは先程と一緒だが

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寝具売場

アミューズメントコーナー

紳士服売場

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そのナニカはとんでもないスピードで三階から二階へ、一階まで近づいてきている。

足跡は何故か一切聞こえない。

しかし紙を見ると、警備室に近づいて来ているのは明らかだった。

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俺は楽観的な考え方から一転、腰を抜かしかけた。

今、腰なんか抜かしてたら間違いなくヤバい。

動け、動け俺の身体。

人間本当にやばい時は身体を引きちぎろうとも動かそうとするもんだ。

火事場の馬鹿力というものが出た。

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俺は店の出入り口の施錠、自分のタイムカードのスキャン等、本来やるべきこと全てを放り出して店から飛び出た。

自転車を取りに行くのも忘れて、暗い夜の中必死で家まで走って帰った。

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幸いな事に家に帰ってからは特に異常は起こらなかった。

しばらくとんでもない動機、吐き気を催したが、とにかく誰かに話したい、

話さなければならないと思ったため、

上司に電話した。

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息も絶え絶えの中必死に今日体験した出来事を説明する。

すると上司は、驚いた様子で

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「○○○君? それほんまか? 寝具売場って言うたか? 君知らへんのか? 前にパートの女の人がこの店で刺殺された事件。

その事件なあ、その寝具売り場で起こったらしいで。ニュースでもやっとったで? 君の話がほんまやったら、、」

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その先の話を聞くまでに俺は電話を切っていた。

電話を切ると同時に吐いてしまった。背筋が凍りつくとはこの事だと思った。

もし店をすぐ飛び出さないで、あのまま気づかずにあの店に入れば今頃俺は…。

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この日から俺はバイトには行かず、相当長い間震えが止まらない生活が続いた。

事件後バイトに来なくなった俺を心配してか上司は俺にまた電話をかけてくれた。

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上司はレシートの内容を見て、俺の話が嘘じゃなく本当の事だと信じてくれた。

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shake

そして、防犯カメラを見ても誰も映っていないともいっていた…

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作り話みたいですが、本当の話です…。防犯カメラに写っていないということは、殺された女性が警備室まで助けを求めて来たのかもしれないですね。犯人は生きているのでありえないですし。

寝具売場の名称とかはボカしてますが、店も実在するし、僕が働いていた時の

レシートもまだ残ってるかもしれません…

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