視線 (閲覧注意。かなり重々しく胸糞悪いです)

長編9
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視線 (閲覧注意。かなり重々しく胸糞悪いです)

孤独

私ほど孤独を感じながら生きていた者が他にいるのだろうか。

両親は小学生の頃交通事故で息を引き取った。

それからは父方の祖母の家に引き取られた。

祖母と母は折り合いが悪かったようだ。

それ故か祖母は私は引き取っても邪魔な存在でしかなかった。

他の子達のような愛情を与えてもらえない

そのことが堪らなく辛かった。

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昨日高校の入学式を終えた。

なぜ祖母は嫌いな私を金を払って高校に入学させたのか。

幼少期からずっとお前を養ってやるんだから将来は何倍にも返せ

と言われ続けてきたのでその投資だと思えば納得がいく。

私は彼らの所有物なのだ。

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学校は大嫌いだった。

初めはみんな私を親がいなくて可哀想だと、同情的な目で見る。

それはやがて無視に変わり

やがては私の性格の暗さが気持ち悪いという名目でいじめに変わった。

どうして明るくなれるというのだろうか。

親は死に、祖母からは虐待を受けている私に。

友達がいない私に。

愛情を知らない私に。

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高校生活が始まり二カ月が立った。

地元の高校であるため、中学が一緒だったものも多い。

そのため私はすでに周りからは存在していないかのように扱われていた。

どうせ私に関するありもしない様な噂を流しているのだろう。

もはや無視などどうでもよかった。

幸い、中学で味わったような暴力はない。

それだけで十分だ。

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だがある日やらかしてしまった。

席に向かおうと歩いていた時、中学の頃私をいじめていた主犯格の男にぶつかってしまった。

「どこ見て歩いてんだよクソが。ああ気持ち悪い。死ねよ早く」

私はこういう時どうすればいいのかわかっている。

何も話さない。

相手を刺激しない。

やり過ごすにはそれが一番いい。

「ほら、謝れよ。土下座しろどーげーざー」

醜い笑みを浮かべそいつが言う。

取り巻き達はそれを見て爆笑していた。

私は黙ったまま何も言えないでいた。

とその時、

「いい加減にしろよ佐々木。 長谷部さんは何もしてないだろ。」

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思いもよらない救いの手が差し伸べられた。

名前は分からないが、整った顔立ちをしている男子だった。

「ああ? なんか文句あるのかよ」

佐々木が吠える

「大アリだ。 そういうの腹立つんだよ。群れなきゃ何もできないゴミが。」

「テメエ…。ぶっ殺すぞ」

「やれるもんならやってみろ。 言っておくが俺は空手有段者だ。怪我をさせない保証はないぞ?」

何が起こっているのか私には理解できなかった。

私を庇ってくれた? そんなことはありえない。

ありえなかった。

私はどうすることも出来なく立ち尽くしていた。

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するとその男子は私の手を引いて廊下に出た。

佐々木は舌打ちしながら何も出来ないでその様子を見守っていた。

「災難だったな。ま、あんま気にするなよ」

私にその男子は優しく語りかけた。

あれ

何だろう

涙が止まらない

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こんなに優しくされたのは初めてだった。

その男子が神々しく見え、本物の神にさえ思えた。

「どどどうしたんだよ。泣くなって!俺余計なことしたかな。ごめんな?」

「いや、違うの。嬉しくて…本当にありがとう。ありがとう…」

泣きながら私は心底感謝の思いを伝えた。

彼は私をその後も励ましの言葉をかけてくれた。

「実はキミがいつも1人なのは校内の様子で知ってたんだ。だけど、なかなか救ってやれなくてごめん。勇気がなかったんだ。 これからは俺が見てる時は絶対に助けてやる。頼りないかもしれないけど。」

なんなんだ。

この思いは。

この喜びは。

今まで感じたことがない、これが本でしか読んだことがないあの

「ははは、なーんだ。長谷部さんって笑うと結構可愛いんだな」

恋か!

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私は天にも舞い上がる思いだった。

男子の名は松岡徹(まつおかとおる)君ということを連絡先を交換して知った。

連絡先の交換は初めてだ。

しかも初めての相手は初恋の人。

何度もアドレス帳を確認した。

私のヒーロー 松岡君。

私の生に一筋の希望を感じた。

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それから数ヶ月私と松岡君はどんどん距離が近づいた。

彼のおかげでいじめられることはなくなった。

相変わらず無視はされていたが、そんなこともはや蚊ほどもどうでもよいことだ。

松岡君がいてくれれば。

私のせいで彼が孤立することになるかもしれないと危惧したのだが、

彼は元々一人が好きなタイプらしく

周りを気にしないで私に接してくれた。

いつからか私達はお互いを名前で呼び合うようになっていった。

ああ…私の王子様…

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「美咲!大丈夫か⁉︎」

徹君からのメールがきた、文面からかなり心配してくれているのがわかる。

「大丈夫。ただの風邪だよ。」

私はすぐに返信した。

私は学校を休んでいた。

いつもなら風邪くらいで学校を休むのは祖母が許さないのだが、運良く祖母は今日帰ってこない。

私はベッドで寝ていた。

それからメールは来なかった。

授業もあるししょうがないよね

私はそう思い身体を休めるため眠ることにした。

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ピンポーン、ピンポーン

家のチャイムが鳴ったことに気づき私は目が覚めた。

窓を見るともう夕方だった。

随分眠っていたようだ。

誰だろう、祖母が今日帰ることはないはずだ。

私は熱でふらつきながらドアの前に立つ。

「美咲ー?俺だよ徹ー!」

私はすぐにドアを開けた。

「ほら、お見舞い」

彼はスーパーの袋片手ににっこり笑った。

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彼は私が悪いよ、と遠慮しても家に入ってきた。

「俺がおかゆでも作るからお前は寝とけ。なーに気にするな。こんくらいは作れる」

私はお言葉に甘え、自分のベッドに戻って彼を待った。

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私の部屋は3階、台所は1階にある。

あれ、随分遅いな。

おかゆにしては遅すぎる時間が経った。

その時、ドアが開いた。

「ごめん。なかなかうまくできなくてさ。かなり待たせちまった。」

彼は申し訳なさそうにいった。

いいよ、そんなに待ってないし。

ありがとう、それじゃあいただきます。

私は彼が作ってくれたおかゆを食べた。

暖かい。

今まで食べた食べ物で一番おいしかった。

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そのあと少し談笑した後、彼はそろそろ帰らないといけないらしく帰る準備をし始めた。

私は感謝の言葉を送り、玄関まで徹君を見守った。

優しかったな。

今日も

彼が作ってくれたおかゆが入っていた容器を眺め、私ははにかむ。

私は最近よく笑うようになった自分に驚くことがよくある。彼のおかげかな。

心から彼に感謝しなければならない、そう強く思った。

そして自分の彼に対する恋心が抑えきれなくなるのを感じていた。

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shake

だが

その日からだった。

誰かに見られている気配がずっとするようになったのは。

部屋にいる時も

トイレにいる時も

風呂に入る時も

この家には私と祖母以外住んでいない。だが、確かに私は視線を感じているのだ。

何者かはわからない。

私は日々得体の知れない何かの視線に怯えながら生活するようになっていた。

部屋の障子、窓の隙間は余すことなく締めていたが視線を感じる。

カーテンを閉めても見られている感覚がずっとある。

誰かに監視されている

その感覚が常につきまとった。

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しかし私も馬鹿ではない。

徹君が来てから、この感覚が起こり始めたのだ。

彼を疑わない理由はない。

私は一応自分の家に隠しカメラがないかくまなく探すことにした。

ただ、疑いたくなかった。

彼は私に唯一優しくしてくれるヒーローのような存在なのだ。

私の初恋の人。大好きな人。

だが、その想いは裏切られた。

私の家には大量の隠しカメラが設置されていた。

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私は泣き叫んだ。

大好きなのに

どうして なぜ

そのようなことばかり思い浮かんだ。

もしかしたら彼も私のことが好きで、私の家庭内の様子が知りたかったのかもしれない。

そうだ!そうに決まってる!それなら彼の行動は理解できる。

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私は自分に言い聞かせ、勇気を持って彼に話す決意をした。

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「話したいことがあるから明日の放課後体育館裏に来てくれる?大事な話があるの」

「いいよー。どうしたんだ?気になるな」

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放課後になった。

真実を聞くのは怖い。

残酷な言葉を吐かれたらどうしよう。

私は震えながら彼が来るのを体育館裏で待った。

彼が

来た

「話ってなんだ?どうしたんだよ改まって」

徹君が聞く。

「あのね、凄く聞きにくいんだけど、私の部屋に監視カメラを仕掛けたのは…徹くん…あなたなの?

昨日見つけたの…」

私は持ってきたカメラを見せた。

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彼は黙っていた。

しばし沈黙が流れ、彼はようやく口を開いた。

私はどんな言葉が来るのか怖くて恐怖で震えていた。

「俺だよ。ごめん。

俺、美咲のことがずっと大好きでさ。

お前がどんな生活してるのか気になってしょうがなかったんだ。

こんな俺に幻滅したよな。」

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彼がそういった時私自身驚くほど胸が高揚していることに気づいた。

盗撮、そのことが気にならなくなるほど

ただただ嬉しさが湧き上がる。

同時に安心した。

私はもはや胸の高鳴りを抑えられない

「徹君!あのね、、私っ…!!」

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shake

「というとでも思ったかあああああああああああああああああああああああああ!!!!

ああ気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い

俺はお前みたいな暗い女が一番大大大嫌いなんだよ。

バレたのならしょうがない。

もっと俺に依存してから

突き放すつもりだったがまあいい。

俺も我慢の限界だったんだよお前と仲良しを演じるのがよ」

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「どういうことなの⁉︎」

私は号泣する。

目の前の言葉に信じられない。

「どうしたもこうしたもねーよ。

お前みたいないじめられっ子にも優しく接するいい奴に思われたかっただけだよおおお。

じゃないとお前と仲良くするわけねーじゃん??わからない??

可愛い女子達の中にはお前がいじめられているのを内心かわいそうだと思ってた子もいるわけ!ね?

そんな子達にモテたくて嫌々てめえと付き合ってたんだよおおお!」

もはや私が愛した彼の面影はなかった。

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「でも、何で監視カメラなんか…っ」

私は震える声で聞いた。

「そんなの決まってるじゃーん??

お前がばばあから虐待を受けているって噂知ってたし、その様子見て笑ってやろうとした

そんだけ!!」

あはははははははははははは

ソレは醜い笑い声を上げてそう言い放った。

「お風呂にまでカメラを仕掛けてっ……!!」

「ん?なんて言った?風呂だと?」

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もういい。

こいつは何だ。

下衆野郎ではないか。

私の愛した松岡徹君はどこだ

私の想いはどうなる?

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いやこいつは徹君ではない。

徹君の皮を被った悪魔なのだ。

殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ

「うわああああああああああああああああああ!!」

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wallpaper:3984

shake

気づくと私は側にあった大きな石でソレの頭を殴っていた。

ソレは動かない。

死んだのだろうか。

まあいい。私は悪魔を退治したのだ。

後で本物の徹君に悪魔を退治したことを報告しなきゃ。

まあその前に、佐々木と、家のババアも殺しておくか。

よく考えれば、あいつらも人間ではないのではないか。

今までの私に対する仕打ちを考えれば、とても人間と思えない。

すぐには殺さない。 ゆっくり時間をかけて殺そう。

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shake

ドスッ!!

「えっ???」

何が起こった?

私の胸から血が流れている。

視界が霞む中、包丁を握る男の姿が目に映った。

「俺というものがありながら他の男に告白しようとしやがって」

男は憎々しげに目を血走らせて私を見ていた。

ああ

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shake

そうか。

先程風呂のカメラのことを聞いても「徹君の形をしたもの」はそのことを知らない様子だった。

風呂はこの男か。

よく考えれば家の風呂にカメラを仕掛けられるところなどない。

この男が

私を刺し

今目の前で私を憎々しげに見ている男が

風呂をのぞいていたのだ。

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私は笑みを浮かべながら徹君の死体に寄り添うように倒れた。

bad end

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