多分誰かのお話。
どう読み取るかはあなた次第です。
「うぃー、あっちー」
誰かの声が聞こえる。
四時間目が終わり、弁当の時間になった。
この学校は土地の関係上、夏になると地獄みたいな暑さになる。
無論、私も暑い。
ここは女子高でかなり有名であるが、全くクーラーが効かない。
「一緒に食べよ?」
そう言いながら近寄ってくるのはA子だ。
少しふくよかだからすぐわかる。
「分かった。ちょっと待ってて」
机の横にかけてある弁当袋を机の上に置く。
「弁当袋⋯可愛いね!」
「ありがと。自分で作ったの」
私の母はいない。
父と妹と暮らしているので弁当は大体私が作ってるし、裁縫もやたら得意だ。
「女子力高いなぁ。私なんか弁当の中身茶色ばっかよ」
A子の弁当の中身を覗く。
唐揚げとハンバーグと⋯多分冷凍食品のスパゲティだ。
「まるで男子高校生の弁当ね。野菜という野菜が入ってないわね」
「米って野菜よね?」
そう言ってでかくて丸っこいおにぎりを出してくる。
「米は穀物よ」
そう言いながらおかずに手をつける。
今日のは渾身の出来だ。
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「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま~」
こいつ、ちゃんと咀嚼してんのか?
「そういえばKちゃんって兄弟姉妹いたっけ?」
「あー、妹がいる。一卵双生児だからそっくりだよ」
とは言ってもあまり仲がいいわけじゃないけど、と付け足しておく。
「双子ってなんか憧れる!なんかかっこいいし。私は弟一人に妹二人だわ。弟は生意気だから妹三人ほうがよかったわ」
「僕もその話混ぜてもらっていい?」
僕の一人称を使うのはあの子しかいない。
「Y子?いいけど、一人っ子じゃなかった?」
「いいや、双子だったよ」
だったってことは⋯。
「僕は妹だったんだけど、お姉ちゃんのほうがすぐに死んじゃったんだ」
矢継ぎ早に喋り続ける。
「母さんがよく言うんだ。僕の代わりにお姉ちゃんが身代わりになったんじゃないかって」
「でも何かあってお姉ちゃんを忘れたくないし、お姉ちゃんに体がないのはかわいそうなの」
「だからね、あんま親しくないけど見せるね!」
そう言っていきなりカッターを脱いだ。
「ヒエッ⋯」
Y子のお腹には痣があった。
刃物でえぐったような跡が三つ、まるで泣いてるかのような顔に見える。
「どう?これで何があっても忘れないでしょ?」
ああ、こいつやべぇ。
頭のねじが5本は軽く外れてやがる。
とりあえずA子にアイサインを送ると、うなずきが返ってきた。
「み、見せてくれてありがと」
少し上ずった声になってしまった。
Y子は満足そうに自分の席に帰ってった。
あの気持ち悪さは多分忘れられないだろう。
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次の日になったが、あの痣を忘れられない。
それどころか夢の中にすら出てきた。
「はぁ、朝なのに気分が上がらん」
一時限目は体育だし、マジで動きたくない。
「おはよ!Kちゃん!」
「おはよ、A子」
校門でとりあえず挨拶する。
昨日のことは蒸し返さないほうがいいだろう。
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ホームルームが終わり、さっさと着替え始める。
Y子はいっつもトイレで着替えているが、今日は教室で着替えるようだ。
目をそらそうとするが、ついつい見てしまう。
怖いもの見たさがあるのだろう。
ちらりと見た。
きれいなお腹だ、あの痣なんてない。
「え、なんで?」
大きな声をあげてしまった。
あの醜い顔のような痣がない。
あの脳にこびりついて離れない痣がない。
あの気持ち悪い痣がない。
「どうしたの?」
A子が話しかけてくる。
「Y、Y子の痣が⋯」
「痣?そんなのないよ」
「え!?でも、昨日⋯」
何回見直してもあの痣は見えない。
あの痣はなんだったんだ!?
「Kちゃん昨日学校来てないよ?というかその痣なに?」
言われて自分の腹部に視線を向ける。
自分のお腹にまるで顔みたいな痣がある。
あの痣が。
作者華の後ろ
初めまして。華と申します。
初投稿です。
これをどう読み取るかはあなた次第です。
雑にかんがえるもよし、深読みもいいですよ。
怖い話とはその人の恐怖に語り掛けるものですから。
あと、思い込みって怖いですね。