小学生のころ、私の幼馴染の家庭が家を建て替えるということで一時マンションに住んでいた。
私はその幼馴染と仲が良く、よく遊んでいた。
その日は、そのマンションに引っ越してから初めて家に遊びに行くことになり、学校が終わってから急いで幼馴染宅に向かった。
そのマンションは13階+屋上のつくりでエレベーターが2基あった。
幼馴染と合流してエレベーターを見た時に、幼馴染が
「どっちのエレベーターが先に屋上に行くか勝負しよう」
と言い出した。
このエレベーターは1基は偶数階、もう1基は奇数階に止まる仕様になっていた。
止まらない階は扉はあるが開かないようになっている。
私は止まる階数は同じだし、屋上までの距離も同じなんだから意味無いだろうと思いながら
「いいよ、やろうか」
と言いながら偶数階側に乗り込んだ。
「いっせーのーせ!」
という掛け声で閉まるボタンを押し屋上を目指す。
チーンという音が鳴り屋上についた。
エレベーターを降りたが幼馴染側はまだ屋上についていなかった。
少しこっちが早かったかと思いながら、驚かせようと思い出口横に隠れた。
それでもなかなか来なくて、もしかして誰かが乗ろうとして途中で止められたのかな?
と思い、隠れるのを止め普通に待つことにした。
暫くして幼馴染の乗ったエレベーターが屋上につき降りてきたので、
「遅かったけど誰か乗ろうとして途中で止められたの?」
と聞いた。
すると幼馴染は
「は?そんな時間かかってないでしょ。途中で止められてないし、真っ直ぐ上ってきたけど」
と言ってきた。
「いやいやいや。俺もう2,3分待ってたんだけど」
と言ったが信じてくれない。
じゃあもう一回やろうということになりそれぞれエレベーターに乗り一階まで戻った。
下りの時はほぼ同時に一階まで戻れ、少し気持ち悪かった。
「じゃあもう一回な。いっせーのーせ!」
と言いもう一度閉めるボタンを押した。
しかし結果は同じだった。
上でやはり2,3分待ち幼馴染に
「やっぱり2,3分待ってたんだけど」
と言っても
「いやいや。俺そんなにエレベーターに乗ってないし」
と言い返してくる。
「じゃあストップウォッチ使って時間はかろう」
と提案し、幼馴染宅から2つのストップウォッチを乗り込んで同じことをやる。
「いっせーのーせ!」
閉まるボタンとストップウォッチのスタートボタンを押し、屋上を目指す。
やはり私のほうが早く屋上についた。
屋上で幼馴染と合流したタイミングでストップウォッチを止めた。
私のほうのストップウォッチはおよそ4分で止まっていた。
「ほら見てみろ。こんだけ経ってるんだぞ」
と幼馴染に見せると幼馴染が青ざめてきた。
そして幼馴染のストップウォッチを私に見せて来た。
そのストップウォッチはまだ1分経っていない状態で止まっていた。
私も青ざめつつ
「一応聞くけど、途中で止めてないよね?」
と質問したが、幼馴染は頷いた。
二人とも怖くなったが、この原因は追究したいと良く分からない探求心が生まれ、今度はエレベーターを逆にしてもう一度行うことにした。
結果はやはり同じだった。
原因も良く分からないし、ただ怖いだけだった。
ただ一つ気になること事があり、幼馴染に
「エレベーターの外に女の人がいた気がする」
というと、
「俺が乗った時もいた気がする」
と言われた。
「もう一回だけやろうか。」
と提案すると幼馴染も乗ってくれた。
しかしもう別のエレベーターに乗る意味はないので、一緒に奇数側に乗り込んだ。
閉めるボタンを押し、エレベーターが動き始める瞬間、外に女の人が立っていた。
「見た?」
「見た」
そんな話をしていると次の階にもその人は立っていた。
私たちは驚き、思わず後退りエレベーターの壁に背中をつけた。
次の階もそのまた次の階もその人は立っていた。
さらには徐々に手を伸ばしてきていた。
「もしかして、このエレベーターに乗り込もうとしてるんじゃないか?」
というと幼馴染は
「無理ムリむり」
と閉めるボタンを連打している。
そんなものは意味はないのだが、連打を続ける。
階が進むにつれてどんどん手が伸びてきている。
もうだめだと思った時に
チーン
と音が鳴り、屋上に到着した。
外に女の人が居るかもしれないと怖かったが、そのまま下まで行くのはもっと怖かったので走って降りて、屋上に逃げ込んだ。
もうエレベーターに乗るのが怖かったので非常階段で1階まで降りてそのまま解散した。
それ以来引っ越すまで私は幼馴染宅には行くことは無くなり、幼馴染もエレベーターを使うことはしなかったので、この現象に再度あうことはなかった。
結局この現象の原因などは何もわからないなんとも後味の悪い体験だった。
作者たくねこ