中編4
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赤ちゃん

小学生のころ、親が連休が取れたので田舎に遊びに行こうと言い出し、〇県〇市に泊まりで出かけた。

泊りで出かけることがあまりなく、すごくはしゃいでいた。

古民家を借りて2泊3日の予定だ。

目的地に到着して、まず思ったのが「何もないな」だった。

自然は大いにあるのだが、遊ぶような施設は何もなかった。

子供も少なくご高齢の方が多かった。

そんなこともあり住民の人はフレンドリーでいろいろ話しかけてくれた。

おじいさんやおばあさんと話していると、向こうから何かを抱えた女の人が歩いてくるのが見えた。

何を抱えているのだろうと思ってみていると、

「おぉ~よちよち」

などと言ってあやしていたので、赤ちゃんを抱えているんだなとわかった。

ただ、すれ違う時に赤ちゃんの顔が見えてゾッとした。

その赤ちゃんは人形だったのだ。

私は驚いて顔を背けられずにいた時、おじいさんが

「見てはだめだ」

と言い私の手を引いた。

私は顔を背け、そのおじいさんたちに

「今のは………」

と中途半端な投げ掛けをした。

するとそのおじいさんたちが話してくれた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あの女性が人形を持ち歩いているのには理由がある。

あの女性の祖父母夫婦が若い時に、子供を身ごもり出産し育てていた。

しかしある時、不慮の事故でその赤ちゃんが亡くなってしまった。

その夫婦は気落ちしたが、何とか立ち直り通常の生活を送っていた。

しかし暫くすると女性(祖母)が

「赤ちゃんの声がする」

というようになった。

夫がいつもなだめて居たが、精神にも異常が見られ始め、

「赤ちゃんはどこ?」

と言いながら村を徘徊するようになってしまった。

困り果てた夫は赤ん坊の人形を女性(祖母)に渡した。

すると落ち着き、まるで本当の赤ん坊をあやすように毎日接するようになった。

その後もう一人子供(女の子)を身ごもり、育てていたが、いつまでもその赤ん坊の

人形を可愛がり続けていた。

女性(祖母)も亡くなり、生まれた女の子(母)も大人になり結婚、双子(男女)を出産。

子供が小学生になり暫くすると、

「赤ちゃんの声がする」

を言い始めた。

女性(祖母)の夫は「まさか」と思い、女性(祖母)が眠るお墓のあるお寺に赤ちゃんの人形を供養してもらうことにした。

供養はしたが、住職に小さい祠を建て、しっかりと祀っていけと言われお寺内に建てさせてもらった。

そのことで「赤ちゃんの声がする」ということは無くなり安心したが、しばらくすると

「赤ちゃんはどこ?」

と言いながら村を徘徊するようになってしまった。

これはどうしようもないと思い新たに赤ちゃんの人形を与えることにし、与えるとその言動は無くなった。

その女性(母)も亡くなり、その女性が成人し暫くすると

「赤ちゃんの声がする」

を言い始めた。

その人は結婚はしていないし恋人もいない。

そしてやはり

「赤ちゃんはどこ?」

と言いながら村を徘徊するようになってしまった。

祖父から話を聞いていた双子の兄は赤ちゃんの人形を与え、今に至る。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

とのことだった。

私はその話を聞き怖いなぁと思いながら、宿泊先に戻り一晩を明かした。

次の日に辺りの散策を行い、お寺を見つけた。

あの話に出ていたお寺かなぁと思いながら通り過ぎようとしたら小さな祠を見つけてしまった。

「うわぁ見つけちゃったよ」

とつい声に出してしまい、

こわいなぁ思いながら手だけ合わせることにした。

祠に近づきしゃがみ込んで手を合わせようとした時、祠の陰から何かが飛び出してきた。

私は驚き尻もちをついた。

落ち着いて様子を見ると飛び出してきたのは猫だった。

安心して祠に目をやると、祠の中にあったものが倒れてしまっていた。

やばいと思い急いでもとに戻したが、言い知れぬ不安を感じたので

急いで商店を訪れ、少ない小遣いながらお菓子を買い込み祠に供えることにした。

急いで祠に戻り供えて手を合わせその場を離れた。

夜になり宿泊先に戻り、さぁ寝ようと布団に入った。

暫くして家の至る所で物音が鳴っているような気がしてきた。

カタカタと鳴ったり、コトンと鳴ったりとにかく怖かった。

自分の寝ている部屋にどんどん音が近づいてきている気がする。

怖さに耐えられなくなり布団を頭までかぶりブルブル震えながら過ごした。

何とか眠ることが出来ていたようだが、ふと目が覚めた。

時計を見ると朝の5:20だった。

外も明るくなっていて凄く安心した。

その時だった。

「んぉぎゃ、んぉぎゃぁ、んぉぎゃ」

部屋の中で赤ちゃんの声が鳴り響いた。

「んぉぎゃ、んぉぎゃぁ、んぉぎゃ」

「んぉぎゃ、んぉぎゃぁ、んぉぎゃ」

「んぉぎゃ、んぉぎゃぁ、んぉぎゃ」

最初は小さい声だったのに段々と声が大きくなってくる。

私は怖さと驚きでその部屋を飛び出した。

部屋を出るとその声は聴こえなくなり、リビングで家族が起きるのを待った。

家族も起き、そろそろ帰ろうかという話になり宿泊先を出る準備を各々始めた。

私は荷物を取りに例の部屋に恐る恐る戻った。

赤ちゃんの声は聴こえなくなっており、一安心し準備を進めた。

準備も終わり親に呼ばれたので部屋を出る。

出る瞬間、耳元で

「んぉぎゃ、んぉぎゃぁ、んぉぎゃ」

と聴こえ、私は全速力で宿泊先を飛び出した。

帰りの道中では、何も不審なことは起こらなかったので、何か持ってきてしまっていたらを考えていたので、安心した。

こんなにあの女性の家族に呪いのようなものが起こっており、私の身にも不思議なことが起こってい待っている。

今になって思うのは、

【あの女性の祖父母夫婦の赤ちゃんが不慮の事故で亡くなってしまった。】

との話だったが、本当に【不慮の事故】だったのだろうか。

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