この話は、私が大学の頃に体験したものです。
残暑厳しいある日のことです。
講義終わりに私は友人3人と大学構内で雑談していました。
日が落ちて周りが暗くなった頃、友人の家に場所を移すことになりました。
友人は、大学から自転車で5分ほどの距離にあるアパートに下宿をしていました。
そのアパートは6階まであって、友人は4階の角部屋に住んでおり、いつもエレベータを利用していました。
その日も自分を含め4人でエレベータに乗り込み、4階のボタンを押し、閉めるボタンを押そうとしたときです。
女性の2人組が乗り込んできて、“私は”20歳前後の若い普通の2人組に見えました。
エレベータは狭くて縦長の形をしており、彼女たちはエレベータのとびらの側に、出入りを塞ぐかのように立っていました。
彼女たちは階数ボタンを押さなかったため、「目的の階は一緒なんだな」と考えながら、目的階の4階に到着するまでスマホを触っていました。
4階に到着し、彼女たちはエレベータのとびらが開くと同時に降りていきました。
しかし、奇妙なことに彼女たちはエレベータから降りたあと、通路の右側にずっと立っており動かないのです。
エレベータに乗ってきて、階のボタンを押さなかったことから、彼女たちの目的は4階だと推測できます。
それならばエレベータを降りたあと、目的の部屋に向かうのが普通だと思うのですが。
しかし彼女たちは私たちが全員降りるまで、じっと通路の右側にたっていました。
友人の部屋はエレベータを降りて通路を左に進んだ角の部屋です。
私たちは、エレベータを降りて通路を左に進み始めました。
すると、彼女たちは私たちの後ろをついてくるのです。
いよいよ意味が、彼女たちの目的がわかりません。
そして、ついに友人の部屋の前まできてしまいました。
友人は角部屋です。
もうこの先に部屋ありません。
この時点で、彼女たちは私たちに用があることが確定しています。
さすがに、このまま鍵を開けるわけにはいかないので、部屋に住んでいる友人が
「何か用ですか?」と彼女たちに尋ねました。
彼女たちは、ゆっくりとお互いを見つめあって、その後まっすぐ私たちのほうを向いてそれぞれ一言、
「なるほど」「理解した」
という言葉を放って、その場から去っていきました。
私たちは全員、状況が整理できずに10秒くらい、その場で立ちつくした後、急いで部屋の中に入り起こったことを整理しました。
しかし、4人とも話が噛み合わない部分があるのです。
それは彼女たちの”容姿”です。
年齢、髪型、服装、顔つき…どれも全員はっきりと思い出せず、一致しないのです。
結局その日は朝まで友人の家で過ごし、朝になってから3人で一緒にアパートを出ました。
後日談で、友人は、管理人に話してエレベータのカメラを確認することも考えていたのですが、これ以上関わりたくないという気持ちが勝ち、忘れることにしたそうです。
結局、彼女たちは生きている人間だったのか、それ以外の何かであったのか今でもわかりません。
作者剣豪
初めてこのサイトに投稿します。
実話なので、話の本筋に影響を与えない程度でフェイクを入れています。
改めて文章にすると、そんなに怖くないかもしれません笑