短編2
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怪奇談話 【悲しいなぁ】

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都内で会社員をしているAさんはこの言葉が苦手だ。

自分から口にするのも苦手だし、人が何かの拍子に発するのを聞くの同様。

shake

何故彼はこの言葉が苦手なのか?

shake

それは彼が中学生の頃にまで遡る。

当時彼は14歳。

そして友人の一人にお前の隣に男が立っていると言われたのだ。

この年頃の男子は思春期を迎えるからか、ちょっと変わった言動をする事が多い。

最初は友人は唐突に中二病にでもなったのかと思った。

俺にはわからないなーと流しつつ学校生活を送っていた。

そんなある日彼は唐突に自分の隣にいつも男性が立っているのが見えるようになったのだ。

きっかけは授業中の居眠りでみた夢だと思う。

夢の中で彼はある廃墟の中の鏡に向かって話しかけていたそうだ。自分では何を言っているのかわからないが、言い終わったあとスート夢から醒めた夢、気がついたら隣に男性が立っていた。

最初は先生に居眠りがバレたのかと思い、やばっ!!と思ったそうだ。

しかし先生こちらに背を向けて黒板に文字を書いている。

そして学校が終わり、放課後その日はまっすぐ帰宅して

なぜ自分に男性が見えるようになったのかを考えた。

その前に最初は気のせいかと思い、洗面所の鏡の前に立ったのだ。

そこには自分の隣に男性がはっきりと立っていた。

彼はそれまで霊感とは無縁であり、遊園地のお化け屋敷すら怖がってしまう

筋金入りの怖がりなのだ。

ただ、不思議とその男性を怖いとは感じなかった。

その日から男性との奇妙な生活が始まったのだ。

朝起きてから夜寝るまで常に一緒にいる。

何をするわけでもなく、言葉も発せずただただ隣にいるだけなのだ。

唯一嫌な点は、夜寝るときに別途の横に立ってこちらを見下ろしてくることくらい。

友人は相変わらず霊がいると騒いでいたが、あえて流していた。

shake

そんな生活が続いたある日、男性が言葉を発したのだ。

ひとことポツリと「悲しいなぁ…」

shake

なんのことやら意味不明だった。

そして次の日霊が見えると騒いでいた友人が学校に来ず、どうしたんだとクラスメートと話していると朝のホームルームで彼の死亡が告げられた。

自宅のマンション屋上から飛び降りたそうだ。

最初はとても悲しく思ったが、同時に初めて隣の男性が言葉を発したことに驚いたと同時に、不気味に思えた。

それからも隣の男性が言葉を発するたびに、友人や親戚という自分の親しかった人物がなくなるようになった。

言葉は決まって「悲しいなぁ…」

それ以来彼はその言葉が嫌いになった。

shake

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