あの頃は若かった。
学校から帰ってきたら
一人で卓球場に向かい
400円払って
一人でサーブ練習に明け暮れたものだ。
だが、やはり一人だと集中力が続かないもので
飽きるんだよな。
そんなときは・・・
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自動販売機でスポーツドリンクを買って
一気に飲み干す。
まあ冷たいので
そんなに飲めないが
ゆっくり慌てずに
一人、冷たさによる
歯の痛みに耐えながら
愚痴をこぼしたものだ。
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少し飲み過ぎたらしい
トイレに行きたくなった
ここのトイレはちょっと暗い
ずっと小便器の水が止まっていなかったり
自動化もいいけど
水の料金がもったいないなと
つくづく思う
スリッパを履いて
あ、そうそう
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体育館のスリッパは
運動靴をわざわざ脱がなくても
幅が広いから履けるんだ
この快適さはやはり
運動をやっている人しか
あまり伝わらないが
まあいいや
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ペットボトルを
目線の高さくらいにある
平べったい場所に置いて
用を足す
まあ、ここで
いつも思い出すんだけど
世の中ってごっつい狭いんだなって
思うわけだ
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目の前のペットボトル
じーっと眺めて
アフリカでも
ブラジルでも
同じことしてるのかなーって
100年前、200年前も
同じ感じだったのかなーって
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世界は時代はリフレインしてるんだな
そうゆっくりジッパーを閉じた
くるりと振り返ると誰もいない
当たり前だ
だって、一人で来ているんだから
連れションとかするんだろうな、普通
手を洗って外に出た
「ふう」とため息
2,3歩進んで気づいた
「あ、ペットボトル」
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取りに行こうと
またトイレに目をやると
誰かいる
身長130cmくらいの子供だ
服も着ていない、裸体の男の子だ
「あれ、居たっけ?」
よく見ると
僕のペットボトル飲んでる?
「え?え?え?」
子供が僕のスポーツドリンク飲んでる?
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「ちょっと、ちょっと!」
そう僕が言うと、
その男の子はびっくりして
急いで大便器の方に駆け込んで
「バン」
と勢いよく閉めた。
What's? ホワーッツ???
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ナニがオコッタカヨクワカラナイヨ、ママ
おそるおそるペットボトルを見ると
蓋が開いており
中がほとんどこぼれていた
幻覚?錯覚?飲み会の疲れ?徹夜気味?
様々な理由がこみ上げてきた
そして、たどり着いた答え
もうこれしかないんじゃないか
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妖怪だ
座敷童だ
河童ではないだろう
急に電気がぱっと付いた
ゆっくりゆっくりドアの方を見た
すると、ドアから何か目のようなものが
きらりと光った
あ、何か居る。
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心臓がバクバクなった
超臨界流体になってしまう水蒸気
インディーズバンドで知らない人と分かち合う一体感
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瞬きせず
ペットボトルを拾い
口の方を持って
武器にした
ドアノブを持って
そっと引っ張った
だけど、そこには誰も居なかった
おかしい
何かがおかしい
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後ろ!
いない
横!
いない
え?なんで
と思ったとき
「ここだよ~。」
声がしたので
ふと上を見ると、居た。
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ここから先は覚えていない
何か160kmくらいの野球の球が
顔面に当たったくらいの痛み?
僕はその日、鼻を骨折した
鼻血がすごい出ていたことを覚えている
殴られた?
蹴られた?
いや、そんなんじゃない
そう断言はできる。
あのトイレに何かいる。それだけは確かだ
作者退会会員
こんにちは。自分は卓球指導者や写真家の道を諦め、とりあえず就職します。あと、とりあえず何か作っています。またいつか、どこかで。