子供の頃、私は団地の一番上の階に住んでいた。
ある日、母親が買い物にいったとき、一人で留守番をすることになった。
これ幸いとテレビゲームをしていた時、「ただいま、開けてちょうだい」と、母親の声がした。
何かおかしい。
声のした方向は玄関ではない。
辺りを見回すと、買い物袋を抱えた母親がベランダに立ってにっこり笑っていた。
「開けて、開けてちょうだい」
確かに母親の声だ。だけど、なんでベランダに立っているのかわからない。
「開けて、開けて」
母親は窓にペタペタと手をくっつけて私に窓を開けるよう促し続けている。
これは母親じゃない。
私はカーテンを閉めようと思い、窓に近づいた。
その瞬間、母親がベランダを乗り越えていくのが見えた
つんざくような叫びと、コンクリートの地面に重いものがぶつかったような音が聞こえた。
私はカーテンを閉めると急に何もかもが怖くなって部屋の隅でガタガタ震えていた。
shake
「なんで開けてくれないの」
ベランダから声がした。
作者らなん