中編5
  • 表示切替
  • 使い方

逢魔が時

仕事が終わり車で帰宅しているときのお話です。

その日は夜勤明けで仮眠をしてから午後の仕事を終わらせて早上がりとなっていて、退勤したのは夕方の6時前でした。

nextpage

明日は久しぶりの休みだし、夜更かしがてら飲みに行こうかなあ

など夜の予定をぼんやり考えながら車に乗り込みました。

nextpage

職場から家までは車で一時間ほど離れていて、その日は珍しく渋滞していました。

(あーあ、たまに早く帰るとこうなるよ。参ったねえ)なんて嫌気がさしましたが仕方ないので車が動きだすのをタバコを吸いながら待ちました。

ちょっと進んでは止まり、しばらく待ったと思えば進み。を繰り返していると左側に抜け道を発見しました。

nextpage

(こんなとこに抜け道あるのか。とりあえず入ってみるか)と渋滞に飽き飽きしていた私はウインカーを出してその抜け道に入っていきました。

抜け道は片側一車線で交通量の少ない狭い道路でした。両側に歩道はなく、住宅のブロック塀で更に狭く感じていたと記憶しています。

nextpage

曲がったとたんに西日が私の視界を支配します。ひどく眩しい西日が私の目を焼きました。

背の高い建物もなかったのか、バイザーを下ろしてもバイザーの下から西日は差し込み、私は手を西日にかざしながらゆっくり運転することにしました。

nextpage

西日はしばらく私の視界を奪い続け、歩行者はおろか対向車さえわかりませんでした。

徐行運転していたため(後続車に迷惑をかけていないかな)と思った私はルームミラーで後ろを確認しましたが、後続はいませんでした。

nextpage

(それにしても眩しいな、西日が早く建物の影に入ってくれないかな)と思いながらゆっくり車を動かし続けます。

左手で西日を隠しながらセンターラインを割らないように注意して右手のみでハンドルキープします。

時折、センターラインをまたいでいる気がしてハンドルをかすかに左に戻します。

すると「ガリガリ」と左のサイドミラーが音をたててブロック塀に擦れました。

nextpage

(あーあ、やっちゃったよ)

と思いましたが、知り合いの車屋から格安(五万)で譲ってもらったかなりオンボロのカローラだったので特に気には止めませんでした。

ですが、相変わらず視界は眩しいのでより気を引き締めて運転しました。

nextpage

住宅地だけあって左右に細かい路地がありました。その角には「子供の飛び出し注意」などとドライバーに注意喚起をうながす立て看板があります。

普段なら気にもしませんが、たしかにこの状態なら飛び出して来られたら一大事だな、なんて考えました。

その時ですーーー

nextpage

shake

ガンッと車の左前方に鈍い衝撃が走りました。

何事か!?と思った私は即座にハザードランプをつけて車を停めました。

それこそ子供でもひいてしまったかと嫌な予感しかしません。

nextpage

車を降りてあたりを見ました。子供はおろか何にも見当たりません。

左前の方も見ましたが以前からあるバンパーの小傷があるだけでした。(左ドアミラーはしっかりと真新しいガリ傷がついていました)

nextpage

なんかこの道嫌だなあ。と思った私は携帯で道を調べて大きな通りに戻ることに。(当時はまだスマホではなくガラケーでした)

すぐにいつもの通りに戻ることができました。事故渋滞だったらしく渋滞も解消されてました。

nextpage

無事に帰宅できた私は疲れをとるために熱いシャワーを浴びてビールを飲むことに。ところがビールを切らしていたことを失念しており、仕方なく近所の顔馴染みとなった居酒屋へ。

nextpage

「◯◯くん、いらっしゃい」と愛想たっぷりの奥さんにカウンターに促され、職人気質の大将は目で挨拶してきました。カウンターには顔馴染みになっている常連さんにも挨拶を済ませて、ビールとオススメのツマミを頼んみました。

nextpage

ビールで喉を潤わせると「さっきこんなことがありまして」と酒の肴に先程の不思議な体験を常連さんに話はじめました。

すると常連のAさんは

nextpage

Aさん「そういう時間帯だからねー。夕暮れ時ってオウマガトキって言うじゃん」

私「オウマガトキ?」

Aさん「そうそう」と言うと携帯を出して文字を打ち込んで画面を私に見せました。

nextpage

[逢魔が時]

と文字は打ち込まれていました。

Aさん「本格的に暗くなる前で妖怪や怪異が動き出す時間帯のことを指す時間帯を意味する言葉だよ。◯◯くんが体験したのも逢魔が時だったから体験したのかもね」

と言い、Aさんはウーロンハイで口を湿らせました。

私は「Aさん物知りッスねえ!」とヨイショするとAさんは気分をよくしたのか私に一杯ご馳走してくれました。

nextpage

その日はその後常連さんと怪談話になり奥さんが「そんな話ばかりしてるとオバケがお客になってくるからやめてくれ」と笑いながら言いました。

大将は「オバケになってもウチに来てくれるのは職人冥利に尽きるな」とボソッと言ったのは全員の笑いを誘いました。

そこそこに酔ってお勘定を済ませてその日は帰宅しました。

nextpage

翌日は軽い二日酔いと日差しで目が覚めました。またカーテンも閉めずに寝てしまったみたいで携帯で時間を確認すると午前10時を少し過ぎた時間でした。

シャワーで寝汗を流して近くのコーヒーショップで朝食をとりながら今日の予定を練っていました。

そう言えば洗剤とか切らしてたなと思い、家からちょっと離れたホームセンターまで出かけることにしました。

nextpage

駐車場に車を取りに行きました。一度運転席に乗り込みましたがなんとなく気になって昨日擦ったところとぶつけたところを見ようと思い、エンジンをかけて運転席を離れました。

ミラーは相変わらず真新しいガリ傷がありシルバーの塗装が剥げていました。

nextpage

「え?こんなの昨日は、、、」と思ったのはバンパーです。

左前、ちょうどぶつけたと思った箇所にはべっとりと赤黒い色が付着したいました。

それも点々とちょっと付いているといった感じではなく、塗料の入った水風船をぶつけられたみたいな感じでベットリと付いています。

nextpage

さすがに気味が悪くなった私は知り合いの車屋に相談し、そのまま車屋に行きました。

車屋はバンパーを交換しようかと提案しますが、そんな気味の悪い車に乗りたくなかった私はなんでもいいから乗り換えたいとお願いしました。

たまたま余っていた中古のマーチを10万で買いました。

私の乗っていたカローラはバンパーだけ交換して車屋の代車として活用したとのことです。

Normal
コメント怖い
0
4
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ