今から約10年前の実話です。
あまり怖くなかったらすみません。
当時大学4年生だった私。
2年次に単位を落としまくり、かと言って留年する経済的余裕もなく、朝一の授業に出ながら卒業論文もどうにか体裁を整えるという忙しない日々を送っていました。
その日も授業をこなし午後3時頃、卒論の続きを書くべく大学の図書館に向かいました。
今学生の方はもうPCは1人1台所有が当前なのでしょうか。
当時はまだPCを個人で所有していない学生も一定数存在し、私もその1人です。
帰宅しても家族共有のPCを使う、もしくは父の仕事用のPCを借りねばならず、勝手が悪い。
そんな私にとって大学の各所に多数設けられた共有PCはありがたい設備だったんです。
中でも大学図書館は、ガラス張りですが個室スペースでの設備が設けられており、個室ではない学内の他の共有PC設置箇所より快適で、重宝していました。
この大学図書館、何某かの賞を受賞した経歴がある建物なのですがそれ故か、少し不思議な造りになっています。
簡略化すると1、2Fが、
個|書| 吹 |書|個
室|庫| 抜 |庫|室
|入口|
という構造、5階建てで3〜5Fは入口がないかたちになります。
吹抜部分には司書さんの事務スペース、少人数の会議室などが点在し、渡り廊下で繋がっています。
これで伝わりますかね⁇
個室に行くには吹抜スペースで司書さんに手続きをしなければなりません。
私はいつも通り1Fの入って右手に向かい、司書さんに声をかけます。
「個室利用お願いします。」
「では此方御記入お願いします。」
個室スペースは各階複数ありますが、埋まっていたらそれ迄、早い者勝ちシステムだったんです。
そのため記入用紙も、正式に管理するためではない、非常に形式的な小さな紙に名前を書いて、利用時間の期限だけを印字されるものでした。
紙を持ってそのまま右手の個室スペースで空室を探します。
1F、ない。2F、ない。3F、ない。
4F…空いてそう、あの黒いリュックのある個室の隣…あーだめか、筆記用具もあるし、椅子の背もたれに赤い上着かかってる…。1番手前の個室…も駄目か。
プリントとまとめかけのルーズリーフ、PCも調べ物の途中の画面だ…と思ったら18禁ワード入ってるし検閲に引っかかって表示されてないじゃんカリビ◯ンコム…誰か知らんが真面目にやれ。
5F…駄目だ空いてない。黒いパーカーの置いてある個室の隣、空いてるように見えたんだけどな…。
右手側がダメだったので、5F渡り廊下を渡って左手に向かいます。
5F…やっぱり空いてない。なんか違和感あるけど。駄目なものは仕方ない。
4F… あの黒いリュックのある個室の隣…あーだめか、筆記用具もあるし、椅子の背もたれに赤い上着かかってる…。1番手前の個室…も駄目か。
ん?
5Fの黒いパーカーの置いてある個室、右手と同じ位置だったよな?
私はここで恐れ怖がり困り焦り「今日はここで何かするのは辞めよう」と思って大学図書館を出て、帰宅後夜中に父の仕事用PCを借りました。
数千人が通う大学という施設で、
建物の造りが左右対称で、
施設の利用者の持ち物まで一致する可能性は何%なんでしょうか。
左右がある意味本当に均等だった時、私は怖れが勝ってしまいました。
作者紅葉
誤字脱字、「ここにもう少し詳細が欲しい」など、御指摘指南絶賛募集中です。
事実なんですが伝えることと脚色の境目って難しい。