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短編2
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節分と廊下の奥

私が小学校低学年の頃の話。

その頃は平屋建ての祖母の家に住んでいて、比較的広い家は、私と妹にとっての冒険の場所だった。

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そんな家でも、日当たりが悪いとか、物置だとかの理由で何となく怖い場所がある。

祖母の部屋に続いている、長い廊下のその奥も怖い場所の一つだった。

突き当たりにお手洗い、押し入れ。その横に祖母の部屋があるのだが、部屋は良くてもそのお手洗いと押し入れがどうしてもダメだった。

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狭い物置、広い物置、離れの物置。

妹と2人で冒険とかくれんぼ、鬼ごっこを繰り返す中で、怖くてもどこにでも入り込めた勇気と小さな体は、その廊下の突き当たりにだけは行かなかった。

祖母の部屋に行くときは、全速力で走って行ってその部屋に篭るか、早々に走って戻った。

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決定的な出来事があったのは立春の前日、節分の日。

大豆が大好きは私は、いつも通り豆まきをする前からぽりぽりとつまみ食いをしていた。

笑われながら、さぁ行こうかと祖母に連れられて豆を撒きに行く。

豆まき中もつまみ食いは忘れない。

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物置、洗面所、台所。

四畳半、仏間、子供部屋。

そして件の廊下に向かった時だった。

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奥に何かいる。

突き当たりの、ちょうどお手洗いに入るための曲がり角から、黒い大きなモノが半身を覗かせていた。

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子供ながらに、まずい、と感じて廊下に進もうとする祖母を止める。

「鬼、鬼がいるよ」

鬼としか考えられなかった。

保育園時代、先生が仮装した鬼に大泣きしていた記憶があったけれど、泣くどころか近付きたくない一心だった。

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多分人の形をしていたと思う。

けれど人にしては体格も良く、天井までその頭が届いていた。

…その体が、何か、どういうわけか蠢いている。呼吸するように、心拍を刻むように。

ぞわぞわとした恐怖が背筋を撫でて、涙目になったのを覚えている。

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祖母は子供の冗談か、現実と空想の区別がつかなくなったんだと思ったらしい。

「そう?じゃあちゃんと豆まきしようね」

と、しゃがんで目線を合わせてくる。

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豆を掴み取る。

廊下に向かって、そこに近づいて投げようなんて思えなかった。

もしこの豆がアレに当たったら、と想像すると怖くてたまらない。

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お願いだからどこかに行ってくれますように。と必死になって廊下の手前に豆を撒いた。

黒いモノは動かない。

ただそこに立って、こっちを見ているだけだった。

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奥には祖母の部屋があったけれど、祖母は怖がる子供を無理に連れて行くことはなかった。

穏やかに手を引かれ、その場を去った。

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その後、あの鬼がどこに行ったかは分からない。

今でもあの廊下の奥は苦手だ。

Concrete
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