短編1
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高架橋の下

母の運転する車の中、後部座席。

隣のシートに圧が来た。丁度高架橋の下を通った時だった。

何が気に入ったのか、スイッチになったのか、運悪くその隣に座る私は圧迫感で息苦しい。

ここは運転中の車内だ、逃げ場はない。

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「ねぇ誰か乗ってきた?」

少し無邪気さを残す助手席の妹の声に、私は泣きそうになった。なぜ言ったんだ、ああほら圧の持ち主が膨張している。

「だから言わなかったのに!」

思いの外自分の声が震えている。少し情けなさを感じた。

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「あー、走らせてたらそのうち降りるよ」

運転に影響が出ると困るんだろう、母から少し真剣さを感じた。

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でもそのうちでは困る。今すぐ降りて欲しい。

なんでこの車なんだ、なんで私の隣なんだ。

左手につけた水晶のブレスレットが心許ない。

守ってくれるのは分かる、でも怖いものは怖い。

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そんなことを悶々と考えていると、ふと圧が消えた。帰ったらしい。

「赤い服着てたね」

脅威は去ったと言わんばかりに妹が言う。さっきのことを私はまだ許していない。

「そうだねぇ」

事故を起こさなくて良かったと母が言う。

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隣にはあの圧の名残があった。

きっとあの高架橋の下に帰ったんだろう。

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「楽しそうだったから乗ってきたんだろうね」

でも、離れたら降りていった。

そう伝えると母は

「遠くまでは行けないよ。地縛霊だもん。」

と言った。

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今もまだ、彼女はあの高架橋の下にいるのかもしれない。

Concrete
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