これは俺が関東のK県に住んでた頃の話だ。
当時俺が住んでた場所の近くに、今は公園になってるらしいが廃病院があった
医療ミスが原因だったか、院長が自殺したとかいう…まあ関東ではそれなりに有名な心霊スポットだった
周りは畑やら空き地ばっかりで、その廃病院の周りには何もなくて余計に目立っていて
落書きや不法投棄でめちゃくちゃな状態だった
以下その病院をK病院と略していこうと思う
台本書きだし拙い文章だし、オチなんてないしただの殴り書きだしめちゃくちゃ長くなるけど
それでもよければ見ていってほしい
正直思い出しても後悔しかないし、本当は誰にも話さないほうがいいのかもしれないが
もうあれから結構経ったし、何より俺は誰かに話したいんだと思う。
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当時俺は地元を離れて一人暮らしをしてた。
カメラマンを目指してたから、まあバイトしながら写真撮ったり、撮った写真を雑誌のコーナーに応募してみたりしてたんだが
まああんまり上手くいってなかった。自分が写真の才能ないのは薄々わかってたけど
それでも子供のころからの夢を諦めることができなくて
上手くいかないことに悶々とした毎日だったから生活もちょっと荒れ気味で
家にいても悶々とするし毎日コンビニの前でビール缶一本飲んで帰るのが日課になってた。
それでも当時仲のいい友達がいるのが唯一の救いだったと思う。
仕切り屋というか、まあ何事もサックリ決めてくれるA
基本Aの言いなりで、正直なんでAと仲いいのかわかんないB
あんま喋んないし何考えてるかわかんない感じのC
あと俺で、まあ仲良くなってからはお互いの家行ったり来たりとか朝まで一緒に遊んだりしてた
そんな日々を過ごしてたある日、突然Aがこんなことを言い出したんだ
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A「なあ、近くにさ、心霊スポットあんじゃん?あのボロッボロの病院!」
B「K病院のこと?」
A「そうそう!夏だし面白いことねーしさ、ちょっと肝試しとかどうよ?」
俺「えー、気持ち悪ィよ…」
A「なんかあそこ取り壊し予定あるらしいしさ、その前に一回でいいから行ってみようぜ!」
B「んー、まあ俺はいいけど…どうする?」
俺「まあ…一回くらいなら…」
A「よし、じゃあ今日これから行こうぜ!」
Aが言い出したのは18時頃、夏とは言えそろそろ薄暗くなるくらいだった。
昼間だってちょっと薄気味悪いのにこれから…?とは思ったものの
ノリというか勢いというか、そんなんで結局行くことになった。
懐中電灯とか虫よけスプレーとか色々用意して、病院に着いたのは18時半くらいだったと思う
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病院の入口に立つと、真夏で蒸し暑いのになんだかちょっと涼しい感じがして
でも首元とかは汗が流れてた。これが冷や汗ってやつなのかなぁ…とか思いながらA達を見ると、俺と同じなのか
誰も院内に入ろうとしないでただただ外壁とか、入り口から見えるとこを眺めてた。
A「やっぱ雰囲気あるな、さすが心霊スポット!」
B「ちょっと怖くなってきたかも…」
二人が苦笑いしながらそう話してると、Cが突然後ろを向いて歩きだした。
俺がどうした?と声をかけると、Cはくるっと振り返って、無表情のまま
C「俺は行けない。車で待ってる。」
と言って車に戻っていった
AとBは不思議そうな顔をしながらも特に何も言わず、むしろCなら仕方ないみたいな感じだった
正直俺も普段からああいうミステリアスキャラだったら嫌な時も嫌って言えたんかなぁ…とか思いながら
Aが院内に進みだしたから後についていった。
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院内はゴミで溢れてて、ゴミを蹴っ飛ばしながら進むような感じだった。
街頭の電気とかなんて全然届いてなくて、懐中電灯とまだうっすら明るい外からの明かりでなんとかなってた感じ。
正直普段別にヤンキー気取ってるわけでもないし、強いキャラ演じてるわけでもなかったから
ガンガン先に進むAにくっついてるB、そしてそのBにくっついてる俺みたいな感じで
二人から離れないようにして歩いてた。
各部屋…まあ病室とかかな?を軽く見て回って
残されたままのベッドや棚なんかの写真を撮ったりしてた。
なんで写真撮ってたかっていうと、夏だとまあ心霊特集とかあったりするし
心霊写真でも撮れたら御の字くらいに思って特に何も考えずに。
写真撮りながらどんどん進んでいくと、3階の真ん中くらいに少し広い部屋があった。
多分相部屋なんだろう、ベッドが5つくらい並んでて
うち一つは窓から飛び出てた。
ベッドが窓から…って、普通に考えたら危ないんだけど
心霊スポットだし、見る感じヤンキーのたまり場みたいな感じっぽかったから特に疑問に思わないで
そのベッドすぐ横の窓から身を乗り出して、ベッドに掴まりながらAがCの車を停めてある方に向かって
「おーい、Cー!おーい!!」と、大声で叫び出した。
Bと俺は苦笑いでそれを見ながら、Aに「気をつけろよー、落ちるなよー」なんて言ってた。
若気の至りだな、なんて笑いながら、俺はそこでも写真を撮った。
その後、Aはその部屋の窓が少しだけガラスが残っているのを見て、どうせなら綺麗にしよう!なんて言って
蹴りでガラスを割りやがった。
さすがにこれは引くわー…と思いながらも、テンションの上がったAに苦笑いしかできなかった
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あとは似たような感じで、特に何事もなく屋上に着いた。
屋上はさすがに何もなくて、まあ普通の屋上って感じ
外はもう真っ暗で、ちょっと遠くにある建物の明かりとかがちょっと綺麗で
Aが「景色いいじゃん、記念写真撮ろうぜ!」と言いだし
その時はインスタントカメラだったから自撮りなんてできないので
AとBが映ったものが一枚、Aと俺が映ったものが一枚
残り一枚は屋上からの景色を撮って、Cの車に戻るために来た道を戻り始めた
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院内を戻り始めて少しした頃、Bが俺の腕にしがみついてきた。
Bを見ると、普段はオドオドしたような、常にキョロキョロしてるような奴なんだけど
その時のBは微動だにせず俺にしがみつきながら前を歩くAを見てた。
俺「どうした?」
B「…」
俺「B?」
B「…やばい。」
俺「え?」
B「やばいんだよ。やっぱダメだったんだ」
何を言ってるんだ?と思いながらも、まあ怖いんだろうくらいにしか思わなくて
前を歩くAの後ろをそのまま歩いて
外に出たタイミングでBが俺から離れて、突然走ってCの車の助手席に飛び込むように乗り込んだ
助手席は色々やることが多いからいやだ、と言って普段絶対に乗らないのに。
不思議に思いながらも、特に何も言うこともなく
Aと一緒に後部座席に乗って話し出した。
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俺「やっぱ気味悪ィな、肝試しにはいいかもだけど」
A「でもいい感じに涼めたな!Bとかずっとビビってたし!www」
俺「いや、お前が怖いものなしすぎるんだよw」
A「そういやC、途中俺が呼んだの聞こえた?」
C「うん。」
A「いやお前せめてなんか返せよ聞こえてねーのかと思ってたわw」
C「ごめんね」
俺「てかBどうした?なんかすげー静かだけど」
Bは何も答えず、じっと身を固めて下を向いてた。
まるで何も見ないようにしているかのように
普段はそんなこと絶対にないのに
俺「体調悪いのか?大丈夫か?」
C「…帰ろうか。B今日泊りに行っていい?俺の家電気代払ってないから電気つかないんだよね」
Cの衝撃発言で車内は笑いで溢れ、そのまま病院からの帰り、家が近い順で俺、Aと車を降りて
その日CはBの家に泊まったらしい。
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K病院に行った日から3日後、現像に出していた写真ができたと店から連絡があった
頼んだ店がちょっと遠かったので、明日バイト終わりに取りに行く、と連絡して
そのままバイトに向かった。バイトは10時入りの18時終わり、店の閉店が19時なので割とギリギリだけど
心霊写真撮れたりしてねーかなぁ、なんてちょっとワクワクしていた。
当時俺は某ファミレスで働いていて、その辺りにファミレスがそこ以外なかったから結構忙しいんだ
だから普段は忙しさのおかげでバイト中は悶々とした気持ちとか忘れられてたし
ああいう時ってアドレナリン出てんのかな?自分で言うのもあれだけどミスとかもなくどっちかってーと優秀な仕事ぶりだったと思う
でもその写真を受け取りに行く日は、すげー悶々として
自分で俺どうした?と思うくらいミスの連発
注文間違えるし、皿は割るし、一番やばかったのはお客さんとぶつかってお客さんの服べっちょべちょにしたこと
普段滅多にミスしない俺がそんなミスするもんだから店長怒る通りこして心配してくれて(優しい店長すぎて泣けた)
その日は15時で上がらせてくれた。
正直申し訳なさとかミスしたことでの焦りとか、色んな感情がぐちゃぐちゃで泣きそうになりながら
写真のことを思い出して、現像をお願いしてた店にそのまま向かった。
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店について名前を伝えると、店員が写真の入った封筒を持ってきた
代金1300円。やっす!と思いながら支払って、受け取った
ただそこで違和感に気付いた。なんか妙に封筒が薄いんだ
インスタントカメラ2つ使い切ったんだから、50枚くらいあるはずなんだけど
20枚くらいの薄さだった
すぐに中身を確認すると、やっぱり枚数がどう考えても少ない
俺が「あのー…なんか枚数少なくないですか?」
と店員に聞くと、なんかもごもご言いながら目をそらす。
なんか感じ悪いなーと思いながらもう一回ざっと見てみて、あることに気付いた
Aが映ってる写真が一枚もないんだ。
俺とかBが映ってるのとか、病室撮った写真はある
Aのが一枚もない。
俺「あの、ここにない写真ありますよね?」
店員「いや、えっとー…少々お待ちください…」
そう言うと、店員はそそくさと裏に入っていった
なんだ?と思いながら待ってると、2分くらいしてから初老くらいのオッサンが出てきた。
多分店長なんだろう、俺に会釈して「こちらへどうぞ」って、待合スペースの奥にある事務室みたいなとこに通してくれた。
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オッサン「うちではね、お客さんに渡す写真とそうでない写真を分けてるんです。明らかにシャッターミスでブレてる写真とか、女の人のスカートの中撮ってる写真なんかはお客さんに渡さないし、お代もとらないことにしてるんです」
そう言われれば、50枚くらいの現像なのに安いなーとは思ってた。
半分くらいが俺の手元にきてないことを考えるとその半分があったら倍の額だったんだろう。
俺「俺、ちょっとカメラマン目指してて…だからブレとかはなかったと思う…というか思いたいんですけどw
俺の撮った写真はなんで…」
オッサン「…中には、なかったことにした方がいい写真なんかもあるんですよ」
俺「どういうことですか?」
オッサン「…」
そこで俺はピンときた。
というか皆ももうわかってると思う。
なんか映ってんだ、やばいものが。
俺「見せてもらえませんか」
オッサン「…少々お待ちください。」
オッサンはそういうと奥に行って、なんかガタガタやってたなと思ったら
木の箱を持って戻ってきた
オッサン「この写真を持ち帰るかどうかはお客さんに任せます。お代は結構ですよ」
俺「…この中ですか?」
オッサンは頷き、木の箱を俺の方に押し出してきた。
その箱にはお札みたいなの貼ってあって、見るからにやばいやつ。
俺はいやな予感がしながら、その箱を開けた
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写真を手に取って、一枚一枚確認していった。
正直心霊写真撮れたらいいなって思ってたけど、そう思ってたこと、写真を撮ったことすら後悔した
まず一番上にあった写真は、あのベッドが飛び出してた部屋の写真
薄暗いけど窓の外がまだちょっと明るかったから、窓際なんかはちゃんと映ってるんだけど
その窓から飛び出したベッドの上に、ハッキリと映ってたんだ
緑と白のストライプのパジャマを着たおじいさん。
体が半透明というか、透けてて、向こう側の景色が見えてた
写真を撮った時、そんなんは見えなかったし、居なかったはずだし、何より透けてるなんてまず生きてる人間じゃありえない
もう既にやばいもん撮った感はあるだろ?全然可愛いもんだったよ
その写真のすぐ後ろ、窓から身を乗り出してるAを後ろから撮った写真
Aの体中に、真っ白な手が絡みついてた。窓の向こうから。
よくタクシーの運転手がしてるような白い手袋あるだろ?あんな白さ。
しかも、窓の外が真っ赤だったんだ
暗くなる寸前だし、ちょっとうす暗いくらいだったのに
まるで太陽の光もろに受けてるみたいな真っ赤。
そしてベッドの上のおじいさん、こっち見てんの。
もうぶん投げたいくらいに怖くて嫌な汗かきまくった。
でもなんか見なきゃいけないような気がして、次の写真をめくった
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その後の写真も、ことごとくAと一緒におかしなものが映ってた
病室の中から上半分だけ顔出してる男の顔、トイレの前で鷹のポーズをしてるAを見上げるような形で見ているような形の黒い影、階段を上るAを下から撮った写真は、無数のちっちゃい丸…いわゆるオーブってやつ
そんな感じでAが映る写真全てに様々なものが映ってた
そして俺が一番見た瞬間息が止まった写真は、屋上で撮った2枚
俺とA、AとBが映ったその二枚は、それまでのものとは比べ物にならないくらい異様だったんだ
俺やBは普通に映ってる。
Aのところだけ、ピンポイントでブレたように
俺とBじゃないとAだってわかんないくらいにぐにゃぐにゃになってた
マジでそこだけ時空が歪んでるみたいに、ぐにゃっぐにゃ
んでAが映ってる側(俺との時は右、Bとの時は左)だけが、真っ赤な赤い光がぶわーっと映ってた
俺は何も言葉を発することができなくて、写真を木箱に戻して動けずにいた。
少しして、オッサンが口を開いた
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オッサン「意味が分かりましたか?」
俺「…はい…なんか…今、見たことを後悔してる自分が居ます…」
オッサン「でしょうね…我々もこういった仕事をしているとね、こういう写真がたまにあるんですよ。
こういう写真を見たくなくてやめていく人もいます。こういう写真は持っているだけで災いを呼ぶ
だから弾くんです。…どうします?この写真」
俺「…供養とか…した方がいいんですかね」
オッサン「実は私の実家が寺でして、お望みでしたらこちらで対処させていただきますが…」
俺「…お願いします。」
俺はオッサンに写真の処分をお願いして、なんか手元に来た写真も持って帰る気になれなくて
その写真の処分もお願いして帰った。
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帰宅してすぐに、俺はどうしたらいいかを相談しようと思ってBとCに連絡を取った。
なんかAにはまだ言わないほうがいい気がしたんだ
BとCはすぐに返事くれて、Bの家に集まることになった
Bの家に着いてすぐにCも到着して
俺は二人に写真のことをすべて話したんだ、したら
BとCが顔を見合わせて、Bは俯いちゃって、Cが「実は…」と話し始めた。
C「あの日さ、帰りBおかしかったろ?」
俺「あー…うん、なんか元気なかったよな」
C「Bさ、見ちゃったらしいんだよ。屋上で。」
俺「何を?」
C「AとM(俺)を写真撮ったろ?その時フラッシュ炊いた瞬間に、Aの周りに無数の顔が見えたんだって。」
俺「え…」
C「実は俺、これあんま人に言わないようにしてんだけど…普通なら見えないもんが見えたりするんだ。たまに。」
俺「え、霊感ってやつ?」
C「なのかな…まあ常に見えるわけじゃないし、見えたって何かできるわけじゃないから、心霊スポットとかには行きたくないし、何か見えても何も見えないフリしてるんだけど
あの時、病院の入口でさ、見えちゃったんだよ。病院の入口の真正面に、人が立ってた。
最初は他の肝試しにきた人とかそんなかなと思ってたけどお前ら誰も何も言わないし、その人微動だにしないしさ。あー、やべえなと思って行くのやめたんだ
んで、Bが様子おかしかったから一緒にいた」
俺「…マジか…」
あの時なんでCが一緒に来なかったのか、特に疑問に思わなかったけど納得できた。
俺だってそんなの見たら入りたくないと思うだろうし
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C「Bも最初は何も話してくれなかったんだけどさ、俺がそういうの見えたりするって言ったら話してくれて
Aを連れてお祓い行くべきだって話してたら今日お前から連絡きたわけ」
俺「お祓いとかって…早いほうがいいよなやっぱ…」
C「うん。俺もそう思ってAに連絡しようと思ったんだけど出ないんだよA」
嫌な予感がした。
Aはお前常に携帯見てんのかってくらいめちゃくちゃ反応早い奴で
Aと連絡つかないなんて今まで一度もなかったんだ
すぐにAの家に行ってみよう、という話になり
Aのアパートに向かった。Aのアパートはちょっと遠いとこにあって
確か父親と二人で暮らしてたはずだ。
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Bのアパートを出て車で30分くらい走って、Aのアパートに着いた。
Aの部屋のインターホンを鳴らすと、中からハーイ、と声がして
Aの父親が出てきた。
A父「ん?Aの友達ー?」
俺「あ…えっと、はい…あの、Aいますか?」
A父「いやー、あいつもう4日くらい帰ってきてないんだよー
まああいつ友達んとことか泊まったりして1週間いないとかよくあるから、友達のとこにでもいるんじゃないかなあ」
俺とCは顔を見合わせた。
4日前…K病院に行った日からだ。
第一CはAを家まで送ったはず。帰ってないなんておかしいんだ
C「探してみます、ありがとうございました」
Cはそう言うと、すぐに車に向かった。
俺とBもAの父親に会釈して、すぐにCの後を追った
俺「どこにいるんだよA…」
C「K病院じゃないかな」
俺「え?なんで?」
C「なんかそんな気がする。こっから歩きはまず無理だし、Aのバイクがいつものとこにないから
バイクがあるかどうかだけ見に行こう」
Cはそう言うと、K病院に向かって車を走らせた
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K病院までの道中会話は一切なく、俺はAにメールやら電話やらを繰り返した。
一切返事がなく、嫌な予感と無事でいてほしい気持ちで張り裂けそうになってると
K病院の前の通りに着いた。
K病院は国道沿いにあって、車の通りも多い。
K病院に入るには細い道を入らなきゃいけなかった。
前回入った細い道を進んで少しした辺りで、Cが突然車を止めた。
K病院まではまだ結構距離がある。不思議に思ってCを見ると、じっと一点を見つめてた。
Cが見てる方を見てみると、手入れもなにもされてない雑草だらけの中に
バイクがあった。
Cは車を降りて、そのバイクを見に行って、少ししてから戻ってきて
「Aのバイク。間違いない。」
と言った。
もう嫌な予感とかそんなん通り越して、絶望感ってやつなのかな
虚無っていうか、何も考えられなかった
俺「病院の中にいる…?」
C「…」
俺「どうする」
C「…探しに行くしかないでしょ。」
CはK病院の真横まで車を走らせて、前回車を停めた場所にそろそろ着く…って時に、いきなり急ブレーキをかけた
俺とBはシートに激しくぶつかって、痛みと驚きで何が何だかわかんなかった
俺「なんだよいってーな!」
B「どうしたの…」
shake
バンッッッッッ!!!!!!!
俺とBの言葉を遮るように、ものすごい音がした
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風船が割れたときみたいな、すごい音だった
何の音かわからなくて、俺とBは辺りを見回した。
んで、すぐにそれを見つけた
建物のすぐ真横、コンクリートで舗装された入口の部分
そこに、Aがいた。
いや、居たっていうかあった。Aだったものが。
腕は変な方向に曲がって、足は関節どこいった?ってくらいぐにゃぐにゃで
首はもうすぐわかるくらいに折れて真横に向いてた。
不思議なことに血は全然出てなくて
本当に、あの写真に映ったAみたいに、ぐにゃぐにゃなAだったものがそこにあったんだ。
車内全員何も言えず、誰も動くこともできなくて
1分くらいだったと思うけど、その時はめちゃくちゃ長い時間に感じられた。
Bが「うわあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
と叫び声をあげるまで、まるで時が止まったかのような感覚だった
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その後すぐに警察を呼んで、Aの父親に連絡をして
俺たちは警察署で事情を聞かれて、写真のことは伏せて話をして、帰っていいと言われたけど一人になりたくない気持ちでいっぱいで
それは二人も同じだったようで、俺の家で3人朝まで眠れない状態で過ごした。
それから数日後、警察官が家にきて色々話してくれた。
Aはどうやらあの日家に送ってもらったあとそのままバイクでK病院に戻ったらしい。
K病院の近くのコンビニの監視カメラに、バイクでK病院の方向に向かうAが映ってたそうだ。
その後周辺の監視カメラに一切映っていなかったこと、所持品が携帯と財布だけだったこと
死亡推定時刻が、18時過ぎ頃だったこと。飛び降りだったらしい
俺たちがK病院に足を踏み入れた、その時間とほぼ同時刻だ。
もう、誰も何も言わなくてもお互いわかってた
もう自分がこの二人と関わることはないだろうと
忘れたい。思い出したくない。
それから少しして、Bが引っ越していって、そのすぐ後に俺も実家に戻って
バイト先で知り合った人がCの先輩だったんだけど、Cも引っ越したらしい
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あれから数年、俺は普通に暮らしてる
なんでAだけあんなことになったのか、それは未だにわからない
BとCも、人づてに聞く感じだと元気でやってるそうだ
何年経っても忘れることはできないし、今も思い出すと飯食えなくなったりする。
実際実家に戻ってから2年くらいは常に親や弟に一緒にいてもらうくらいには一人の時間が怖かったし、肉も食えなかった。
あの写真に映ってたのは、あのK病院で亡くなった人たちなんだろうか
Aは、連れていかれたんだろうか。
考えてもわからないし、考えたくもない。
今はK病院は公園になって、普通に子供が遊んでるらしい
俺が住んでたアパートも、取り壊されてマンション立ってるんだって
なんでこんなこと知ってんのかって言うと、バイト先の人…Cの先輩から、こないだ連絡があったんだ
結婚して子供できて、よくK病院跡地の公園に行くらしい
でも一つ気になることがあって
子供が、ちょくちょく変なこと言うんだって
「なんであのおじちゃんパジャマ着てるのー?」と、誰もいない場所を指さすらしい
お前K病院に肝試しいったことあったよな?って聞かれたけど、何も言えなかった
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いわくの無い土地なんてないんだろうし、今俺が住んでるこの土地も過去に何があったかなんてわからない
でも、人の命が関わった場所には業が残るんだろうな
これから先、もし肝試しをしようなんて話になっても絶対行かないほうがいいぞ
俺みたいに病院行けなくなったり、肝試しした場所がホテルだったらホテル使えなくなるかもしれないし
とにかく、心霊スポットって呼ばれてる場所には近づかないことをおすすめする
何年経ってもずっと逃げられない恐怖と後悔に襲われたくなければやめておけ
俺はあれから、写真を一切撮らなくなった。
怖いんだ、写真を撮ることが。
あの時、Aを止めるべきだったんだ
行きたくないって言えばよかった
途中からでも引き返すべきだった
写真なんか撮らなきゃよかった
あの日Aを一人にしなければよかった
後悔しても、もう全部遅いんだけどな
作者まもる