短編2
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無くなった

 全然怖くないですけど、不思議な話です。

子供の頃、近所の神社で毎日の様に友達と遊んでいました。

 イチョウの木が沢山生えてて、黄色い絨毯を敷いたような場所。

 お賽銭箱の近くの階段に腰かけ、お喋りしながら駄菓子を食べたり、シャボン玉をしたりしました。

凄く大切な思い出で、大人になった今でも時たまノスタルジーを感じます。

 大人になり、離れた場所に住み、同僚と話している時

「〇〇さんの実家ってどんな所なんですか?」と聞かれ

その時のノリでGoogleアースを使ってみました。

変わらない実家の写真。

もう10年以上帰っていない。

懐かしい気持ちになり

「あ、そうだ!あの神社も見てみよう」

とストリートビューを進めて行きました。

結果

無かったんです。

取り壊された、とかではなく

そもそも土地自体が無いのです。

実家からピアノ教室に通っていたのですが

神社はその間にあったんです。

道路の脇に石の看板があって

〇〇神社(覚えてません)と書いてあったんです。

そこから入っていくと凄く広い場所の真ん中に神社が建っていたんです。

 Googleアースでは看板から神社に続く小道も無く

神社のあった敷地は民家になっていました。

 

パニックでしたよ。

だって

実家→神社→駄菓子屋→ピアノ教室

と直線上にあったんですよ。

ピアノが終わって駄菓子屋に寄って神社で食べる

が日課でしたから。

銀杏の匂いも覚えているし

一緒に行った友達との会話も覚えています。

 後日、どうしても信じられなくて現地を確かめに行きました。

やっぱりありませんでした。

親に聞いても

「そんなの知らない」

と言われてしまいました。

当時の友達は疎遠で連絡はとれません。

 最初は釈然とせずもやもやしていましたが、考えてみたらおかしな事も

1年中イチョウが黄色い事ってないですよね。

私の記憶ではいつでも黄色くて、落ち葉で地面がふわふわでした。

あと大人を見たことがないんです。

そして音が無かった。

話し声や笑い声はありましたが、車の音や風の音がしなかったんです。

今思えばですけど。

確実に記憶はあるんです。

でも場所が無い。

今でも泣きたくなるくらい懐かしい気持ちになる時があります。

子供の時にしかいけない場所って本当にあるのでしょうか。

Concrete
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