超短編小説「猫角家の人々」その3

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超短編小説「猫角家の人々」その3

2000年に介護保険制度が施行されて以来、介護事業所は2006年までに4万件以上に達した。その後も介護施設の需要は伸び続けているが、厚労省の社会保障費抑制の方針から、介護報酬減額が実施され、介護事業所の経営を圧迫している。結果、2007年以降は、介護事業所の倒産が相次いだ。生き残るためには、同業者とのサービスの面で競争しなければならないが、人手不足でそれもままならない。立派できれいな施設を持っていなければ、客を惹きつけることもできないが、とても、そんな施設建設費など工面できない。介護事業は甘い世界、簡単に儲かる世界ではなかったのだ。

大学で老人介護を研究した猫角蜜子は、介護事業が簡単には儲からないことを人一倍知っていた。だから、姉と一緒に引き継いだ会社を守るため、人とは違うことをやると決めた。

「徹底的に助成金を貰いまくるしかないわ。」

「どうせ、どこの事業所だって、多かれ少なかれ助成金詐欺やってるんだから。」

かくして、猫角姉妹の介護事業は、助成金詐取事業へと変化していったのである。

姉妹の会社は、ネコネコハウスなる介護施設を九州で展開していた。だが、貧弱で不衛生、設備も揃っていない施設を選ぶ客など、ほとんどいない。実質、経営実体のない幽霊施設なのだ。また、介護の現場で働く人たちも、設備の整っていないネコネコハウスなど眼中にない。いくら募集しても、面接にやってくるのは、自分が介護を受ける側に半分なっている老人ばかりだ。(続く)

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