超短編小説「猫角家の人々」その1

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超短編小説「猫角家の人々」その1

猫角家の一族の生活を一変させたのは、姉妹の母親である猫角えつかの死であった。

「株式会社猫角えつか」を細々と経営していた一族は、母親の死で、びっくりするほど巨額の資産を一挙に手に入れたのだ。会社で掛けていた経営者保険と団体保険から2億を超える保険金が支払われた。残された姉妹は、見たこともない大金を掴んで、思わぬ幸運に小躍りした。

株式会社猫角えつかの経営は決して楽ではなかった。設備投資ができない弱小介護会社に、客は寄り付かなかったのだ。だが、会社の経理状況は、保険金のおかげで一転して良好となった。二人は、贅沢三昧を始める。

母親に代わる経営者には、長姉の克子が就任する。だが、知恵袋は、妹の蜜子だ。京都の当事者大学の法学部を出た蜜子は、地元の不幸禍大学の大学院で修士号を取得した。そののちは紆余曲折あったが、母親の残した弱小会社を拠点に、詐欺三昧の人生を開始したのだ。

考えうるすべてのチャンスを利用して詐欺を働く。働かないで、銭を手に入れる算段だ。手始めは、自動車事故詐欺だ。気心の通じた不良自動車修理工場を使って、起きてもいない自動車事故をでっち上げる。壊れていない車が大破したことにして、車両保険を詐取する。不良修理工場のネットワークが出来上がっている。必定、事故は、特定の修理工場の近くで起きたことにしなければならない。結果、名古屋周辺でばかり事故が起きる。

猫角の会社は乗用車4台を保有している。この4台を交互に事故に遭わせる。同じ車では、続けて何度も偽装事故を起こせないからだ。結果、年に4回も交通事故を起こしたことにするのだ。

また、保険会社には、頸椎ねん挫で半年間、働けなかったと通告し、休業補償を手に入れる。これを、年4回、別々の車でしくみ、結果、一年順、休業補償を受給するのだ。(続く)

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