wallpaper:3338
「満月」
wallpaper:5620
nextpage
その日は、月が綺麗な夜だった。
秋彼岸明けの25日。
あたりは、ひんやりとした空気に閉ざされ、夜は、コートの一枚でも羽織りたく成るほど肌寒い。
nextpage
wallpaper:736
仕事が長引き、気づいたら22時を少し回っていた。
最終バスには、ぎりぎりで間に合う。
最寄りのバス停まで足早に歩き続けること10分。
nextpage
wallpaper:2736
街灯に浮かぶバス停の傍らに、人影が見えた。
長い髪に白いワンピース、若い女のようだった。
自分以外にも最終バスを待つ人がいたことにホッとして、
女から少し離れた位置に立ち、呼吸を整えた。
nextpage
深夜、若い女とふたりきり。
つい良からぬ妄想をしてしまう。
気恥ずかしさから目のやり場に困り、ふと月明かりに照らされた路上に目を移す。
nextpage
wallpaper:4732
細く長く伸びる一体の影。
「え?」
近くにいるはずの女の影が…ない。
さっきまでそこにいたはずの女の姿が見当たらない。
nextpage
wallpaper:5053
耳元でじっとりと湿った息が吹きかかる。
「ねぇ。一緒にいかない。」
恐怖とともに割れるような頭痛に襲われ、男は、その場に倒れ込んだ。
nextpage
wallpaper:3373
気がつくと、病院のベットで頭を包帯で巻かれたまま寝ていた。
深夜、路上で倒れていたところを、たまたま通りかかった人が見つけ、救急車で緊急搬送されたのだという。
通報してくれた人の話では、月夜でなかったら、気づかずに通り過ぎるところだったと。
nextpage
wallpaper:1268
男は言う。
「脳内出血で間一髪だったんだ。以来、満月の夜がどうも苦手でね。」
作者あんみつ姫
皆様、お久しぶりです。
だいぶ秋めいてまいりました。
手のひら怪談 お楽しみください。