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海って不思議な世界ですよね
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大海原や深海にはまだまだ未知の生物がたくさんいると思います
以前、私が遭遇したのもそういうものなのかなぁ
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もう十年以上前になります
私は家族旅行で東南アジアのとある国へ行きました
亜熱帯気候で空港へ降り立った時にとても暑かった記憶があります
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そんな常夏の気候だと当然、海に入りたくなりますよね
ましてや外国の海は日本の海とはまた別物の景色が広がっています
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例に漏れず、私達もマリンレジャーを楽しむ為にアイランドホッピングをしようと考えていました
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ご存じ無い方のために「アイランドホッピング」とは、小さな島々が群集する地帯を船で渡りながら遊ぶというものです
私たちの宿泊していたホテルは海と直結しており、そこに船が来て直ぐに海に行けるという便利な立地でした
途中、船と並走して飛び跳ねるトビウオを見たり、海の綺麗な景色を堪能したり、私達はアイランドホッピングを楽しみました
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複数の島の名所を巡り、いよいよ最後の島では食事を行いましたが、その島は砂浜が海の中にあるような場所で周りは一面の大海原という絶景でした
そこでは食事を終えた後に自由行動があり、海で遊ぶ時間があったので私はシュノーケルを付けて海へと泳ぎに出かけました
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流石は外国の海、砂浜近くだというのに透明度は日本の海の比ではありませんでした
足が付く程度だが泳ぐには申し分ない程の深さの平地がいつまでも広がる地形だったので、私は岸からかなり離れた場所まで泳いで行っていました
気が付くと300メートル近くは岸から離れていたのでしょうか
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流石にこれ以上離れると不安だったので、私は戻ろうと思いましたが
よく見ると私がいる場所をもう少し進めば海の色が変わっており、一気に深くなっている場所の近くにいました
私は個人的には泳ぎがうまい方だと思っていたので、これはまたと無い機会だと私は危険を承知でその深くなっている場所まで泳いで行きました
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そこに広がっていたのは正に別世界
というのも綺麗な意味ではなく、禍々しい意味での別世界の光景でした
かなりの透明度の海であるのに、奥の方が真っ暗な暗闇の領域
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太陽の光が差し込んでいるので、何となく空間は把握できるのですが、それでも奥は見えない真っ暗な世界
それに加えて、私が泳いできた平坦な砂浜からガクンと下がる崖のようになっており、どことなく下へと引きずり込むような流れも肌で感じました
おまけに砂浜近くは魚やヒトデ等がちらほらいたのも関わらず、その周辺には魚は一匹もおりませんでした
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ゴーグル越しにこの光景を見た私は興味よりも沸々と恐怖が沸き、急いで戻ろうとしましたが
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ふと奇妙なものを見つけました
私のいる崖近くから15~20m程の水深ぐらい
魚すらいない領域に何か塊のようなものが動いてるのが見えたんです
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一瞬私が脳裏に浮かんだのは鮫やイルカだったのですが、ぱっと見で動きがおかしいんです
鮫やイルカってどちらかと言えば悠々と泳ぐ姿を想像しますよね
私が見ているそれはまるで自分の身体を結んでいるかのような柔軟な動きをしていました
知恵の輪のように絡まっているようにも見えたので、少なくとも二匹ぐらいはいるのかなと思いました
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アザラシ?それともアシカ?
頭の中ではそう考えたのですが、ただ奇妙だったのは、それには鱗のようなものがあるんです
身体を動かすたびにキラッキラっと、絡みつく体の側面が光の反射で光っているように見えたんです
ウミヘビの中にはそういう模様の種類もいますが、どう見てもウミヘビの質量ではありませんでした
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だとすると考えられるのは、リュウグウノツカイ
よく浅瀬で打ち上げられると地震の前兆とかニュースに出てくるあれかと思いました
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こんな浅瀬にリュウグウノツカイ?
そう思った私はその生物を良く見ようと思い、崖の淵に捕まる形で深く潜ってみました
幸いそこには岩が突き出ていたので、ぎりぎりシュノーケルで呼吸できる所で身体を固定する事ができました
二匹が絡み合う行動と言えば交尾がすぐ頭に浮かんだので、リュウグウノツカイの交尾が見られるのかと少し期待しました
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ゴーグル越しでジーッとそれを見ていたら、その物体が絡んでいた部分を広げ、いきなり直立する姿勢でこちらの方に頭を向けてきたんです
なぜ正体がよく分からない生物が頭を向けてきたとはっきり分かったのかというと、まさに頭だったんです
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顔は人間のそれでした、というのも目と思われる部分には二つの空洞のように見え、口の部分は横に裂けているような線がありました
また、二匹が絡みついていたと思っていたそれは長い長い一本の胴体でした
側面には触手みたいな細いものがゆらゆら付いていました
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私は海の生物が好きで、子供の頃から図鑑などである程度の海洋生物は知っていましたが、それは今まで見たことないフォルムの物体でした
ムーミンにニョロニョロという生き物が出てきますが、全体的なフォルムはそれに近いものと想像してください
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全長がどれほどかは分からないですが、ぱっと見積もっても10m以上はある胴体でした
そんな巨大な物体が直立の姿勢でこちらと睨み合う状況で、私は恐怖で硬直してしまいました
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確実にあの物体はこちらを意識してるように見えました
あの物体にあの真っ暗な領域に引きずり込まれたら確実に死ぬ
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しばらく硬直状態でしたが、その物体は直立の姿勢のまま深く深くに沈んでいきました
最後までこちらを意識しているような素振りで深海へと沈んでいきました
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私は無我夢中で岸に向かって泳ぎました
下へと流れる海流が邪魔して早く泳ぐ事はできませんでしたが、それでも岸の方へと必死に泳ぎました
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気が付くと岸近くに辿り着いていました
直ぐに家族のいる場所へ戻りましたが、あそこで見た生物については言い出せずにいました
というのもせっかくの旅行で余計な事を言って白けさせたくなかったという気持ちがありました
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その後は船でホテルの島まで無事戻り、何事もなく残りの旅行を終えて日本へ帰国できました
ですが、私の中ではやはりあれは何なのかという疑問が強く残り、個人的に調べてみたんです
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その結果、私が見たのはショコイじゃないかと思っています
ショコイというのは私が行った地域の民間伝承で伝えられた海の怪物だそうで、人を食べる事もあるそうです
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あの時、私も命を落としかけていたんだと思うと今でも恐怖が蘇ってきます
あの出来事以来、私は浅瀬の海でしか泳ぐ事ができなくなりました
皆さんも海にはくれぐれも気を付けて下さい
海には確実に私たちの知らない何かがあります・・・
作者芋